テラーノベル
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土曜日の朝――というより、もう昼に近い時間。
平日は早く起きることが多い二人なのに、今日は珍しく、まだ布団の中。
目が覚めても起き上がる理由がなくて、そのまま自然と、ぴったり身を寄せ合っていた。
「……あったかいね」
みことが小さく呟くと、すちは「ほんとだね」と微笑みながら、みことの髪に顔を埋める。
さらさらとした髪に指を通し、くせのない前髪を整えるように撫でると、そのまま額に軽く口付けた。
ちゅ。
次はこめかみ、頬、鼻先。
触れるたびに、みことはくすぐったそうに肩をすくめる。
「んん、すち……くすぐったい」
そう言いながらも、声はどこか楽しそうで、口元は緩んでいる。
すちはそんな反応が可愛くて、今度は首元にそっと顔を寄せる。
ふわりと息がかかるだけで、みことはびくっと小さく身をすくめた。
「ひゃ……っ」
「ふふ、かわいい」
今度は手を取り、指先や手の甲にちょん、ちょんと優しく口付ける。
まるで大事な宝物を確かめるみたいな、丁寧な仕草だった。
「もう……ほんとにくすぐったいんだから」
みことはそう言いながらも、すちの服の裾を軽く掴んで離れない。
逃げるどころか、むしろ少しだけ距離を縮めてくるのが、すちにはたまらなく愛おしい。
「休みの日っていいね。こうやって、何もしないで一緒にいられるの」
すちがぽつりと呟くと、みことはうん、と小さく頷いて、すちの胸に頬をすりっと寄せた。
「……しあわせ」
その一言に、すちは胸の奥がじんわり温かくなるのを感じながら、もう一度みことを抱きしめる。
時間を気にせず、ただくっついて笑って、じゃれ合って――
二人にとっては、それだけで十分すぎるほど贅沢な休日の始まりだった。
みことは、さっきまで自分ばかりくすぐられていたのが少し悔しかったのか、ふっと悪戯っぽく目を細めた。
「……じゃあ、今度は俺の番」
そう言って、すちの顔にそっと近づく。
まずは頬に、ちゅっと軽いキス。次に顎のライン、首元へと、くすぐるように小さく口付けを落としていく。
「ん、……ほんとだ、くすぐったいね」
すちは思わず肩をすくめながらも、楽しそうに笑う。
みことはその反応が嬉しくて、今度はすちの手を取って、指先にちょん、と優しくキスをした。
「ふふ、すちがやってたの、こういう感じ?」
「うん、まさにそれ」
二人で顔を見合わせて、くすっと笑い合う。
みことは少し照れたように視線を落としながらも、そっとすちの唇に自分の唇を重ねた。
みことは嬉しそうに目を細めて、ぎゅっとすちの服を掴む。
すちはその様子が愛おしくて、キスを終えたあとも、みことの額に自分の額を軽く寄せた。
「……仕返し、上手だね」
「えへへ」
二人の間には、ゆったりとした時間と、穏やかな幸福感が静かに流れていた。
しばらく、ただ寄り添って静かな時間を過ごしていたあと。
すちは、みことの髪を指先でゆっくり梳きながら、少しだけ真剣な声で切り出した。
「ね、みこと。相談なんだけどさ……」
みことはぱちっと瞬きをして、すちの顔を見る。
「誕生日の件なんだけどさ。いきなり無理したりじゃなくて、少しずつ慣れていけたらいいなって思ってるんだ。ちゃんと、みことのペースで」
一拍置いてから、すちは照れたように視線を逸らし、ぽつりと本音を零した。
「……それと、正直に言うとさ。俺、みことのこと、欲しくて仕方ないんだよ」
言い切った瞬間、耳まで赤くなるすち。
みことは一瞬きょとんとしたあと、みるみるうちに頬が熱を帯びていく。
「……す、ち……」
恥ずかしさで言葉が詰まりながらも、みことの瞳には、不安よりもどこか期待の色が宿っていた。
ぎゅっと、すちの服の裾を掴む指先に力がこもる。
そして、小さく――でも確かに。
「……うん」
こくり、と頷く。
その仕草があまりにも愛おしくて、すちは思わず微笑み、みことの額にそっと自分の額を寄せた。
「無理しない。ちゃんと一緒に、ゆっくりね」
みことは少し照れたまま、でも安心したように目を細めて、すちの胸元に額を預ける。 静かであたたかい期待と、やさしい信頼がゆっくりと広がっていった。
今日は「長くたくさんキスを続ける練習」。
「……準備は良い?」
すちがそう囁くと、みことは小さく喉を鳴らして頷いた。
唇が重なった瞬間、さっきまでの軽いキスとは明らかに違う熱が伝わる。
ゆっくり、けれど逃がさないように包み込むキス。
みことは最初こそ呼吸を意識していたものの、すちの腕が背中を引き寄せた瞬間、ふっと力が抜けて、身体ごと預けてしまう。
「……ん……」
息が絡み、唇が何度も触れ直されるたびに、頭の中がじんわり熱くなっていく。
すちは離す気などないように、角度を変えてさらに深く口づける。
