コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今回で最後です
「あ♡ あ゛っ、ひ、ああ♡ ん、はぁ♡」
アルケーの嬌声が部屋に響く。照明を完全に落とした寝室では、聴覚が鋭くなって鮮明に聞こえた。
仕事が立て込んでいてしばらくぶりのセックスだからか、身体だけでなく心までも繋がれたからか、アルケーの反応はいつもより良い。
俺も、すぐに出してしまわないようぐっと奥歯を噛む。
「あるけ、はあっ、かわい、♡」
「っ♡♡ かなめ♡ あ、すき♡ すきだ♡」
素直なアルケーの反応に愛おしさが溢れて、薄い上半身を引き寄せてキスをした。アルケーもすぐに舌を絡めてくる。快感に耐えようとぎゅっと目を瞑っているのがいじらしかった。
何十秒、もしかしたら何分も合わせていた唇を離した。代わりとでも言うように名残惜しそうな目と目が合う。
けど、目が合ったのは一瞬で、アルケーの瞳はとろとろのぐずぐずに蕩けて焦点が定まらずどこを見ているかわからなくなってしまった。
「んああっ♡ ふぁ、あぅ♡ な、かなめ♡」
アルケーは俺の名前を呼ぶと、腕を首に回した。顔を首筋にうずめて、そのまま耳許で言う。
「血、吸って♡♡♡」
「ほんとにっ、いいのっ、?」
「お前にならっ、何されてもうれしい♡」
最終確認だった。ここからはもう理性を総動員したって止まれない。なのに、ブレーキを望むどころか、アクセルを強く強く踏み込むから。
「も、泣いたって、止めらんないから、!」
ぎりぎりまで本能に抗って、禁断の果実にそっと牙を突き立てた。あの味を再び知ってしまったら、きっともう戻れない。予感ではなく確信だった。世界が変わってしまう、確信。
あの時と同じ皮膚を破る感覚に、トラウマがフラッシュバックする。思考が恐怖に塗り替えられていく。
「かなめ、平気だから、っ」
苦しそうにアルケーが言った。たぶん、さっきまでの俺ならここでやめられてたんだ。理性を取り戻して、優しくできた。
でも、ごめんね。アルケーの覚悟と、愛情を知ってしまったから。応えなくちゃいけないから。
牙を根元まで押し込むと、芳醇な香りが頭を塗り潰す。次いで、ほろ苦く甘く甘い血液。
「ぐ、んん…っ、ふうっ、は、はあっ…」
苦しそうな呻き声が鼓膜を震わせる。でも、止まれなかった。夢中だった。
美味しい。美味しい。半年ぶりの血はとても甘美なものだった。少しだけとろみのある血液は、喉に引っかかって中々飲み込めない。少量ずつ嚥下した。
「あるけぇ、っ、ごめん、止まれない♡」
泣き言のように漏らすと、アルケーはふ、と無理に笑ってみせた。そして、アルケーの首筋にうずめた俺の頭を抱いて、優しく撫ぜた。
「ん、うれしい♡」
健気なその声は、血液よりもずっとずっと甘いものだった。せめて痛みを減らそうと、腰を動かす。
「ひあああっ♡♡?! かなめ♡ いきなりはダメだ♡♡ あふぁ♡ イく♡ イっひゃう♡♡」
「くっ、っ!」
アルケーは俺の頭を一層強く抱きしめながら達した。ナカがぎゅっと収縮して、遅れて俺も射精する。コンドームをしているのにも関わらず、種を擦り付けるように動いてしまう。その小さな刺激もアルケーは拾って、身体をびくびくと痙攣させていた。
ナカから引き抜くと同時に牙も抜いた。かぷ、と間抜けな音がした。
あの時真っ赤だった首筋は今回も同じ惨状で、そこは変わらないのかよ、と笑われた。口許に手をやって上品に笑うのが愛らしい。
「アルケー……ありがと」
「ああ、その顔が見たかっただけだ」
【了】
ここまでお付き合いいただき
ありがとうございました🙇
誤って消してしまったものの再投稿です