テラーノベル
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なんだかよくわからない作品になってしまいましたが、お納めください🙌🏻
互いについてる怪我を把握しておきたい📡🧪の話。
「おつ〜」
「おつかれ〜」
犯罪禁止時間が迫る頃、メンバーは各自で散っていき、各々の時間を過ごすこととなる。俺もこれ以上起きている気力は無かったので自分の家へと帰ることにした。倉庫からヘリを出し、草花を巻き上げてフワリと浮き上がる。高度を上げるにつれ、街の輪郭がゆっくりとほどけていく。無数の光は星屑のように散らばり、昼間の喧騒が嘘だったかのようにすべてが静寂へと溶けていった。少し離れた場所に目を向ければ、住宅街の灯りは一転して穏やかだった。等間隔に並ぶ窓の明かりは点描画のように夜を飾り、誰かの日常が今も確かに続いていることを静かに主張している。ロスサントスの夜は長い。自宅に帰るまでのこの時間が、俺は大好きだった。
しばらく街の景色を堪能していると、一つ小さな山を超えた先、自宅の明かりが暗闇にポツリと見え始める。決して大きな家ではないのでヘリを傷つけないように慎重に着地し、最後に軽く洗ってからその場を後にした。ドアに手をかけると簡単に開く。
あれ?今日はもう帰ってきているのか。俺より先に帰ってるなんて珍しい
「ただいまぁ………ア?」
「あぁ、おかえりなさい。」
ドアを開けて後ろ手で鍵を閉めていると、ちょうど風呂から上がってきたぐち逸と鉢合わせした。少し湿った髪の毛に、襟のよれた薄いトレーナー。メガネをかけていないから彼の綺麗な瞳とバッチリ目が合う。
「今日早いね」
「個人医の人数が多かったので。休める時に休むのも医者の仕事ですよ」
「ハァ〜、そうですか。さほど休んでないクセに」
狭い廊下を大の大人2人で歩き、リビングのソファにだらしなく寝転んだ
「すみません、せめて私の席を開けると言う気遣いは出来ないんですか?」
「疲れてんだよ、しょうがないなぁもう」
よっこいしょとおじ臭い言葉を漏らしながら体勢を変え、その隣に何の躊躇もなくぐち逸が座ってくる。真隣にある頭をスンスンと嗅ぐと、シャンプーの華やかな香りと少しの消毒液の匂いが鼻を抜けていった。チラリと視線を下に移せば普段フェイスカバーで覆われている首元が顕になっており、真っ白な肌に鎖骨が浮き出ている。1週間前につけたキスマは殆ど消えてはいるが、まだうっすら残っているという事実に何だか嬉しくなった。ふとまた付けたいなと思ったが、首は怒られる。ならば首以外の場所につければ良い
「ぐち逸、腕だして」
「はあ」
タオルを掴んでいた手が差し出され、その細い手をゆっくり伸ばす。トレーナーの袖を肩まで捲り上げ、小さなマークをつける。
つもりだったのだが、その前に目に飛び込んだのは全く別のものだった。刃物で切れた痕に内出血。中でも1番釘付けになったのはたくさんの青あざだった。
「……ぐち逸、この傷なに」
「?…あぁ、別に激しい痛みを感じているわけでもなかったので放置していた傷ですね。結構前からあったんですけど、ここ最近忙しくてそれすら忘れてました。」
「こんなに傷がついてるだなんて聞いてないんだけど?」
「はい。言ってないので」
どれだけ痛みが伴わなくたって、外傷は外傷だ。傷ついているのに変わりはない。
「こうゆう肌に残るような傷が付いたならちゃんと言ってよ」
「…?なぜですか?」
「俺が知っときたいからだよ。お前のカラダの傷まで、全部」
「はぁ…嫌ですね」
「なんで!」
ぐち逸の呆れたような返答についカッとなる。恋人に付いている傷まで全て知っておきたい。そう思ってしまうのはレダーの底知れない独占欲からくるものだった。とはいえ、こんなに独占したくなるのもぐち逸だけであって、普段はこんなに傷の一つや二つで騒ぎ立てるような人間じゃない。シンプルに心配している気持ちもあるが、残念ながらレダーは不器用なので上手くその気持ちを伝えることができなかった
「いや…だって、わざわざ貴方に言う必要ありますか?」
ごもっともである。ぐうの音も出ない。
「………いや、あるって。俺があるって言ってるんだからあるんだよ」
「それ無いって言ってるようなもんですよね」
「グ…それは……」
俺が掴んでいた手をパッと離され、傷を隠すようにトレーナーの袖を伸ばした
「……そしたら貴方だって、ダウンしたとき仕事中以外私に何も言ってこないじゃないですか」
「いや…それとこれとは違うでしょ」
「違くないですよ。この前だって徹夜漬けでクマが酷いことに…って、ちょっと、目逸らさないでください!」
