忘れることが出来るなら、どんなに楽なことか
イギ×海
ナチ×陸
このcpが出てくるわけではありませんが、こういうcpが「あった」と言うことが話のなかで必要となるだけです。
自分の腹に向けられた少し前まで陸にいが毎朝研いでいた刀。その刀は、僕の顔を反射し無意識に顔を歪ませる。
少し刺してみようかと、自傷行為への好奇心を実践してみる。
服越しに感じる鋭利な刀の感覚。少し力を入れれば、服を貫通し本当に僕の腹を突き刺してしまいそうだ。
刀を自分の右側に一度置き、軍服のボタンを下から1つずつ開けて行く。
にいにたちとは違い、傷の少ない肌が現れてくることに嫌気がさす。
右側に置いた刀の刃の方を握る。
痛みに顔を歪め、手の平から肘にかけて伝って行く血液を視線だけで追い、何度も見た染み込み方をする畳をただ無心で見る。
数秒後、更に力を込めればどちらかといったら黒に近い赤色が見えてくる。
刃先を自分の臍に向け、その窪みに入り込むようにゆっくり刃を進める。
腹部分から侵食されるように鈍い痛みと熱が体全体に回る。
腹部を刺したことによる吐き気で前のめりになり、刀が奥深くを刺す感覚がする。
そこから、刀を少し抜いたり刺したり上下させたりをしていると段々と視界が霞んでくるのが身に沁みてわかる。
流石にもうやめておこうと、近くにあった研ぐ用の布で刀についた血を拭く。
畳に染みてしまった血、どうしようかな。
布で拭いても染み込む範囲が広がるだけ。
後で考えようと立とうとしたとき。誰かが障子の戸を叩く音がした。
若干強めの音。陸にいかな?
ほとんど音を立てずに開かれた戸には予想通り陸にいが立っていた。
「先輩?何してるんですか?」
そっと近づいて来た陸にいは僕に触れる寸前で体を硬直させた。
「血、?、、、先輩のですか?誰に?」
確かに早めに血の処理もしないとなぁ。
「陸にい、気にしないで。」
包帯まだあったかな。
「でも、先輩が、、!」
「いいんだよ。陸にいは自分を落ち着かせて。」
僕を認識できないほど弱っている陸にいに手当てされるほど、もう僕は弱くない。
床に手をつき、血が垂れないようそっと立ちあがろうとしたが、どうやら無意味みたい。
混乱している陸にいを海にいのいる寝床へと促す。
「あとで行くね。」
陸にいは何か言いかけたが、すぐに口を閉じ大人しく戻って行った。
救急箱から使いかけの包帯を取り出し腹に巻きつける。
血が少し染みているが服のボタンを閉めればきっと大丈夫だろうと、部屋に戻る。
障子を開けると海にいは寝ているが、少し目の周りに涙の跡が見える。
目の縁をそっとなぞり、陸にいの方を見る。
陸にいは壁にねんかかりながら囚人座りをしており、何か言っているのが分かる。
「陸にい、今日は寝れそう?」
なにか喋っていたのをやめ、少しこちらを向く。そして、力なくこちらに寄って来て僕の体を軽く押して来た。
大人しく倒れれば、陸にいは僕の体に布団をかけ
「先輩痛くないですか?寝れそうですか?」
瞳を覗けば、濁った紅と緑の瞳に心配の色が見えた。
僕を心配してくれてるのかな?今日は調子がいいみたいでよかった。
先輩と呼ばれ多少の寂しさを感じたが、ちゃんと会話できている為調子がいいんだと安堵する。
そのまま少し目を瞑れば世界が暗転したかのように気絶し寝入った。
コメント
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重い、、、話、、、自傷行為が生々しくてゾクっ、、、てなりました。どうしようもない生活だなぁ、、、。