テラーノベル
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{え〜っと、佐野くん}俺は桃井先輩が逃げた方向を呆然と見つめていたけど、福本くんの声で我に返った。
『はい、なんですか?』
幼なじみの2人が、俺をじっと見つめている。
小島くんが少し照れくさそうに言った。
〔俺ら、桃井と小さい時から一緒にいるから分かるんや。桃井はな、佐野くんのこと嫌いではないで。むしろ好きなんよ。好きだから傷つけたくない。自分が近くにいると、佐野くんを傷つけてしまうと思ってるんやと思う〕
『……え』
俺は息を飲んだ。
そんなん、考えたこともなかった。
福本くんが頷いて続ける。
{だから、行ってあげてや。桃井の所に。多分、人気のない所で泣いてると思うわ。あいつ、昔から弱さ見せへんから}
俺はそれを聞いて、胸が熱くなった。
『ありがとうございます……!』
その場から離れ、先輩を探しに行った。
先輩がどこにいるのかも分からないのに、俺はひたすら走り続けた。
街の路地を抜け、公園を横切り、息が上がるのも構わず。
やっと、先輩を見つけた。
人気のない路地裏で、しゃがみ込んで泣いている姿。
黒い髪が肩に落ち、肩が小さく震えている。
『先輩……。』
俺がそう呟くと、先輩は目を真っ赤にさせて立ち上がり、振り向いた。
俺は、そんな先輩を抱きしめた。
180cmの体で、彼女をすっぽり包み込む。
「なんで……なんで佐野くんが……」
声が震えている。
俺は優しく背中を撫でながら、耳元で囁いた。
『先輩、全部聞きました。幼なじみから。俺を傷つけたくないんですよね?俺の近くにいたら、誰かを傷つけてしまうと思ったんですよね?』
「実際に高橋さんを傷つけ、佐野くんのことも傷つけた……。そんな私が佐野くんの近くにいる資格ない……」
先輩の声が、涙でくぐもる。
俺は強く抱きしめて、ゆっくりと言った。
『先輩、それを決めるのは先輩じゃなく俺です。俺は、ずっと傍にいて欲しいです!何があっても先輩を守ります。あと、一番傷ついてるのは先輩じゃないですか。一人で抱え込まないでくださいよ。俺の前だけでもええので、弱さ見せてください』
先輩の体が、少しだけ俺の胸に寄りかかった。
その瞬間、俺の心は決まった。
もう、絶対に離さない。
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