テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『双子の名探偵は今日も嗤う』〜謎あるところに闇は生まれる〜
第1章 『狙われたシンデレラのガラスの靴』
〜宝石と美しい硝子〜
第3話 犯人の特徴
『なんですって!?私たちの中にいるですって!?』
『お前、無礼にも程があるだろう!』
『ま、まぁまぁ。気を悪くなさらないで下さい。主様はなんの意味もなく人を疑ったりしません。』
『っ……。』
『グロリア様が仰っていました。一昨日がこの美術館の初開園。そしてその日に、招待されたのは貴方方だけ。その夜に…。ガラスの靴は盗まれた。つまり、貴方たちの中に犯人はいるんです。』
『私達の中に…。』
辺りを見渡す。
『…犯人の特徴についてはこれからグロバナー家の憲兵がいらっしゃいます。私は聴取を取りたい方がいるので、呼ばれた3名以外は別室でお待ちください。』
私はベリアンとルカスに目配せする。
『『かしこまりました。主様。』』
『なんで私が呼ばれないといけないのよ。』
『サラ・リンダ様ですね。グロリア様から話を聞いたのです。件のガラスの靴を何度も行事してその展示の周りをグルグルしていたと。』
『っ、そ、それは…。』
『やましい事がないのなら教えてくださいますか?』
『っ…。分かったわ。だけど、その前に…。』
私は主の目を指さす。
『その眼帯を外してくださらないかしら。』
『!』
『傷があるのかは知らないけれど、威圧的に感じますわ。』
『…わかりました。』
(むしろ好都合だ。今は仕事中だから。
自分で決めたんじゃない。探偵の仕事中はこれを外すと。)
シュルっ…。
私は眼帯を解いた。
『…赤い、瞳…。』
(ああ、やっぱり怖がるのか。いや今そんなことどうでもいい。この瞳で心を読めばいい。嘘をついてるかいないかなんて、私の前では明白なのだから。)
『私があのガラスの靴を何度も見てたのはその…。綺麗だったからよ。』
『綺麗…?確かにそうですね。』
『私は昔から綺麗な宝石や硝子には目がなくて…だからつい沢山目に焼き付けたくて…。』
『……。』
《恥ずかしい…。貴族なのにこんな恥じらいを晒すなんて…。それにしても主のその瞳とても綺麗だわ…。まるでルビーの宝石ね。》
『!』
(今のは…嘘じゃない。)
心の中を見た時、私には色が別れる。
嘘ならその人の周りに黒いモヤが現れる。
真実ならその人の周りに黄色い光が現れる。
(この瞳を宝石だなんて……。…執事のみんなや百合菜が知ったら……。)
私はぎゅっと拳を握りしめた。
『どうかなさいましたか?』
『い、いえ。申し訳ございません。確かに目を引く綺麗なガラスの靴でしたね。女性なら誰でも目に焼き付けたくなるのは自然ですよね。そのネックレスに着いている宝石も美しいですね。』
『そ、そうですわ。これは私の夫から貰ったものなの。アレキサンドライトと言って…。』
『もしかして色が変わるという…』
『そうなのよ、色が変わった瞬間を見たら感動してしまったわ。機会があればぜひ。』
『えぇ。楽しみにしています。聴取はこれで終わりです。次の人を読んで頂けますか?』
『えぇ。』
『っ、お前その瞳…。』
『リュージュ・ダリア様ですね。お時間を頂き申し訳ございません。どうぞ、おかけ下さい。』
『あぁ……。』
《なんて綺麗な瞳なんだ……。それに美しい顔……悪魔執事の主と聞いて畏怖を感じていたが……美しい女性だな。》
(ツンデレなのかしら。この人。)
『一昨日の初開園の日貴方は館長であるグロリア様にあのガラスの靴の価値を聞いていたそうですね。』
『そ、それがなにか?文句でもあるのか?』
『いえ、ただ気になったのです。若くしてリュージュ家を継いだダリア様…地位も名誉も教養もある貴方がどうしてそこまでガラスの靴に興味があるのか。と。貴方も貴族の1人。宝石や硝子など見慣れているでしょう?』
『確かにそれはそうだが……。僕はあれを見て感動したんだ。』
『感動ですか。』
『あぁ。僕の父はガラス工芸を営んでいる。だから精巧に作られたガラスの靴を見て…。あのガラスの靴の価値を聞いたんだ。どうやって作ったのか……どこの硝子を使っているのかと……。一昨日だって僕は父の代わりに来たんだ。父にガラスの靴を見せてあげたかったけどその日は仕事と重なっていたから…。』
(父親想いのいい人じゃない…。)
『だから話だけでも父にしたくて……。』
《うぅ、全て話してしまった…恥ずかしい……。》
『クスッ。…ふふ。』
『な、何がおかしい…!』
『いえ、すみません。ただダリア様は父親想いなんですね。』
『なっ!』
《ほ、褒められた、悪魔執事の主に……!》
『お前に褒められても嬉しくない!』
(心を読んだあとに言われても説得力がないんだよな…。)
『聴取は以上です。次の方を読んで頂けますか?』
『あぁ。』
『ダリア様。いつかダリア様のお父様の作品を見せて頂きたいわ。』
『!あぁ。父も喜ぶだろう。君のような美人を連れていったら。』
『え?』
『!あっ!』
《心の声が漏れてしまった!》
『し、失礼する!』
バタンッ!
