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⚠︎nmmn⚠︎長め
───🐇side───
赫『…第一印象は,明るくて元気な優しい子。ほんとにそれだけ。』
『歳近いし,話合うし,面白いし,いい友達ができてよかったって心から思った。』
『……でも気づいちゃったんだ。』
『りうらはいむのことが恋愛的に好きなんだって。』
白『…』
黑『…』
赫『言いたかったけど言えなかった。』
『気持ち悪がられたくなかったから。』
独り言のようにぽつぽつと呟くりうちゃんの目に薄い膜がかかった。
次いで擦り切れた声音が僕の耳に届く。
赫『…いむはりうらの太陽なの。』
…ふざけんな。
太陽?
いむくんの価値はそんな生ぬるいもんとちゃう。
世界でたった1人の,僕の,僕だけの宝物。
生きる意味。
白『……せやから盗ってもええって?笑欲しくなってまうのもしゃあないってこと?』
赫『そうじゃない、ッ…!(ポロッ』
『…っ』
『ただ……ないくんの口車に乗せられる一因だっただけ。』
『…ほんとにごめんなさいッ…(泣』
白『…』
泣き崩れる目の前の共犯者を冷たく見下ろす。
ぴんと張り詰めた空気が肺に重い。
さあどうしてやろうかと考えを巡らせていると,終始口を閉ざしていた悠くんが静かに息を吐いた。
黑『……口車。』
『…って言うたな,お前。』
赫『…』
黑『…』
『何吹き込まれたん。あいつに。』
赫『……それを今から説明したい。』
『聞いてくれる,?』
黑『…』
僕が兄ちゃん,いむくんが弟の有栖家。
悠くんが兄ちゃん,りうちゃんが弟の獅子王家。
猫宮家のまろちゃんと宵闇家のないちゃんが従兄弟関係。
これら計4家と数十人の組員とで構成されたマフィア組織が宵闇組で,
この組のトップは,その名の通りないちゃんの父親である宵闇総司が担っていた。
総司さんは訳あって親を失った僕,いむくん,りうちゃん,悠くんを施設で引き取って組に取り込んだ。
何故そんな行動に走ったのかは知らないが,生活に困らない賑やかなあの場所へ進んで招き入れてくれた総司さんに僕らは少なからず恩を感じていたし,尊敬だってしていた。
…1つの点を除いて。
赫『…DV。』
『ないくんは総司さんから精神虐待を受けてた。』
白『…』
…気づいてたよ。ないちゃんが総司さんにきつく叱られて,こっそり一人で泣いていたことを。
でも総司さんに歯向かうなんて無力な僕には出来なかったから。
せめてもの気持ちで僕はないちゃんにいつもクッキーを焼いていた。
白『………ないちゃん』
桃『…ん…』
白『…またクッキー焼いたんよ。』
『一緒に食べへん、?』
桃『…(コクッ』
説教を受けたあとのないちゃんはいつも静かで,無気力で,大人しくて。
僕はそんなないちゃんが少し怖かった。
白『……どう?うまい?』
桃『…うん』
『ありがとう。初兎ちゃん。』
チャームポイントの八重歯を覗かせて力なく笑うその表情は,今でも鮮烈に僕の記憶へ刻み込まれている。
あの時僕が何かしらの動きを見せていたらあんなことにはならなかったかもしれないって,何度も何度も悔やんだ。
白『…やからって,』
『ないちゃんがいむくんを連れ去った事実に変わりはあらへ──』
赫『分かってる…!!』
食い気味に言葉の尾を切られ,きゅっと喉が詰まった。
赫『許してもらおうだなんてこれっぽっちも思ってない…』
『殺されたっていい覚悟でここまで来たの!』
白『…』
感情にのまれたように大粒の涙を流しながら,質のいいスーツに爪を食い込ませる。
…ここにもんてきたときのいむくんも,僕を見てこんな気持ちになったんやろうか。
白『…ほな,死ぬか?』
赫『……ぇ?』
カシャンっと音を立てて,素早く拳銃を額に突きつける。
さすがに予想外の行動だったのか,悠くんが『おま…っ!?』と声を上げた。
白『止めんといて悠くん。』
『コイツはもう僕らの仲間やない。』
黑『…っ』
赫『…』
『………いいよ。撃っても。』
黑『…はっ、?』
悟ったようにりうちゃんが目を瞑り,内ポッケから何かを取り出そうとする。
武器か何かかと一瞬身構えたが,出てきた代物は真っ黒な小型の電子機器だった。
赫『ボイスレコーダー持ってきたんだ。』
『この6年間のこと,いつでも初兎ちゃんたちに話せるように録っといた。』
『りうらが死んだらすぐに聴いて。』
僕の手のひらにそっとレコーダーを乗せて,両手を上げながら背を向ける。
初めからこうなることを分かってたのか。
白『…』
小さく脆そうなその頭に銃口を向け,僕は迷いなく引き金を───。
───💎side───
暗い。真っ暗。何も見えない。何も聞こえない。
ここはどこ?僕は誰?どうしてこんな所にいるの?