みことは無意識にすちの服をぎゅっと掴み、逃げ場を失ったまま、身体ごと引き寄せられる。
息を吸うタイミングを探そうとするのに、すちのキスがそれを許してくれない。
「……は、ぁ……」
一瞬だけ離れた隙に息を吸うと、またすぐ唇が重なる。
その繰り返しに、みことの視界はじわじわと揺れて、胸の奥が甘く痺れていく。
「すち……」
名前を呼ぶ声も、かすれてしまう。
すちはそんなみことの反応が可愛くて仕方ないと言わんばかりに、さらに距離を詰め、抱きしめる力を強めた。
キスはどんどん熱を帯び、ゆっくりだった動きも、次第に抑えきれないほどの勢いを含んでいく。
呼吸が乱れ、鼓動が耳の奥で響く。
みことはもう「練習」なんて意識は飛んでいて、ただすちの温もりとキスに溺れるように身を委ねていた。
ふっと唇が離れたとき、みことは肩で息をしながら、潤んだ目でぼんやりすちを見つめる。
「……あれ……息、できてたか分かんない……」
すちはその表情に思わず喉を鳴らし、額を軽く合わせて微笑んだ。
「うん、ちゃんとできてたよ。もう1回させて」
みことは顔を真っ赤にしながらも、どこか期待するように、まだすちの服を離さなかった。
唇が離れないまま、息と息が混ざり合い、静かな室内にふたりの呼吸音だけが重なっていく。
何度も重ねられるキスに、みことの頭はじんわりと熱を帯び、まるでのぼせたみたいにふわふわしてきた。
力が抜けて、無意識にすちの胸元へと体重を預ける。
すちはその小さな変化をすぐに感じ取って、しっかりと腕を回し、みことを支える。
「……大丈夫?」
そう囁く声さえも、まだ少し息が混ざっていて柔らかい。
みことは小さく頷きながら、離れたくないと言うように、すちの服をきゅっと掴む。
唇が触れ合うたび、温もりが伝わってきて、じんわり甘く満たされていく。
頭の中はぼんやりしているのに、すちの存在だけははっきり感じられて、安心とときめきが同時に押し寄せる。
「……なんか、くらくらする……」
小さくこぼした声に、すちはくすっと笑い、額を軽く合わせた。
「それだけ夢中になってたってことかな」
そう言って、今度はゆっくり、落ち着かせるように優しいキスを落とす。
みことはその温度に包まれながら、ほっと息をついて、すちの腕の中でゆるやかに力を抜いていった。
ベッドの上で寄り添いながら、ふたりは相変わらずのんびりと過ごしていた。
すちは背中をクッションに預け、みことを胸元に抱き寄せたまま、ゆっくりと髪を撫でていた。
みことはすちの服を指先でつまみながら、気持ちよさそうに目を細めている。
「……こうしてると、時間溶けるね」
ぽつりとみことが言うと、すちはくすっと笑う。
「ほんとだね。休日の正しい使い方って感じ」
頬に軽く額を寄せ合いながら、しばらく他愛ない会話を続けていたが、ふと、すちの表情が少しだけ真面目になる。
「……そういえばさ」
みことの髪を撫でる手を止めずに、視線だけを落とす。
「明日、母さん達帰ってくるんだよね。進路面談するんだっけ?」
みことは「うん」と小さく頷く。
「そっか……」
すちは少し考えるように間を置いてから、何気ないふりをして聞いた。
「みことはさ、大学どこに行くつもりなの?」
その問いかけに、みことは一瞬だけ視線を泳がせる。
指先でシーツをきゅっとつまみ、少し考えてから、ぽつりと答えた。
「……俺、大学行かない」
すちの動きがぴたりと止まる。
「……え?」
思わず間の抜けた声が漏れた。
一瞬、頭の中が真っ白になる。
「え、えっと……行かないって、どういう……?」
みことは少しだけ申し訳なさそうに眉を下げて、視線を上げた。
「就職、するつもり」
その一言が、すちの中にストンと落ちる。
「……就職?」
驚きすぎて言葉が追いつかず、しばらく固まったままみことを見つめてしまう。
けれど、すぐに我に返り、姿勢を正した。
「……それ、初めて聞いた」
みことは小さく頷く。
「ちゃんと話そうと思ってたんだけど……タイミングなくて」
すちは一度、深く息を吐いたあと、みことの肩にそっと手を置く。
「……それ、大事な話だよ。 ちゃんとみんなで話した方がいい」
真剣な表情で、はっきりと告げる。
「家族会議、だね」
みことは少しだけ緊張したように笑った。
「……うん」
さっきまでののんびりした空気とは違う、少しだけ張りつめた空気。
それでも、すちはみことの手を離さず、指を絡める。
「ちゃんと聞かせて。みことの考え」
みことはその手をぎゅっと握り返し、小さく頷いた。
この先、きっと大事な話になる。
コメント
4件
ベットになりたい……(?)
はぁ、甘ったるい空気もう食べたい(?)尊い
さいこうです😭😭😭4時間ぐらいかけて全部一気に見ました‼️😭続きの作品楽しみにしてます‼️