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𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸莉犬
俺は、小さい時から特別体が弱いわけじゃないけれど、強いわけでもなかった。
自分の好きなことなんて思いどうりになんて出来なかった。
家族も、友達も、みんなみんな離れていった。
小さい頃の俺は、いつも一人だった。
声を上げても届かない孤独。
家族が笑顔になる瞬間は遠く、友達は気づけば離れていった。
誰かを愛しても、いつも最後には一人になる
――そんな恐怖だけが、心を締め付けていた。
俺が愛した人は皆俺から離れていくんだ。
それだったら、最初から期待しなければいい、愛さなければいい。
いつからか、そう思うようになった。
でも、そんな俺を少しづつ変えてくれたのは
俺のリスナーであり、
すと〇りのリスナーであり、
すと〇りのメンバーだった。
必ずしも、誰かを愛した分、愛してくれた分の愛を返してくれる訳じゃない。
それは俺だってそう。
皆が俺を愛してくれるように、俺は皆を。
皆と同じようには愛せない。
普通の家庭に生まれて。
普通に恋をして。
普通に大人になる。
こんな叶うはずのない願いを何度も何度も、繰り返してきた。
「楽になりたい」
何度そう願っただろうか。
誰にも理解されないこの社会で俺が生きていくすべは、本当にあるのだろうか。
そう思っていた。
何年も、何十年も。そしてこの先もずっと。
俺には居場所がないんだって。
心の中のどこかで感じてた。
そのたびに、自分の居場所を作るために必死になっていたのをよく覚えている。
俺が”ここ”にいる意味はなんだろう。
歌って、笑って、みんなの前では明るい顔をして――。
でも、心の奥ではずっと叫んでいた。
「助けて」って。
けれど誰も、本当の俺には気づかない。
気づかれても困るけれど。
弱い俺なんて、誰にも見せたくないから。
だから俺は、選んだんだ。
“消える”という道を。
眠るように、楽になれるなら。
誰にも迷惑をかけないで、俺が俺じゃなくなるなら。
それが一番いいって、そう思ってた。
……なのに。
気づけば耳の奥で、懐かしい声が聞こえる。
「莉犬くん、大好きだよ」
「ずっと待ってるからね」
あの優しい声が、まだ俺を引き止める。
心なんてもう壊れているはずなのに、
まだ“生きたい”ってわがままを願ってしまう。
――俺は、どうすればいいんだろう。
生きるのも、死ぬのも、どちらも怖い。
あー、俺怖かったんだ。
ここにいる理由がないような気がして。
必要とされていないように感じて。
俺が俺じゃなくなっていく感覚がして…。
明るい未来に手を伸ばしても、いつも指先には触れられなかった。
どれだけ走っても、光は遠ざかるばかりで。
それでも俺は、諦めきれずに手を伸ばし続けていた。
今の俺は、細く頼りない一本の綱にすがりついているだけ。
その綱は今にも切れそうで、ほんの少し力を入れたら崩れてしまいそうで。
それでも俺は必死に繋ぎ止めていた。
そして、これが切れたら俺は本当に一人になる。
未来なんて、見えるはずもない。
夢なんて、どうせ壊れるだけ。
それでも……心のどこかで願ってしまう。
「もう少しだけ、この綱が切れませんように」
「もう少しだけ、生きていられますように」
矛盾ばかりの気持ちを胸にいつだって俺は笑顔を向け続けていた。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸さとみ
心拍計の音が、耳をつんざくように響く。
「……っ……ピーッ!ピーッ!ピーッ!」
看護師「血圧まだ落ちてます!」
医師「アドレナリン投与!急げ!」
鋭い声が飛び交い、目の前では莉犬君の小さな身体が震えていた。
胸が、まるで氷の手で掴まれたみたいに痛い。
さとみ「お願いだ…莉犬…!」
祈りにもならない言葉が、口から勝手に漏れる。
その瞬間——
「……ピッ、ピッ、ピッ……」
不規則だった音が、ほんの少しずつ整い始めた。
大きく上下していた胸の動きが、次第に穏やかになっていく。
看護師「心拍…安定してきました!」
医師「よし、もう一度確認しろ!」
一瞬前まで崖っぷちだった空気が、急に引き戻された。
皆、声も出せずただ固まっている。
そして、酸素マスク越しに、莉犬の唇が微かに動いた。
莉犬「…死なさせてよッ…ポロポロ」
莉犬「優しくないんだからッ笑…ポロポロ」
その声はかすかで、風が触れるほどに弱々しい。
でも、確かに“生きている”声だった。
さとみ・るぅと「莉犬ッ!!!」
ころん「良かったッ…ポロポロ」
涙が勝手にあふれ、俺はその手を両手で包み込む。
さとみ「うっさいッ…笑ポロポロ」
さとみ「愚痴は後で聞いてやるよ…ポロポロ」
莉犬は小さく瞬きをして、ほんの少しだけ笑った。
その笑顔は、壊れそうなほど脆いのに、誰よりも強い光を放っていた。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸ジェル
莉犬、生きててくれてありがとう。
心の中で、声にならない声でそう叫ぶ。
泣かなくちゃいけない場面だということは分かっているし、頭では理解しているつもりだった。
ただ今は、自分自体の気持ちがよく分からなくなっていて。
嬉しいのか。
悲しいのか。
楽しいのか。
つまらないのか。
今の俺には何も分からない。
そして、自分が何者なのかもまだよく理解することは出来ていなかった。
ななもり「ジェル君ゆっくりでいいんだ…」
ななもり「すぐに治す必要は無いよ」
ななもり「俺達もゆっくり進もう」
ななもり「莉犬くんに負けてらんないよ」
ジェル「そやなぁッ…ポロポロ」
さとみ「ジェルッ…ポロポロ」
るぅと「ジェル君ッ…ポロポロ」
ころん「じぇるぅッ…ポロポロ」
ジェル「じぇるぅってなんやねん笑」
ころん「はー?笑」
ななもり「喧嘩しないのっ」
ななもり「この瞬間も莉犬くん頑張ってるよ」
るぅと「そうですね…」
ころん「あ!放送!」
さとみ「あ、やっべ」
るぅと「やめときます?」
ななもり「それだってありだよね」
ジェル「かますんとちゃうの?」
さとみ「そうだよな!ジェル!」
さとみ「よっしゃ!俺の家でやんぞ!」
ころん「あ、ちょ待ってよぉぉ…」
るぅと「莉犬よろしくお願いします!」
ジェル「おぅ」
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸ななもり。
医者「良かったら待っててあげてください」
医者「今寝てるんですけどね」
医者「容態は安定したので、大丈夫かと」
医者「ただ重大なのは変わらないので」
医者「無理だけはやめてくださいね」
ななもり「もちろんです」
ななもり「ありがとうございました」
医者「いい友達を持ったね莉犬くん」
医者「君達の活動を僕達も見守ってますよ笑」
ジェル「リスナーさんやったんですか?」
医者「患者さんがね、そうなんですよ」
医者「長い付き合いでね笑」
ななもり「そうだったんでね…!」
ななもり「良かったら今日見てくださいね」
医者「そのつもりですよ笑」
ほらね、莉犬くん。
君はひとりじゃない。
君を愛してくれる人はもう沢山いるんだよ。
もう、安心していいんだ。
君の仲間は何百人もいるんだから。
コメント
3件
もうめちゃくちゃおもしろかったです!ほんとに最高でした!