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コメント
6件
わー!!✨最高ですね 個人的にはアメリカのパターンが好きすぎます…!! 陽気でいつも通りなのに、日本のことが全てお見通しなのが…もう…😮💨💞 さらっと言ってるのがアメリカらしくてめっっちゃいいです
全てが良すぎる……🫠 英さんのやつ最高ですね
こんにちは。
今回は、「喫煙」をテーマに、喫煙する日本と他の国の絡みをいくつか書いてみました。
この話は、決して喫煙を推奨している訳ではなく、否定もしていません。喫煙は自己責任です。
※未成年の喫煙はやめましょうね。シーシャもだぞ。
・ドイツの場合
「休憩に行ってきます」
珍しく昼過ぎに休憩に行った日本。その姿を後ろから見送る
少し考えて、棚の奥底にしまっていた紙箱をポケットに突っ込んで日本の後を追った
辿り着いたのは会社ビル屋上
フェンスに肘を置き、物憂げに空を眺める日本
その手には、火がつきたての長いタバコ
ゆらゆらと立ち上る紫煙がアンニュイな雰囲気を助長させている
「日本、珍しいなタバコなんて」
「禁煙してたんですけど限界が来ちゃいましたね」
「ハハ、年中繁忙期だからなお前は」
おもむろに近づく距離
強く感じる煙の香り
肺とはちがい汚れのない澄んだ黒が上を向く
「……なあ、俺も今日だけ禁煙辞めようと思うんだ」
さっき持ってきた綺麗なままの紙箱。1本だけ取り出して口に咥える
少しだけ下を向いて、タバコの先を触れさせた
いわゆる、シガーキス
接触面からジリジリと火が入り赤が広がる様子は、まるで瞳に映った自身と彼のよう
純白の肌が俺の熱で朱に染まっていった
中央から立ち上る二本の副流煙
同時に、二人の距離も離れていく
一息吸って、フッと吐き出した
「たまにはいいもんだな」
「……そう、ですね」
・ロシアの場合
僕がタバコ休憩に行くと席を立った途端、俺も行くと手ぶらで着いてきたロシアさん
非喫煙者なのになんで?と思いつつ、怖くて理由は聞けていない
2人きりの狭い喫煙所
美しい青紫にじっと見つめられつつ、紫煙を肺へと送り込む
視線を動かすことなく、なぁ、と問いかける
「タバコなんて吸って美味いのか?」
「美味しくはないですよ」
「ただ、何となく口が寂しいんです」
それだけ答えて、もう一度咥えようとする
しかし、その手はがっしり掴まれて、代わりに強引なキスをされる
唇を軽く舐めた彼は眉を顰めた
「うぇっ、まっず…」
驚いた拍子に手から滑り落ちたタバコ
スノーブーツが火のついたそれをグリグリと踏み潰す
ぺしゃんこの吸殻を摘んで灰皿に投げ捨てた
「口が寂しいんなら俺に言え。いつでも構ってやる」
「だから、二度とこんな不味いもん吸うんじゃねえぞ」
そう言って、喫煙所を出ていった彼
…本当に、何がしたかったんだろ
意図なんて全く分からないまま、頬に広がる熱をなんとか冷まそうと手を仰いだ
・フィンランドの場合
久々に訪れた喫煙所
随分昔に買ったタバコを味わっていると、大きな人影が入ってくる
「あれ、日本も吸ってたんだ」
それは、僕の親友であるフィンランドさんだった
「ほんとたまにですけどね」
僕の手で燻るタバコを見た彼
一瞬顔を顰めて、どんどん距離を詰めてくる
「あっ……あの、フィンランドさ…んっ」
突然に奪われた唇
驚きで開いた口にスルリと舌とナニカが侵入してきた
タバコとは違う、独特な香り
強烈な味が二人の唾液と混ざって口内に広がる
そして、ようやく唇が離れ、開放された
「………ごめんね、俺以外が日本の体を汚すなんて許せなくて…」
「タバコじゃなくて飴にしなよ。沢山持ってるから、これあげる」
彼から手渡された黒の箱
中身は彼の好物のサルミアッキ
じゃあね、と去っていく彼は開封済みの箱から新たな一粒を口に投げ入れていた
貰った箱を丁寧に開けて中身を取り出す
タイヤの欠片にしか見えない、柔らかい飴
僕も一粒、舌に乗せて舐めてみる
アンモニアのような香りと強い塩味
さっきのと同じものなのに一人で食べるコレは苦手な味がする
「…あなたがいないと食べれないもの渡さないでくださいよ」
・アメリカの場合
誰も居ない狭い喫煙所
屋根と壁の隙間から覗く、煙越しの青空をボーッと眺める
そんな時、Hey!と陽気な声が聞こえた
「その銘柄俺がちょっと前に吸ってたヤツじゃん」
声の主はアメリカさん
うずうずと手をこちらに伸ばす
「久しぶりに吸いたくなってきたわ。Japan、1本くれ」
