テラーノベル
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少しの間、沈黙が続いた……街角の風が、冷たく頰を撫でる。
小島くんと福本くんが、戸惑った顔で私たちを見ている。
それを先に切り出したのは、私だった。
「佐野くん、ごめんね。それはできない……。佐野くんは、私のこと好きって言ってくれるけど、佐野くんには私よりももっと良い人がいると思う」
『……嫌、先輩じゃなきゃ嫌です。先輩だから好きなんです』
初めて見た……
こんな弱気な佐野くん。
いつも私の前だと、ドSでオオカミみたいなのに……
今は、まるで捨てられた子犬のよう……
大きな瞳がうるうるして、黒髪が少し乱れている。
そんな佐野くんを見ていられなくて、私はその場から逃げ出した。
「ごめん……!」
小島くんたちの声を振り切って、走り去る。
人気のない路地裏に辿り着き、壁に寄りかかってその場にしゃがみ込んだ。
涙が、ぽろぽろと零れ落ちる。
「なんで……なんで、そんな目で私を見つめるの……? なんで、私を好きでいてくれるの……? 分かんないよ……」
佐野くんから離れなきゃいけないのに……
佐野くんから離れないと、周りを傷つけてしまうのに……
いつの間にか……
私は佐野くんのこと、好きになっていたみたい……
あの熱い視線、甘い囁き、優しい腕の温もり。
すべてが、心に染みついて離れない。
この気持ちを、どうすればいいのか……
私には、分からなかった……
その頃、3人があんな話をしていることを、私はまだ知らなかった。
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