昔々、とある悲しき人が神様に祈りました。
「二度と、自分が不幸になりませんように。」
昔々、とある旅人が神様に祈りました。
「いつか、平穏に暮らせます様に。」
昔々、とある訳あり人が神様に祈りました。
「どうか、愛する人と共に生きれます様に。」
昔々、とある恨みを持つ人が神様に祈りました。
「未来で、あの人が苦しみます様に。」
神様は、その願いを全て叶えました。
それが人々に届いたのかは、その神様には分かりません。
きっと祈った本人も分からない事だってあります。
それでもいい、何もしないよりは…それが彼女の考えでした。
いつしか、とある怖がりの人が願いました。
「二度と、自分が不幸になりませんように。」
いつしか、すべてを忘れた人が願いました。
「いつか、平穏に暮らせます様に。」
いつしか、一人の罪人が願いました。
「どうか、愛する人と共に生きれます様に。」
いつしか、自身を壊した人が願いました。
「未来で、あの人が苦しみます様に。」
神様が、その祈りを叶える事はありませんでした。
「…やる事無いな…。」
寝転がりながらただ虚ろに天井を眺めていた。いつも見る、何の変哲も無い、どこにでもある天井。
そんな天井を見続けて、かれこれ4時間くらいだろうか。いい加減飽きてしまったので、重い体を起こす。
「…仕事…サボるかぁ…。」
周りに誰の気配もしない事を確認し、そっと扉を開いて外へ出る。今日の外は風が強く、普段よりも空気を冷たく感じさせる。
日差しは相変わらず木々に遮られていて、その隙間から時々姿を表すくらいだった。元から日光が苦手だった私にとっては、丁度いいくらいの環境でもある。
そんな場所にある神社…名前を世或神社というのだが、勿論人は滅多に来ない。というか、来たとしても私に用事があるだけの知り合いという事が大半だ。
その要因として、位置というのも勿論ある。けれど、ある御伽話もそれを加速させているのだと、知り合いに聞いた。
その御伽話というのは、人が祈り、それを神様が叶える…それだけの内容のものだ。ごく普通な、平和な物語だ。
そんな何の変哲も無い御伽話。これ自体には恐らく、ここまでの影響をもたらす力は無い。
問題なのは、この御伽話には裏があるのでは、という事だ。
噂の発生源は私には分からない。
けれど、その内容は確実に「真実」に触れるものであった。
―どうか、強く生きて。
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