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「かっけェェエエ!!!なんだこれ!!」
「バイク」
「バイクっつーのか!
フランキーが見たら喜びそうだ!」
船大工さん、だっけ確か。
にしてもバイクでここまでテンションが上がるとは。
完全なる趣味で買った中型のバイク。
おかげさまで車は買えず、ペーパードライバーだ。
良かった、二人乗りできるバイクで。
「絶対掴まっててね、落ちたら死ぬよ」
「わかったー!」
東京湾、はさすがに無いかと思い、遠出にはなるけれど千葉の方へ行くことにした。
免許を取って3年は経ってるから、二人乗りしても大丈夫。後ろの人不安だけど。
「ヒャッホーーーウ!!!」
「ねぇほんとじっとしてて!?」
本当に振り落としそうになる。
頼むからじっとしててくれ、と何度叫んだことか。
「次やったらもう絶対乗せないからね」
「えぇぇ!!おれじっとしてたぞ!」
「どこが!! 足バタつかせるは片手離すは・・・、こっちの身にもなりなさい!」
会ってまだ一日も経っていないのに、こんな言い合いをする程に仲良くなっていることにびっくりする。
「・・・で、着いたけど。サニー号とやらはありそう?」
「ない!!」
「ですよね、海賊船が停まれるほど日本の海軍馬鹿じゃないよね」
彼の知っている海軍とは、少し違うけれど。
どう考えたって無理がある。
彼の話によればライオンの船首に海賊旗を掲げた船らしいから。
・・・ライオンて。
某夢の国の船だと勘違いされるのがオチだろう。
「なんかすげーな、ニホン!」
「どうして?」
「あーんなでけェ煙突見たことねェ!
来る時に見たクルマとかいうやつも初めて見たぞ」
ここまでの彼の言葉を全て信じるとするならば。
「トリップ、とかいうやつですか」
「なんだそれ」
「よくわかんない」
昨夜ネットで色々調べているときに何度か目にした、その単語。
いわゆる、“別世界” からこっちの世界にトリップ───時空を超えてしまった、とかそういう類のものらしい。
隣で命の恩人から預かっているという麦わら帽子が風に飛ばされないよう、しっかり押さえている彼を一瞥して。
「元の世界に戻れるまで、うちで暮らす?」
そう、告げたのだった。
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