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余裕のない可愛い貴方

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余裕のない可愛い貴方

2 - 恋する女と砂の神覚者

♥

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2024年10月21日

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「全く、ツララは。」


頬の赤みが引いたオーターが呟く。


(ですが。)


ジッと手の中のリップクリームを見つめる。


(あの人と交際を始めて、キスもその先もしたけれど、いつだって求めるのは彼の方から。恥ずかしくて私から求めた事はまだ一度もない。)


オーターの脳裏にその時のカルドの姿が思い浮かぶ。




オーターの手にそっと手を重ねながら、

『オーター。今夜いいですか?』


オーターを後ろから抱きしめながら耳元で、

『オーター、君が欲しい。』


情熱的なキスをした後オーターを見つめながら、

『このまましても・・・構わないよね?』



「・・・カルド。」

カアアアア。

せっかく頬の赤みが引いたというのに、オーターの頬が再び赤く熟れた林檎の様に赤く染まっていく。


ハッ!


(いけません。このような所であの人の事を思い出すなど。切り替えなければ。)


オーターは目を閉じて、何度か深呼吸をしてから目を開けた。そこにはもう、先程まで恋人の事を思い出し頬を染めていた『恋する女』の姿はなく、冷静沈着な規律の鬼『砂の神覚者』の姿があった。


「まだ今日の仕事は終わっていません。早く執務室に戻らなければ。」


そう呟きながらオーターは、リップクリームを懐にしまい執務室へと歩き出した。



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