テラーノベル
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どうして私に、生きる力を与えてくれなかったの?
甘やかすだけ甘やかして、生き方を教えてくれなかったの?
二十歳を過ぎていて、何を甘えたことを言っているんだとは思っている。
だけど私、独りぼっちになって初めて知った。
ひとりは、こんなに寂しいんだって。
お母さんが、今までどれほど私を勇気づけていてくれたか、支えてくれていたか。
急にひとりになって、寂しくて、怖かった。
もし社長が本当にお父さんだというなら、私はひとりじゃない。
お父さんだったら、呼んでくれるかもしれない。お母さんが呼んだみたいに。
「静乃って」
「え?」
深山さんの腕の中で、うっかり余計なことを言ってしまった。でもなんだか吐き出したくてたまらなくなった。
「静乃って、もう一度誰かに呼ばれたかった……」
お母さんは、もう私の名を呼ばない。
写真を見て思い出を辿っても、それは記憶の中だけで、声に出して呼ばれることはもうない。
もう一度誰かに、愛情を持った声で名前を呼ばれたかった。
「……本当に回りくどい女」
呆れたような声を出す癖に、私の頭をなでる深山さんの手はあたたかく優しい。
今だけ。甘えてもいいかな。
私は少しだけ図に乗って、彼のスーツの襟をぎゅっと握る。
「……スーツ濡らすなよ」
そんなことを言いつつ、さっきよりも強く胸に頭を押しつける手は優しい。
母に寄りかかって生きてきた私は、やっぱりどこまで言っても甘えたがりらしい。
ちょっとだけよ。涙が止まるまで。
だってほかに甘えられる人が、今の私にはいないんだもの。
鷹槻れん

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鷹槻れん

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月詠 涼
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コメント
1件
ここまで静乃の内面に寄り添ってくれる話、ずっと読んでて胸がぎゅっとなりました。「もう一度誰かに呼ばれたかった」っていう願い、すごくわかる。深山さんの「呆れた」口調なのに手は優しいギャップ、たまらないです。今だけは甘えていいよ…って思わず応援したくなる1話でした。