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dzl社 ∣ nmmn ∣ おらおん ∣ 死ネタ
恋していた。
君のそのエメラルドのように綺麗な瞳に。
「おらふくん見て、月。 」
「凄く綺麗だね」
君の瞳に僕以外の何かを映すのが嫌で
完全に僕の色に染まってしまえばいいのに。
なんて、支配欲に溢れたことを想う。
「…おんりーは
いつか僕を置いていくの?」
いつしか君と話をした。
一緒に死のうね、ずっと一緒にいようね。と
僕は嬉しかった。
人間嫌いの君の思い出の一番になれたことが
そしてまた、君も僕の一番になろうと
努力してくれたことが 嬉しくて
堪らなかった。愛おしかった。
秋の朧月夜は、僕にはとても
綺麗に見えなくて、反対にとても汚くて
歪んだものに見えた。
「…どうして、そう思うの?」
朧月夜の月光は弱いから
雲に隠れて存在が 消えるたび
おんりーが傍から
消えたように 感じてしまって
そのたびに僕の心臓は跳ね上がった。
心拍数が上がっていくのが感じられる。
おんりーの儚さは、正直異常だ。
こんな夜更けた道じゃ
僕が一人きりになったのと変わらない。
「嫌や、なぁ。頼むから…まだ消えんで」
君に触れようと手を伸ばした。
抱きしめようと腕を広げた。
だが、君は僕の腕には捕まってくれなかった
いや、正確には掴めないのだ。
「なぁ、僕がおらんと未練
晴らせんのやろ?
未練晴らせんかったら、ずっとこの世で
生きてくれるんやないの…?」
ちょうど去年の今頃、おんりーは死んだ。
不慮の事故だった。犯人は僕の親父だった。
息子が狂ったのはおんりーのせいだと嘆き
おんりーの肩を軽く突き飛ばしたらしい。
僕の家は十階建てのマンションで
部屋の番号は1005。
つまり、十階の五番部屋だった。
何があったのかというと、突き飛ばした際に
おんりーが塀を超え、そのまま落ちて
しまったのだ。
お父さん…親父のことを
僕は許せなかった。
お前のためと言い、自分のためでしか
無かった。
昔からずっと、親父はそうだった。
将来の夢を勝手に決められ、勉強させ続け
僕に理想というレッテルを貼り付けてきた。
だからおんりーの葬式の日、僕は初めて
親父を殴った。そして怒鳴った。
初めて親父に刃向かえた。
初めて本音を叫んだ。
すると親父は泣きながら
僕に謝罪をしてくれた。
もう僕の好きにしていいと言われたが
もう遅いのだ。何もかも。
だから僕は家出をした。
おんりーの死体を無断で持ち帰り
しばらく僕の隣で寝かせた。
勿論家を買えるほどのお金は
持ってなかったし、死体を見せれる訳も
ないので野宿をした。
しばらくすれば死体は腐り
埋めなければならなくなってしまった。
僕は泣きながらおんりーの死体を埋めた。
だが死体を埋め終わった後
僕はとある詩人の本に書いてあったことを
思い出した。
『さくらのきのしたには
死体が埋まっている』
本当かどうかなんて知りもしないし
どうせただの虚言に過ぎない。
今でもそう思っている。
けれど、それを実現させることは
少なからず可能ではないか。
僕はおんりーを埋めたあと、急いで木の種を
買いに出かけた。勿論木は桜の木。
何年になったら咲くのかも分からぬ木を
おんりーを蘇生するためと思い込むことにし
懸命に君を育てた。
死体を埋めて約数ヶ月後
どういう訳か、僕の目の前に
生気のないおんりーが見えるようになった。
何故僕が見えるようになったのかは不明だが
未練だらけではあの世にいけないと言い
それから僕らは一緒に過ごすようになった。
まるで、本当に生きてる時のように。
「……ごめんね、おらふくん」
おんりーは申し訳なさそうに目を伏せた。
それが僕には許せなくて
彼の首に手をかけた。が、無論すり抜ける。
「なぁっ、なんで謝るん…?
なにがごめんなん?」
正直、それが察せないほど僕は鈍くない。
本当は分かっている、けど信じたくなくて
ずっと背けてきた。
この世を彷徨う未練が残った死者は
ずっとこの世に残り続けてくれるのか。
もうすぐでこの桜も満開になる。
植えた時期のせいか、秋なのにもう蕾が
成り始めていた。
「…おれさ、実は死んだんだよ。普通に」
「あの世にも行ってきた、変な世界だった」
「でもおらふくんのこと置いてけなくて
神様…なのかな。その人に頼んで
この桜が成るまでの間、ここにいさせて
くれることになったの」
聞きたく、なかった。
そんなことなら、桜なんて
埋めなければよかった。
けれどきっと、桜が無ければおんりーと
こうして出会えることもなかった。
恨めなかった。恨みきれなかった。
「嫌や……嫌や嫌や嫌やっっ!!!」
頭を抱え、僕は何かを取り払うように
首を振り続けた。
その一瞬、成りかけていた桜の木が
目に見えた。
あぁ、そうだ。
この桜が永遠に成らなければいいんだ。
僕はポケットの中に常に常備している
マッチを手に取った。
マッチがポケットに入っている理由は謎だが
多分おんりーの葬式のときに持ってたの
だろうと思う。
「おらふくんっ、何して……!?!?」
おんりーの言葉は 僕には聞こえなかった。
いや、聞こえないフリをした。
否、聞かなかった。
僕はマッチに火をつけ、木を燃やした。
燃えていく桜の木に、何も感情は
持たなかった。
だから僕は火の中へと足を踏み入れた。
もう、今なら死んでもいい。と
本気で思えたから。
「おらふく…おらふんっっ!!」
夜空を見上げる。
目に映るのは、朧月夜だけ。
あぁ、でも。
「おんりー、月が綺麗やな」
「おんりーのためなら、僕、本気で死ねる」
言葉は発しない。だが、涙を流して
燃えていく僕に首を振り続けるおんりー。
だが、言うことは聞いてあげない。
だってもう、十分待ったじゃないか。
「また、あの世で幸せになろーな」
生きていた最後に映った朧月夜は
とてもくっきりとした満月に見えた。