──ねえ、狐の窓って知ってる?それをやると、人に化けてる妖怪の姿が見えるんだって。
──え?それ、危なくないの?
──え…どうなんだろ、分かんない…あんた試してみれば?
──やだよ怖いもん!
──あはは、っ。だよね。
✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤
「…あ。ねえ侑くん、こっち見て?」
「?おん、…」
お昼休み。侑くんがご飯を食べているのを正面から見ながらそう言うと、綺麗な瞳の中に両手で狐を作る私が映っていた。そのまま指を絡めて組んで、狐の窓越しに侑くんを見つめる。柔らかそうな毛に包まれた耳と、特徴的な和装。
「……あ。も〜…バレてもうた」
そして何より、身体の後ろからのぞく大きな尻尾。
「あつむ、くん…」
そっと、耳元に顔を近付けられる。サムにもやったれ、びっくりするやろ。そう言って狐は嗤っていた。
✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤
「う〜ん…」
「な〜に難しい顔しとんの、?」
腕を組んで廊下を歩いていると、ふと視界が少し暗くなる。見上げれば侑くんとよく似た端正な顔が私を見下ろしていた。
「治くん、……ちょっと、そこで立っててね」
「……お」
両手の狐を組みながら、おかしそうに微笑む治くんにそう声をかける。少し出かけた声を封じるように指の間をのぞき込むと、やっぱりスラリとした体躯の狐が立っていた。
「のぞき見か?や〜ん、えっち」
「…っ治くん!!//」
✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤
「あ、時雨いた」
「?…角名くん」
部活前の廊下、少し人気のなくなってきたところで後ろから声をかけられる。ところでさ、といつにも増してその笑みを広げながら、角名くんは私の目の前までやってきて言った。
「侑から聞いたで、なんやおもろいこと知っとるんやろ?俺にもやってみてよ」
「…あ、え…っと、わかった…」
狐の窓を組む私をびっくりするぐらい近くで角名くんは見つめて、それが完成するとぴょこんと生えた耳を震わせて囁く。
「もう満足したやろ。あの人には…北さんにだけはそれ、やらへん方がええで」
「え…?それってどういう……」
✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤
放課後の校舎はさらに人がいなくなり、とうとう誰かと話している北さんを私が物陰から見ている、というなんだか奇妙な状況にまでなってしまった。なんだか居た堪れなくて、ちょうど話し終わる直前を狙って窓をのぞく──
「──“深淵をのぞく時 深淵もまた こちらをのぞいているのだ”…ええ言葉やね」
「……ぁ、きた、さん」
いつの間にか私の目の前に、その人が立っている。瞳孔の細い金色の目が私を捉え、ぞくり、と首筋が粟立った。狭い視界いっぱいに広がるその色が、じわりと滲む。薄れ霞んだ意識の最後で、みんなの声が聞こえた気がした。
「あーあ、捕まっちゃった。だからやめときなって言ったのに」
「まあ、妖狐の頭領に目ぇつけられた時点でもう終わりやけどな」
「お前ら、何ゴチャゴチャ言うとんねん!時雨んこと最初に見つけたんは俺やからな!!」
「侑、治、角名、時雨を運んでやってくれんか、?俺はもう少しこっちでやることがあんねん。まあ、その間に手ぇ出したら、分かるな?」
「「「……ハイ」」」
✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤
これにて1話終了で〜す!
狐の窓興味がある人はネタとして書く分にはいいけど、実際にはやっちゃダメだよ、?
ほんとに危ないからね!?
それじゃ、良かったら、♡、フォロー、コメントよろしく〜!
おつかれ〜
✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤✥✤
「──なあ、本当に気付いとらんかったんか、?そっちから見えるゆうことは──」
──“俺らからも見える”んやで?
コメント
7件
すごぉぉぉぉ!?
すごー!! この作品めっちゃ好きかも! 私1回狐の窓やったことあるけどなんも見えんかった!
こーいうのかけるの尊敬すぎる!!!