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折西はここ1週間、俊のアカウントを
追っていた。
何かしらの情報が得られると思ったからだ。
「うーん…」
しかし俊は今日はここに行った!とか
楽しい内容のものしか投稿していなかった。
「実際会っても楽しく生きてる感じしか
しないんですよね…」
紅釈や東尾はそこそこ早い段階で
トラウマや闇を見ることが出来た。
しかし俊に関してはそれらを見ないどころか
キラキラSNSライフとキラキラ現実ライフを
謳歌しているまである。
「ほんとだねぇ…そういえば
鍵穴は見えたの?」
お姉さんはベッドの上に座り足をパタパタと
させながら聞いた。
「一応1人で歩いているのを見た時に1度だけ…」
折西がそう言うとお姉さんはそれだ!
と手をぱんっ、と叩いた。
「それなら1人で行動している時に
何かわかるんじゃない??」
「ですね!少し俊さんの後をこっそり
追ってみましょう!」
折西は早速お姉さんを連れて部屋を出た。
そして俊が外に出ようとするタイミングを
見計らってこっそりと後を追うのだった…
・・・
「これって光街ですよね?僕たちが入って
大丈夫でしょうか…?」
影街に1日以上いると髪の毛の色素が
肌の色に影響する。
要するに折西や俊の肌の色を見ると
影街に行ったんだろうなということが
分かってしまうのだ。
肌の色が変わるのがまずいのではなく
影街から光街に行く事はご法度であり、
光街の人々は俊や折西を睨んでいた。
折西は目線にビクビクと怯えながら
必死になって俊のあとを追った。
・・・
そんな心配する折西の気持ちなど露知らず、
俊は光街を通り森の中へと入り込んだ。
「…ごめん融くん。先に行って
くれないかな?」
森の中に入り暫くするとお姉さんが
急に息切れをし始めた。
「…お姉さん大丈夫ですか?」
お姉さんの顔はみるみるうちに青ざめていく。
折西は休みましょう、と木の近くに誘導し
座らせようとした。
しかしお姉さんはどんどん薄くなるばかりで
動けなくなっていた。
「ごめんね大事な時に…大丈夫。
またここから出たら私戻れるから…」
お姉さんはそう言い残し、消えてしまった。
「これは一体…」
折西は初めての出来事に困惑しながらも
お姉さんの言葉を信じ、遠ざかる俊を
追いかけることにした。
・・・
森の奥まで入り込むと集落が見えてきた。
そして俊は老人に袋に入っていた食料と
お金を渡そうとしていた。
「イムールタ、もう我々アモ族に
縛られなくても良いのだぞ。」
「縛られてないよ!ほらほらいいから!
お金はテキトーにお医者さんにでも渡してよ!」
俊は押し付けるようにして老人に渡す。
「相変わらずイムールタは優しい子だねぇ」
と老人は苦笑いしていた。
「優しくないよ〜だ!未来を変えるために
勝手に押し付けてるだけ!」
じゃあね!と言うと俊は物凄いスピードで
帰っていった。
「なんだか俊さんって気遣いちゃんと
できる方なんですね…」
と折西が感心していると老人がじっと
こちらの方を見てくる。
「そこにいるのは、誰かね?」
「オアッ!?!?!?」
「これこれ、そう驚くな。煮て食う
わけじゃない。」
こっちに来なさい、と老人に言われ、
折西はモジモジとしながら木の影から
出てきた。
「君は何しに来たのかね?人材が欲しい…
という訳でも無さそうだが。」
「す、すみません…!僕の上司が
いつもどこに行ってるのか気になって…」
「おお!垓組長の所の!」
老人は続けて話す。
「組長さんには大変お世話になっててな。
君は影國会の新人さんかね?」
「そ、そうなんです!俊さんには
色々お世話になってまして…!」
「しゅん…あっ、イムールタの今の名か!
老人は中々覚えが悪くて困る…」
「す、すみません!!し、イムールタさんが
本名なんですね…!」
「ふぉっふぉっ!気にするな、気にするな!」
老人は朗らかに笑う。
「その調子じゃと、イムールタの事を
あまり知らないようじゃな。」
そう言うと老人はイムールタについて
話してくれた。
「想像がつかないかもしれないが、昔の
イムールタは今とは真逆の病弱な子でな。
酷い時は1年近く寝床から離れられない事も
あった。」
「そんなこともあって我々アモ族に
投資していたよそ者はイムールタを
使えないとよく言っていたものだよ。」
「我々アモ族は戦闘民族。本来元々の
身体能力が高く人材を欲する外部の者は
アモ族に食料やらを送ってくださるのじゃ。」
「けれど身体になにかしらの病気や障害の
ある者、力のない女性、ワシみたいな老人に
食料や物資を渡したくないのだろうな、
よそ者はワシらを迫害していたんじゃ。」
そう言うと老人は衣類の袖を捲り上げる。
老人の腕には痛々しい内出血の跡や
焼印の跡があった。
「…酷い、どうして…」
折西は両手拳をギュッと握りしめる。
「ワシはまだ長老だからいい方じゃ。
女性や病弱な者はもっと酷い。」
「…気持ちは分かる。自分の渡した物資で
強い人間を育成したいのじゃろう。
しかし実際問題、物資は弱い者に渡る。
…迫害されても仕方がないんじゃよ。」
「…迫害されて仕方がないことなんて
ありません!長老さんの気配を察知する
能力も、イムールタさんの物覚えの良さも!
すごく重宝される能力だと思うんです…」
折西の大きな声に長老は目を大きく見開く。
「…驚いた。イムールタのアモ族としての
能力を当てるとは…」
「え…えへへ…人間観察だけは
得意でしたから…」
「君の観察能力も素晴らしいものだ、きっと
多くの人を救える…イムールタの能力を
当てたのは君と組長さんだけじゃな。」
「組長さんも能力に気がついたんですか?」
「ああ。丁度イムールタが体調の悪い日に
組長さんが来てな。病弱なイムールタを
雇うと仰ったのだ。当時は大変驚いたよ。」
長老は近くにあった容器の水を啜る。
「それに、神様のおかげで病弱体質も治って
本当に安心したのぅ。」
「神様?」
「ここには昔、大蛇の神様がおったんじゃよ。
イムールタはその神様に気に入られ、
元気な体を手に入れたんじゃ!」
神様…イズ様のことだろう。
…そういえばイズ様はファージだと
俊は言っていたが一体何を代償にして
何を能力にしているのだろう?
代償は全く予想がつかない。
能力は足の速さ?健康体?
よりいっそう謎が深まるばかりだった。
「あの、イムールタさんは神様に何か
捧げていたりしてませんでしたか?」
「たしか…左目だったかのぉ?」
老人の言葉にハッとした。
俊は左目に眼帯をつけており、
イズの左目には黄色い目…
折西は俊の謎にまた1歩近づくのだった…