テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
翌朝。
リビングに降りると、いつもより早い時間に悠真の姿があった。
スーツ姿でテーブルに腰かけ、コーヒーを飲んでいる。
「おはよう、妹ちゃん」
何気ない挨拶に、咲は一瞬だけ足を止める。
――朝から会うなんて、思ってもみなかった。
「……おはようございます」
ぎこちなく頭を下げると、悠真は「亮はまだ寝てる」と肩をすくめて笑った。
食卓に残る書類とカバン。
大学四年、就活の最中――そんな現実が、急に目の前の彼を遠く感じさせる。
「妹ちゃんも、朝は強いほう?」
ふいに向けられた問いかけに、咲は慌てて「まあ、普通です」と答えた。
たったそれだけの会話なのに、胸の鼓動が速くなるのを止められなかった。