ぶわ…っ
水『…っ』
強くて冷たい風が吹いて,視界が水色の何かに遮られる。
反射的に指先を動かし,無数に乱れ飛ぶソレをさっと捕まえた。
水『…花びら?』
今にも溶けてしまいそうに儚い,1枚の花びら。
酷く見覚えがあった。
水『…』
ふっと顔を上げる。
まだまだ止む気配のない風が焦れったくなって,僕は自分の足で花のカーテンに身を放った。
何でか異様に体が軽く,中々前へ進むことができない。
視界が少しずつ開けて,微かに光の射し込む数メートル先に複数人の人影が見えた。
『───!!』
『───~~─…!』
『…』
…誰だろう。あの人たち。
声が反響してよく聞こえない。
どうしてあんなに必死そうなのかな。
くしゃくしゃに顔を歪めた3人は,あと少し進めば届く距離。
桃『行かないで…いむ』
水『…』
振り返ると,そこには僕が知るよりずっとずっと小さい,少年の姿のボスが立っていた。
…ボス…?
……あぁそっか。そうだ。
僕はこの人の…ボスの部下で,名前は…えっと…
桃『…ずっと一緒って言ったじゃん』
『忘れたの?』
水『…』
古い記憶が蘇る。
差し出された小指に僕の小指を絡めて指切りをした,あの日の記憶。
俺たち…ずっと一緒だよね?
水『…ぼす』
今にも泣き出しそうな表情で僕を見つめるその瞳に思わず踵を返しかける。
そんな僕の手首を誰かが強く引っ張った。
真っ白で小さくて骨ばった,あったかい手。
首を拗じった先にいたのはりうちゃんだった。
大神りうら。僕の大切で大好きな同期の男の子。
赫『…駄目だよ。きみの居場所はそっちじゃない。』
水『…りうちゃ,?』
赫『……ごめんね,今までたくさん無理させちゃって』
『でも…でももう大丈夫だから。』
『これからは全部りうらが…一人でなんとかするよ。』
脱力したように笑うりうちゃんの姿が,いつの間にかボスと同じ背丈まで縮んでいる。
戸惑う僕をよそに,何かを訴えかけるような眼差しだけを残して,2人は真っ暗な暗闇へと溶けていった。
行き場を失った右腕が空を切るのと同時に,身体が温かい何かに包まれる。
ふんわりと漂うホワイトムスクの香りに不思議と安心感を覚えた。
白『…いむくん』
水『…』
いむくん…
それってもしかして僕のこと?
『そうだよ。』
水『…!』
いつの間にか足元に小さな男の子が座り込んでいた。
右手にはさっき見た花びらとそっくりな1輪の花が握られている。
癖っぽい水色の髪の毛に,まんまるな目と特徴的なほくろ。
水『…え…ぼく……?』
『…うん,せーかい』
『僕はほとけ。有栖ほとけ。』
『君もほとけでしょ?』
水『…』
刹那,稲妻が走ったような大きな衝撃を感じるのと同士に,ふわりと身体が宙を舞った。
そうだよ。そうだ。
なんで忘れちゃってたの?
