「全く、ツララは。」
頬の赤みが引いたオーターが呟く。
(ですが。)
ジッと手の中のリップクリームを見つめる。
(あの人と交際を始めて、キスもその先もしたけれど、いつだって求めるのは彼の方から。恥ずかしくて私から求めた事はまだ一度もない。)
オーターの脳裏にその時のカルドの姿が思い浮かぶ。
オーターの手にそっと手を重ねながら、
『オーター。今夜いいですか?』
オーターを後ろから抱きしめながら耳元で、
『オーター、君が欲しい。』
情熱的なキスをした後オーターを見つめながら、
『このまましても・・・構わないよね?』
「・・・カルド。」
カアアアア。
せっかく頬の赤みが引いたというのに、オーターの頬が再び赤く熟れた林檎の様に赤く染まっていく。
ハッ!
(いけません。このような所であの人の事を思い出すなど。切り替えなければ。)
オーターは目を閉じて、何度か深呼吸をしてから目を開けた。そこにはもう、先程まで恋人の事を思い出し頬を染めていた『恋する女』の姿はなく、冷静沈着な規律の鬼『砂の神覚者』の姿があった。
「まだ今日の仕事は終わっていません。早く執務室に戻らなければ。」
そう呟きながらオーターは、リップクリームを懐にしまい執務室へと歩き出した。
コメント
5件
やばいどきどきしちゃう💓
やばいオーター可愛い✨ とりあえず♡200押しときました!👍️