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その夜。
兄と悠真の笑い声がまだ階下から響いていた。
自室に戻った咲は、ベッドの上に座りこみ、深く息を吐く。
――どうして。
ほんの少し優しくされただけで、こんなに気持ちが揺れるんだろう。
窓の外には、春の夜風に揺れるカーテン。
その向こうに広がる夜空を見上げると、昨日の夕暮れの悠真の笑顔がまた蘇る。
「……ただの兄友、なのに」
呟いた声が静かな部屋に落ちていく。
それでも心臓の鼓動は止まらない。
シーツを握りしめながら、咲は顔を伏せた。
恋なんて、まだ知らないはずだったのに――。