大事なことじゃん。
水「…ほとけ……僕の名前は…」
ほとけ。
水「…」
ゆっくり目を開けると,天井をバックに見慣れた3人の顔があった。
白『……いむくん,?…いむくん!?』
『わかるか!?僕や!!!初兎や!!!』
水「………初兎…ちゃん…(ポロッ」
白『…っ、!』
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった初兎ちゃんが子供みたいに泣きじゃくりながら抱きついてくる。
何でか分からないけれど身体が麻痺してうまく動かない。
頭もぼんやりする。
白『…”ッ…(泣』
水「…笑」
「しょうちゃ…苦しいよ…笑」
白『…やって…やってえ……(泣』
水「…ふふ,」
…ほんとに子供みたい。
水「……初兎ちゃん…」
白『…ん、…ん…?』
水「…僕全部思い出した」
「いっぱい冷たくしてごめんね」
白『…』
きゅうっと瞳孔が開いて,静かに息を呑む目の前の実兄。
零れた涙が僕の頬にぽたぽたと落ちた。
隣にいるアニキとりうちゃんも言葉を失っている。
…
……ん?
水「……え,りうちゃん?」
赫『…』
水「……?アニキもいる…し…うん?」
「どーゆー状況、?」
黒『…俺も分からへん』
『…ほとけ,お前ほんまに記憶戻ったんか?』
水「………ぇ?えっ…と…うん」
神妙な面持ちでそう尋ねるアニキにたどたどしく言葉を返す。
獅子王悠佑。りうちゃんのお兄ちゃん。
組のお母さん的存在かつ頼れる大黒柱だ。
黑『…はーーーー…ったく…』
『心配させんな馬鹿ほとけ』
水「いて “…っ」
「……ごめんって」
黑『ふん…』
『…よかったなりうら。首の皮一枚繋がって。』
赫『……りうらはもともと死ぬつもりだったし』
『殺してくれてよかったんだよ?』
肩を縮めた親友が遠慮がちにアニキを見る。
久しぶりの再会に喜びたいところではあるけれど,状況が状況だから反応に困った。
…てか会話物騒すぎない?
黑『なにゆうてんねん阿呆。』
『お前やって立派な被害者や。』
赫『…そんなこと,』
水「…。」
「……えーっと…取り込み中ごめん?」
「色々追いついてないから説明してほしいんだけど…」
黑『…ああ,すまんすまん』
『初兎かりうら。どっちでもええから喋りたい方が喋り。』
白『…』
嗚咽混じりに泣き続ける初兎ちゃんの耳に恐らくアニキの言葉は届いていない。
それを見て取ったのか,正座の状態のままりうちゃんがずりずりと僕の方へ寄ってきた。
赫『…目ぇ覚めてほんとに良かった』
『体調大丈夫?』
水「……んー…ちょっとだるいし痺れもあるけど…全然平気。」
赫『そっか,』
『…』
黑『…』
俯きがちになったりうちゃんをアニキが隣から小突く。
赫『…分かってるよ。』
『…あのね?いむ』
水「うん?」
赫『…いむが飲んでたあの薬…違法薬物なんだ』
水「………」
赫『ルノミートっていう記憶を混濁させる薬』『…日本ではあんまり出回ってなくて,ないくんが外国から取り寄せたの。』
…ないくん。
そういえばりうちゃんは昔,ボスのことをないくんって呼んでたんだっけ。
僕も確かあの頃は───
赫『いむはさ…あの日のことどのぐらい覚えてるの?』
僕の思考を遮るようにりうちゃんが口を開く。
強調された”あの日”の三文字に,その場にいた全員の体が固くなったような気がした。
水「…」
「あの日って…あの日?」
赫『…うん』
初兎ちゃんがようやく上体を起こして僕の方を見る。
アニキも心做しか緊張した面持ちだ。
水「……部分的かな…でも覚えてるよ。」
6年前。僕が11歳の時。
水「…僕……誘拐されたんだよね?」
白『…』
───🐇side───
【__年前】
総司『お前にほとけの用心棒を任せたい。』
白『……え?』
1年お世話になった施設を出た約2ヶ月後。
仕事を終えたばかりの総司さんに突然呼び出された。
総司『…この前の…覚えてるだろ。』
白『……え?…えと…はい』
『射撃訓練のことですよね?』
神妙な顔をした総司さんが静かに頷く。
総司『俺の判断で,4つのほとけには銃を持たせないようにとキツく指示を出していた。』
『…にも関わらず,注意を怠っていたタイミングで銃を一丁ほとけが持ち出した。』
白『…ごめんなさい』
総司『……いや,初兎が謝ることじゃない。』
『むしろ俺は感謝しているよ。』
『ほとけの才能に気が付くことができたからな。』
白『…、っ』
白『いむくん…!!いむくんどこや!?』
碧『初兎落ち着け!!』
『まだ音は鳴ってへん!!』
白『でも…でも…っ!(泣』
ぱん!!!!!!!
