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ちぐさ視点
ご飯を食べ終わり、片付けをしてからお姉様―けちゃのところへ行く。
「コンコン、失礼します」
「どうぞどうぞ〜」
なんか、結構軽いな…本当に実の姉弟なのか?姉弟といっても、姉は数え切れないぐらいいるが。
「で?何の話?」
「えぇっと…」
「ゆっくりでいいからね?」
「ありがとうございます」
「えっと、なんか、笑顔を向けられてドキッとしたり、まだ相手と話したいという気持ちはなんなのかっていう相談を…」
「ねぇ?」
けちゃは、間を置いて言った。
「それって恋だよね?」
「えっ… 」
予想外の反応だった。自分が恋をするなんて考えたことなかったから。俺はどうすれば…
「ちぐ 」
「別に恋は誰でもしていいんだよ?」
「ちぐは自分を卑下しすぎなんだよ」
…なるほど。でも、どうすれば…
「というか、相手は誰なの?」
「…あっとくん」
「あ!あの、八百八比丘尼の?」
「う、うん…」
けちゃは大丈夫なのかな?八百八比丘尼の一族に俺が恋をしたなんて言ったら。どうしよう…
「別に私は反対しないよ?」
「ふぇぇ?」
思わず変な反応が出た。だって、予想外の反応だったから。でも、どうして反対しないんだろう?
「ちぐは、あの話の真実を知ってる?」
「真、実?」
「ちぐが知ってるのはどんなだっけ?」
「えっと…八百八比丘尼の一族と人魚の一族の男性同士が性行為をして、子を産んで、裁判になって、結果的に産んだ子は人魚の一族が引き取った…ぐらいかな? 」
「あ〜そこまでか〜」
「えっ?何かあるの?」
「まあね〜」
「まあ、それが反対しない理由」
「そ、そうなんだ…」
「聞けなくて悲しい?」
「っ…そ、そんなことないよ!」
「いや、その反応、絶対あるでしょ?」
「うっ」
「まあ、いつか教える機会はあるから、その時まで待ってて」
「わ、分かった…」
「というか、そんなことより!」
「八百八比丘尼の一族の子をどうしたいの?」
「えぇ、どうしたいかって…」
正直、どうしたいかは分からない。自分自身、そもそも、恋というものにあまり関わらない生活をしていたから、よく分かっていない。
「ん〜とりあえず、付き合いたい?」
「…分かんない」
「そっか」
「じゃあ、八百八比丘尼の一族―あっとくんと話す機会を増やしたら?」
「話す機会を増やす?」
「そう!」
「まあ、こっちの事情にも、都合がいいし?」
「?」
多分、あの話の真実に関わっているのだろう。だから、その都合が分からない。まあ、どうせ、話するなら、あっとくんが一番いいと思う。ただ、話す時間が増えるだけだし…
「分かった…やってみる」
「じゃあ、明日から頑張ってね〜」
「応援してるよ〜」
「それを言うのなら、俺もけちゃ、頑張ってね」
「あ///」
「けちゃって、まぜ太さんのこと、本気で思ってる?」
まぜ太というのは、けちゃの婚約者だ。まあ、利害一致というやつで婚約している。ちなみに、結婚することになったら、まぜ太さんが嫁ぐらしい。まあ、けちゃは、人魚の一族の長女だから、人魚の一族の当主になるのは、当たり前だけど。
「だ、だって、あんなに素敵な笑顔向けられたら、好きになるしかないんだも〜ん///」
けちゃは、照れながらそう言った。まあ、俺自身、あんまりまぜ太さんとは会ったことはないのだが。多分、相当いい笑顔を向けられたのだろう。なんか言葉がおかしい気がするが。
「そ、そうなんだね」
「まあ、多分ちぐにも分かるよ、その気持ち」
「えっ…」
「だって〜あっとくんのこと好きなんでしょ?そして、笑顔を向けられてドキッとしたんでしょ?」
「う、うん…」
「じゃあ、多分分かるよ、多分」
「そういうものなの?」
「だって、私がなってるんだよ?」
「あっ…」
「一族の姉弟の血筋は凄くってね〜だいたい、好きになるのも同じだから〜」
「(。・//ε//・。)」
「あれ〜?ちぐ〜?」
「う、五月蝿い!」
「まあ、今日はそんぐらいにしとく?」
「…そうする」
「じゃあ、私もう寝るから」
「そっか、じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
恋、か。全然そういうの興味なかったからな。というか、なんで、俺に婚約者がいないんだろう。だいたい、どの一族の子どもは婚約者がいるはず。だけど、俺には婚約者がいない。そして、あっとくんもいない。何に得があるんだろうか。
・・・考えるだけ時間の無駄だな。今日はもう寝よう。
俺はそのまま深い眠りに入った。
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