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パンチングマシーンニキ
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shima7a
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#前世
shima7a
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第120話 「新しい柳城」2028年春。
啓介が柳城高校野球部の監督になって。
半年が過ぎた。
秋。
冬。
そして。
桜の季節が近づいていた。
啓介にとって、監督として初めて迎える春だった。
冬の間。
チームは基礎から鍛え直してきた。
キャッチボール。
守備。
走塁。
打撃。
そして。
何よりも啓介が大切にしたのが、選手同士の声かけだった。
ある日の守備練習。
ミスが続いた一年生がいた。
「すみません……。」
以前なら。
その選手は自分を責め続けていたかもしれない。
しかし。
二年生の選手が声を掛ける。
「大丈夫。」
「次、取ろう。」
啓介は少し離れた場所から、その様子を見ていた。
そして。
笑った。
「それでいい。」
福間監督から受け継いだもの。
それが少しずつ、選手たち自身のものになっていた。
春季大会。
柳城高校は初戦を突破。
続く試合も勝ち上がる。
準々決勝。
接戦。
最終回まで1点差。
ベンチの啓介は、選手たちを見つめる。
「焦るな。」
「今までやってきたことをやろう。」
九回。
柳城が逆転。
そのまま逃げ切った。
準決勝。
強豪校との対戦。
序盤は苦しい展開。
それでも守備陣が踏ん張る。
七回。
柳城が同点。
八回。
勝ち越し。
そして。
ゲームセット。
決勝進出。
決勝戦。
相手は、昨秋に柳城を破った高校だった。
啓介は試合前。
選手たちにこう話した。
「去年のことは考えなくていい。」
「相手に勝つためじゃない。」
「自分たちが、冬からやってきた野球を完成させるための試合です。」
プレーボール。
序盤から柳城が主導権を握る。
三回。
先制。
五回。
追加点。
七回。
さらに1点。
3対0。
相手も終盤に反撃する。
3対1。
しかし。
最後のアウト。
ファーストへの送球。
ゲームセット。
柳城高校。
春季大会優勝。
選手たちが歓喜の輪を作る。
啓介は、その輪を少し離れた場所から見つめていた。
主将が走ってくる。
「監督!」
「優勝しました!」
啓介は笑う。
「おめでとう。」
そして。
「でも、ここがゴールじゃない。」
主将は頷く。
「はい。」
その日の夜。
啓介のスマートフォンが鳴った。
福間監督からだった。
「優勝、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
少し沈黙。
福間監督が言う。
「どうでしたか、監督一年目の春は。」
啓介は少し考える。
「難しいです。」
「選手として野球をするのとは、全然違います。」
福間監督は笑う。
「そうでしょう。」
「でも。」
啓介は続ける。
「少しだけ分かりました。」
「何がですか。」
「先生が、どうして選手一人ひとりをあんなに見ていたのか。」
電話の向こうが静かになる。
「勝つことだけじゃない。」
「その選手が卒業したあと、どう生きるのか。」
「そこまで考えていたんですよね。」
福間監督は答えなかった。
ただ。
「それが分かったなら。」
「もう私から言うことはありません。」
啓介は笑った。
「まだ早いですよ。」
二人で笑う。
電話を切ったあと。
啓介は部屋の窓を開けた。
春の風が入ってくる。
柳城高校のグラウンドでは。
新しい選手たちが、新しい歴史を作ろうとしている。
そして。
夏。
柳城高校は。
もう一度、甲子園を目指す。
啓介監督一年目。
春は、最高のスタートを切った。
コメント
1件
わあ、素敵な回でした……! 特に福間監督への電話のところ、じんときました。「先生が、どうして選手一人ひとりをあんなに見ていたのか」——啓介が監督になって初めて、その重みを実感した瞬間が胸に響きます。ミスした一年生に「次、取ろう」と声をかける二年生のシーンも、練習の積み重ねが形になった感じがして温かくなりました。春の風が似合う、優しい読後感です。