白/碧『!?』
ぱんっ…!!ぱんっ…!!
碧『…まじかよ』
白『…っ(泣』
『いむくん!!!!返事してや!!(泣』
赫『見つけた!!!!!!!みんなきて!!』
白『…!!』
『まろちゃ…!』
碧『…ッ』
ばたばたばた…っ!(走
赫『いむっ…!!それには触っちゃ駄目って言われたじゃん…!!!!』
水「…んえ?いいじゃん別に笑」
「これ楽しいし」
赫『…っは、ッ?』
碧『おいあほとけ!!!!(取り上げる』
水「ッわ…っ!?」
「ちょっとなにすんのさ!!」
碧『なにするもクソもあるか!!!!』
『あれだけ言うたやろ!!』
水「…む」
「だってみんな僕放ったらかしで暇だったんだもん…!」
「僕だってれんしゅーしたいの!!」
碧『はあ…?練習?』
水「うん!だからあれうってた!!」
白『…あれって…あれ?』
水「そ!!僕じょーず?」
碧『…っ』
桃『…』
総司『…ほとけが撃っていた的は中級者用だ。』
『ある程度訓練を積まなければ掠らせることすら難しい。』
『それをどうだ?ほとけは何発当てていた?』
白『…3発です』
総司『ああそうだ』
『…もう分かるだろ。あいつには殺しの才能がある。』
白『…、!』
『待ってください!!まだ4歳ですよ!?』
総司『分かってるよ。』
『…初兎だって9つなんだ。今直ぐにとは言わない。』
『……だが,優秀な若い芽は今のうちに育てておくべきだろう?』
白『…っ』
総司『酷なことを言うかもしれないが,恐らくほとけはお前よりも銃の扱いに長けている。』
『だから守ってやって欲しいんだ。兄として。用心棒として。』
白『……。』
…総司さんには引き取ってもらった恩がある。
逆らう訳にはいかない。
白『…~……でも……』
『………っ…分かりました』
『…僕が命にかえても…いむくんを守ります』
総司『……ありがとな』
こうして僕は,用心棒として正式な訓練を受けるようになった。
白(あ”ーー疲れた…)←射撃訓練後+手洗い中
黑『…よっ(肩組み』
白『ッおわ…!?』
『………なんや悠くんか…』
黑『ふっ…wなんやって失礼やな笑』
『…ど?ええ加減慣れた?』
白『……うーん…まあまあ』
『まだ重たいし怖いけど』
黑『あー…』
『……ほな俺が稽古つけたろか?』
白『…んえ?』
『悠くんが?』
黑『おん。教えれる範囲で教えたるよ。』
『大人には聞けへんこともあるやろ』
白『……えー…まああるっちゃあるけど…』
『って,うわッ…!?』
黑『追加稽古いくぞー初兎』
白『…はああ!?待って待って今終わったばっかやねんけど!?!?』
黑『うっさいうっさい』
『こうゆうんは早い方がえいねん。』
白『やからって…!』
『……ッあーーーもう分かった!!!行く!!!やるって!!』
『引っ張らんといて!!!』
…みんながアニキって呼んでまうのも納得。
獅子王悠佑ってゆうかっこええ名前の兄ちゃん。歳は僕より5つ上。
怒らせるとめちゃくちゃ怖い。
黑『…そ。そこで軸定めて。』
白『じく…?』
黑『…………なんて言うたらええかな…』
碧『…ぴたって固定すんの。』
『もっと脇締めて。』
白『…!?』
突然まろちゃんこと猫宮威風の両手が僕の腕に伸びてきた。
黑『……お前ってほんまに気配ないよな。』
碧『…そりゃどーも』
『てかまだやってたん?』
白『…えっと…悠くんが教えたるから来いって…』
碧『はえー…奇遇やな。』
『まろも今からほとけに付くとこ。』
白『…え』
水「ちょっとーーいふくんまだぁー?…って」
「あーーーー!!初兎ちゃん!!!!」
白『いむく…うお…っ』
ばふんっと音が鳴る勢いで僕の脇腹に飛びつくいむくん。
ふにふにのほっぺを擦り付けて甘える仕草に自然と頬が緩む。
水「初兎ちゃん初兎ちゃん!ぼく今日もいっぱいがんばったよ!!」