「仕方ないですね…」
箱のフタを開けてどうぞと彼に差し出す
しかし彼はそちらに目もくれず、僕の口元から奪って咥えた
「…懐かしい味だな。なんか前のより美味いかも、リニューアルしたか?」
「いやしてないですけど」
「じゃあ美味いのはお前の味か」
チュ、唇にキスを落とした彼
同時に、ズボンのポッケに何かが放り込まれる
うん、美味いと満足気に微笑んで、手を振った
「See you soon!無理に慣れないことすんなよ」
パタンと静かに閉じる
同時に、水を張った灰皿へタバコを放った
「アメリカさんにはお見通しか…」
半年前にリニューアルした旧デザインの箱
賞味期限切れの不味いタバコ
ほとんど吸わず垂れ流していた白の煙
…憧れで買ったコレは僕には合わないみたいだ
大人しくキャンディでも舐めていよう
非喫煙者にはこっちの方がいい
ズボンのポケットをまさぐって取り出した、ストロベリー味の棒付きキャンディ
慣れ親しんだ人工の甘みとほのかな優しさが苦い口内を上書きした
・イギリスの場合
昼休み。誰もいない屋上の喫煙所で、煙草に火をつけた瞬間だった
「……やっぱり吸ってましたか」
不意に聞こえた声に振り向くと、壁にもたれていたのはイギリスさんだった
いつの間に。気配がなさすぎる
「タバコなんてやめなさい。貴方の体が汚れる」
「……でも、あなたも昔は吸ってましたよね?」
そう返すと、彼は少し笑った
どこか、自嘲めいた、諦めの混じるような笑いだった
「私はいいんです。喫煙する前から、もう汚れてましたから」
この人、無茶苦茶だ……
思わず心の中でつぶやいた
そんな僕の反応を気にした様子もなく、彼は一歩、また一歩と近づいてくる
「貴方は清く美しい。だから、その穢れなき瞳が煙で濁る前に、禁煙しましょうね」
そう言って、僕の指からタバコをそっと奪い取ると、まるで何かの儀式のようにゆっくりと火を消し、金属の灰皿に押し付けて捨てた。
「……もう吸わなくていい。私が、他の全ての汚れから守ってあげますから」
僕のためだと言いながら、僕の意思などお構いなし
それでも、どこかに確かに感じる優しさに、否定しきれない自分がいる
「…分かりました。じゃあ今日は、もうやめておきます」
「Good boy.」
頭を軽く撫でる彼の手が、妙に優しかったのが、少しだけ悔しかった
・フランスの場合
喫煙後、オフィスに戻ってきた日本
ジャケットから香る、タバコの苦い匂い
その近くを通ったフランスは、片手で日本を抱きとめた
「ねえ日本。それ、君のタバコの匂い?」
「…ああ、はい。すみません。臭かったですか?」
申し訳なさそうに日本が視線を向ける
怒られるとでも思っているのだろうか。可愛いな
「違うよ。ただ…僕は、こっちの方が好きかな」
ポケットから香水を取りだして、日本の服に振りまく
漂い始める、フローラルな空気
タバコを上書きしていく”僕の香り”がふわりと広がった
「うん、いい感じ」
「これ…フランスさんの香り…」
日本の視線が泳ぐ、おっ。これは脈アリか…?
「いい香りでしょ?またつけてあげるから、喫煙後は僕のところに来てね」
頬にキスを落として、じゃ。と手を振る
さて、”僕の香り”を纏った彼はこの後どんな反応をするんだろうな
案外、照れてたりして
そんなことを考えて、僕は上機嫌に自分のデスクへと戻った
・パラオの場合
昼下がりの公園
たまたま訪れたそこで、見慣れた姿を見つける
それは、煙の出ていないタバコを咥える日本だった
「日本!?ダメだよタバコなんて吸っちゃ!!健康に悪いよ!!」
走って近づいて、大声で叫ぶ
「ん、パラオじゃん。こんにちは」
「こんにちは!……って、話しそらさないの!」
その時、日本は咥えていたそれを、僕の口に押し込んだ
「むぐっ!!?」
「ふふ、これであなたも共犯です」
唾液に濡れ、じんわりと甘さを広げていくタバコ
いや、これはタバコじゃない…
「なにこれ甘い…」
「これはココアシガレットっていうお菓子です。美味しいでしょ」
日本も一本咥えて、ポリポリと噛む
うん、美味しい。と微笑む彼はとても可愛かった
「なぁんだお菓子か〜よかったぁ」
「もう一本いりますか?」
「いる!」
僕も、日本の真似をして、ポリポリと食べる
なんだか、少しだけ、大人に近づいた気がした
正直、ココアシガレットの件が書きたくてこれ書いたまである(笑)。コンビニではタブレット型のココアシガレットが一時期販売されてたみたいですね。
喫煙が憧れではない。時代は変わったなぁ…