『最後まで面白い方…ふふっ。あ、いけないいけない。つい笑みがこぼれてしまったわ。』
『貴方で最後です。ハリー・ウェリナ様。』
『悪魔執事の主様その瞳は……。』
『気にしないでください。生まれつきです。』
『それは失礼。私に話とは?』
『貴方はガラスの靴を見に南の大地から来たそうですね。』
『あぁ。新聞で拝見してね。』
『宝石商の貴方がわざわざ南の大地からですか?』
『…何が言いたいのかな?』
『グロリア様の保有する美術館で飾られているガラスの靴をこれでもかと褒めちぎっていたとか。』
『それはそうだろう!あれほど綺麗なガラスの靴なんだからな。宝石も硝子も1級品…。南の大地にはないものだからな。』
『だから…盗もうと思った。』
ピクっ。
『何?』
『南の大地では珍しいものだから…ガラスの靴を……』
『なっ!そんなことするはずないだろう!確かに欲しいとは思ってしまったのは事実だが…!』
《まさか、私を疑っているのか?
まさかな……証拠も何も…》
(クスッ。あーあ。焦れば焦るほど嘘は滲み出てくるものよ。)
その時私の脳裏を支配する声が聞こえる。
『うっ!?』
(まずい、心の中を読み過ぎた……っ。)
《気持ち悪い。左右違う瞳なんて。》
《人の心の中を読むなんて最低。》
《怖い。》
《気持ち悪い。》
『っ……。』
私は頭を抑える。
(これ以上は…危険だわ。休まないと…。)
『…ハリー様。聴取は以上です。部屋へとお戻りください。』
バタンッ。
『この副作用なんてなければ…。』
《気持ち悪い…!》
『……。百合菜も私のこの瞳を見たらそう思うのかしら。』
ぎゅっと胸を締め付けた。
ガチャっ。
『主様、聴取は終わったようですね。』
『えぇ。憲兵の方は?来たの?』
『えぇ。犯人の特徴が書かれた紙を我々に渡してくださいました。』
私はベリアンから紙を受け取る。
『一瞬で顔は分からないが犯人は髪の長い女性。そして胸元には赤色の宝石をつけたネックレスを…。』
『女性…?それならハリー様は犯人ではない…?』
『主様は1番怪しいと思うのはハリー様だと?』
『えぇ……。聴取をしてみて一番動機があると思っていたけど…。』
(犯人が女性だとしたら…。聴取をした3人の中で女性なのはサラ様…。いやそれだけで決めつけるのはでももう怪しい人物は…。)
『…いや、待って。いる…。ベリアン、ルカス。少し手伝って。』
『何か分かったのですか?』
『えぇ。リストにない名前のハリー様の召使いの方あの人に聞きたいことができたから。』
次回
第4話 疑わしきは罰せず
コメント
2件
えーなんか泣けて来ちゃったーこれ見る前に4周年記念日の奴見てたからかな余計主が辛そうに見えて人の感情うをこんなに細かくかけるの尊敬しますこれからも執事のみんなと頑張りましょう