白『おーーそっかぁ頑張ったかー…笑』
碧『阿呆。頑張るんは今からや』
『はよこっち来い』
水「うわあ!?」
「まっていふくん…!ねーええーー!!」
黑『…引きずられてったな…笑』
白『…』
黑『……さ,ほとけも行ったことやし初兎も始めよか』
白『……はい、』
訓練は決して楽なものではなかった。
せやけど,悠くんやまろちゃん,みんなとたくさん笑い合って高め合える毎日は思っていたより悪くはなくて。
そんな日々の中でいむくんは幾度目かの誕生日を迎えた。
水「初兎ちゃーーん!僕のけーきは?」
白『冷蔵庫にあるでー』
『お皿とフォーク持ってくるさかいもうちょい待ってな』
水「はあーい!」
白『…笑』(撫
今日はいむくんと仲良しの人達全員がオフをとっていむくんをお祝いする準備をしている。
まろちゃんはお部屋の飾り付け。悠くんはお料理。りうちゃんとないちゃんは…
白『…?』
『悠くん,りうちゃんとないちゃんどこ?』
黑『んー…?』
『…ああ,なんか総司さんに呼び出されたって』
白『……そっか』
『じゃあ僕はもうケーキ出しよるな』
黑『うぃ。ありがと。』
白『いむくーんジュースあるけどコーラとりんごどっちがい___』
ぱぁんっっ!!!!!
白『……っ!?』
黑『…!!!!』
物凄く大きい。鼓膜が破れるぐらいの破裂音。
悠くんが僕を庇うようにして覆いかぶさった。
そして気付く。
白『…っいむくん!!!!!!』
『悠く…いむくんがあぶない!!!!』
悠『待て初兎!、』
『向こうにはまろが…!』
『…っ』
白『…ぅ…?』
嗅いだことのない甘い香り。
鼻がつんとして頭がくらくらする。
白『な…に…?これ…』
黑『…スモーク…』
『訓練用の偽モンの煙……』
『誰かが煙幕使ったんや…!!』
その一言でぼくは居てもたってもいられなくなって,悠くんの腕からすり抜けた。
いむくんが座っていたダイニングに全力で駆け出す。
真っ白で何も見えない煙の中,見慣れた水色の髪の毛が覗いた。
白『…!いむくん!!、!!!』
鼻のあたりを被って地面に丸まっている最愛の弟。
…必死に伸ばした短い腕は,虚しく空を切った。
誰かがいむくんを抱き上げるのと同時に,ベランダに続く窓が勢いよく開く。
次第に晴れていく視界の先には”2つ”の人影があった。
桃『ざんねーん…笑』
『惜しかったね。』
白『……ぇ、?』
そこに居たのは,見たことのないような薄ら笑いを浮かべたないちゃんだった。
その腕の中にはぐったりと身体を預けるいむくんの姿がある。
僕が呆気にとられた隙にいむくんを含めた3人は煙に巻かれたように姿を消した。
奥に居たと思われるまろちゃんと遅れて飛び出してきた悠くんが追うようにしてベランダから飛び降りた。
僕も慌てて階段へ向かう。
外へ出ると,拠点の裏にある廃工場の方から怒鳴り声が聞こえた。
その声を頼りに必死に走って,走って,走って…
そして見つけた。
いむくんの頭に銃口を向けるないちゃんを。
桃『……もうこうするしかないんだよ』
『許してね,まろ,あにき。』
へらっと笑うないちゃんの目に,光は見えない。
そして驚くべきことに,その後ろには深く深く俯くりうちゃんが立っていた。
赫『…。』
ぶわっと風が吹いて,靡いた髪の隙間から現れたりうちゃんの目。
その目が捉えていたのは,怒鳴り散らかすまろちゃんでも悠くんでもない。
為す術もなく遠方に立ち尽くしている,無力で小さな僕だった。
────ᴛᴏ ʙᴇ ᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ────
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