いつのまにか完全に空架の方が優位に立っている。これじゃまるで主治医に怒られるただの患者だ。こんなはずじゃなかったのになぁ、ぐち逸に俺のわがままは通用しない。可愛げなくしょぼくれていると、テーブルに置いてあったメガネをかけて口を開いた
「はぁ…まぁ、レダーさんも私に教えてくれるなら考えてやってもいいですけど」
「……えっ?」
「………いや、やっぱなんでもないです、今のナシで」
「いやズル、それズルいぞお前!」
チャンスを目の前で一瞬にして消されたショックと思い通りにならないもどかしさに、思わずため息が漏れてソファの背もたれに頭を預けた。互いが強がるせいで話が一向に進展しない。大事な人の前で弱みを見せたくない気持ちがつい沸き上がってしまい、2人とも素直に「はい分かりました」とは言えないのだ。
眉間に皺を寄せてフイ、と顔を逸らしてしまったぐち逸を横目で見やる。成人男性にしては細い身体。目を離したらすぐに折れてしまいそうだ。そんな彼をこんな幼稚な考えで失いたくない。それに、俺の知らない傷のせいで肝心なところで足を引っ張って、もしかしたら拉致やら何やらに巻き込まれたりするかも。ただの独占欲だけでは無い、なんなら今は心配の方が勝っている。
どんな生活をしていたらあんな大量の痕を付けられるのだろうか。ここは自分が折れるしか無いと覚悟し、またひとつため息を吐いて口を開いた。
「あのさぁ…俺がこうゆうの伝えるの下手だって分かってるでしょ?」
「はい、知ってますよ」
「はは、即答」
軽く返されて思わず苦笑が漏れる。それでも視線は逸らしたくなかった。逸らしたら、コイツが居なくなる気がしたから。
「ぐち逸の事全部知りたいってのもそうだけど、なにより知らないままってのがヤなんだよ。後から知って“あの時気づいていれば”ってなったらどうするの?その傷が原因でヘマしたら?拉致されちゃったら?自分で自分の身は守れるって言い切れるの?」
ピクリと肩が少し跳ね、深緑の瞳がこちらに向けられる。2人とも命に関わる仕事をしている人間だ。後からではもう遅いということは、誰よりも理解している。
「俺は次からは怪我したら言う。無理したら言う。お医者サマに怒られる覚悟で全部言うよ」
「…それはそれで面倒ですね」
「うるさいなァ…、いやでもさ」
目にかかっていた髪の毛を退かし、耳にかける
「守れたかもしれないのにって後悔するのが1番イヤ。だから、ね、お願い。そうなる可能性が少しでもあるなら潰しておきたいんだよ」
「……」
さっきまで掴んでいたはずの細い腕の感触が、まだ手のひらに残っている気がした。しばらく沈黙が続く。カチカチと時計の秒針の音がリビングに響き渡り、やがてぐち逸が小さなため息を吐いた
「……本当にあなたって人は…」
「…うん?」
「自分勝手で独占欲が強くて理屈が通らなくて…」
「はは、否定はしないかな」
「…面倒な人ですね」
そう言いながらも拒絶の色はなく、むしろどこか諦めたような、柔らかい声音だった。
「分かりましたよ、私も次からはレダーさんに報告します。…その代わり、あなたも同じです。黙って倒れたり無茶しない事」
「………約束する」
「即答以外は信じませんよ」
「するって!!」
ソファに預けていた体を思いっきり起こして、ぐち逸の方に向き直る。焦っているレダーが相当珍しかったのかくすりと笑った気がした。
「本当に厄介ですね、あなたは」
「今更でしょ、あとお前もな」
「心外です」
そう言いながらもぐち逸はトレーナーの袖をもう一度ゆっくりと捲り上げた。さっきとは違って逃げるような動作じゃない。見せるための仕草だった。
「…ちゃんと聞いてくれますか」
「聞くよ」
「途中で茶化したりしませんか」
「努力はする」
「努力、ですか。そうですか。」
「うそ、冗談」
ぐち逸の袖をさらに捲り上げ、二の腕に新しい花を咲かせる。
「…ふは、傷が増えましたね」
「ンだと?笑」
後日、約束を早速破り無線で怒られるレダーが発見されたとかなんとか。
コメント
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本当に最高すぎます🫶🫶🫶✨ ハート一個目ゲット!?早く見れて嬉しすぎます💕💕 お互いの傷まで知っておきたいの、めっちゃ愛おしい〜ッ!!✨✨ レダーさんが思ってることをうまく伝えられないという不器用さ、すごい解釈一致ですね、、、! というか最初のヘリで飛んでるシーンの文章美しすぎませんか…??読んでいて情景がとっても分かるし比喩とかが綺麗すぎます、、、🫶🫶🫶🩵 (神だ…🪽🫧)