「それでは、報告会としようか」
よろしくお願いします。と揃いに言い、輝から報告となった。
「僕の方は特にこれといった異常は無かったかな。強いて言うなら……ああ、いや。なんでもない。次、立花家当主」
最後に何かを言おうとしていたがすぐ次に回してしまったので言及ができなかった。
「私もこれといったことはないが……最近は炎の怪異……異質怪異が増えている気がするな。神楽坂家当主はどうだ?」
「私の方も変わったことは無いよ。その異質怪異ってのもこっちの区画には出ていないし……その炎の怪異について詳しく知りたいところね」
―――その炎の怪異は一日一回、必ず現れる。ただ、決まって七日と十三日は七不思議級の強い怪異が現れるんだ。何かの暗示…とも捉えられるがどうも不可解でな……
「……確かにそれは不可解だね…僕の方でも調べておくよ」
「協力、感謝する」
「それじゃ!報告会はこれで終わりにして、さっきの続きをしよう!」
にぱーと笑う輝に何かを悟ったのか永環が逃げようとするが、いつの間に張っていたのか、霊力の壁によりそれは叶わず。
強制的に外へ放り出されてしまった。
***
「―――スリルを求めてるからね。個人戦でいこうか」
「もう、お好きにどうぞ……」
ざっと強い風が吹く。それが合図になり、輝と永環が対峙する。一方の煌神はこの手合わせをさっさと終わらせたいがために七枚札を作り出し大技……といきたいところだったか背後に輝が構えていたため阻まれた。
「……っ」
「そういうの良くないよね〜自分だけ抜け駆けとか許さないよ」
小さく舌打ちをし、距離をとる。遠距離型の煌神にとってはこの戦いは不利だ。別に剣術でも戦え無くはないが専門としてきたものが違う。しかし諦めたのか、かつての先代当主のように水から剣を作り出した。
「分かってやってるよね?私が剣術得意にしてないの」
「あっはは」
絶対わかってるだろう。と言いたくなるが長年祓い屋として同じ時を過ごしてきたのだから問う必要も無いだろう。
輝の背後に永環がいる。それは輝も気づいているはずだが手を出さない。何か策があるのだろうが煌神はそんなのお構い無しに輝の肩スレスレを剣で…氷藍刃で貫く。永環も自分がそうするのを知っていていて直ぐに防がれる。
「……永環…あんた、甘いんだよ!」
直ぐに永環の後ろに回り、先程使い損ねた七枚の札を彼女の周りに囲い、動けなくする算段だ。
「甘いのはどっちだろうね?」
上手くいくと思っていたのもつかの間。また輝に防がれる。
「おっと、仲間でもないのに庇うなんて…どういう了見だ?」
「了見も何も無いよ。こんなので一人欠けてしまっては面白みがないじゃないか」
「…相変わらず、面倒なやつだな!」
交合わせていた剣同士を弾き輝の懐に入り札を貼る。剥がそうとするがやはり霊力で剥がせず。
「札を貼ってくれたってことは……そろそろ本気を出してもいいってことだよね」
「はあ?そんなこと承知したわけじゃ……」
目の前に、輝がいない。
しばらくの沈黙が流れる。そして、ふっと煌神の背後に現れ斬りかかる。が、咄嗟の霊力の防御で躱す。
「使うの、水でいいの?」
痺れるよ。と言われ、その意味を理解する。
「そんなの知ってる……あんたこそ、雷の令を変えていいのか?」
そう言っているうちに水から氷に変えられ霊刀が氷漬けになっていく。隙を狙ったのか今まで介入していなかった永環が輝、煌神を串刺しにしようとする。
「永環さん……貴女も随分と図々しくなったね。あまり感心は…できないかな!」
今まで使っていなかった腕にある数珠を操り、槍を縛り上げた。ここで下手に取り返そうとすると逆手に取られ何が起きるか分からない。ので焔双槍を手放し、霊力だけへと切り替えた。
「…うん、そうするのが得策だね。さすが、現当主」
「ちっとも嬉しくないですね」
地面に二重の円を描き手をついた。すると、炎が真っ直ぐ彼らの元へ行き燃える……はずだったが、どこからか聞こえる異音に皆が止まった。
「……どうやら、怪異のお出ましのようだね」
「全部祓ったはず…」
「いや、これは…異質怪異だ」
直ぐに行くぞ。と煌神が指示する。異質怪異は一刻も早く祓わねばどんな被害が及ぶかが分からない。
「とりあえず、勝負はお預けかな。また今度やろうね」
「それは無理」
「私も」
目的地に到着すれば、異質怪異がうじゃうじゃ巣くっていた。
「今日って何日?」
「今日は十七日ですね」
「…異例だな。少なくとも私が祓っているときにはそ強力な異質怪異はあの日付だけだったんだが」
「あー……面倒だから考えるのやめようか」
ニコニコと満面の笑みを浮かべながら怪異を斬っていく。三人もいれば片付けるのは早くあっという間に討伐した。
「…この件はまた今度話しましょう。もう、夜が明けるわ」
「そうだね。ま、良かったんじゃない今日は学校休みだよ。ああそれから、明日話したいことがある。家に来て」
「承知した」







