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『十年前、私を殺した七人へ。次は、あなたたちの番です。』
翌日から、七人の周囲で不可解な出来事が起こり始める。
誰も開けていないロッカーから血のついた制服が見つかる。
存在しないはずの生徒が防犯カメラに映る。
深夜になると、誰もいない校内放送から自分の声が聞こえてくる。
そして、七人のうち一人が姿を消した。
残された六人は互いを疑いながら、十年前の事件を調べ始める。
ところが、調べれば調べるほど矛盾が増えていく。
七瀬零の顔を覚えている者はいない。
卒業アルバムには、確かに七瀬零が写っている。
なのに、その写真を見るたびに、写っている人物の顔が違って見える。
そして七人は、ある事実に気づく。
自分たちは、初めて会ったわけではなかった。
彼らは十年前の事件と、決して無関係ではなかったのだ。
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登場人物。
黒瀬 朔
(くろせ さく)
17歳・男子
性格:冷静、観察力が高い、疑い深い。
事件が起きても感情的にならず、状況を整理する役割。
秘密:???
白雪 澪
(しらゆき みお)
17歳・女子
性格:無口、礼儀正しい、何を考えているか分からない。
七人の中で唯一、七瀬零の名前を聞いても驚かなかった人物。
秘密: ???
朝比奈 悠真
(あさひな ゆうま)
17歳・男子
性格:明るい、社交的、誰にでも優しい。
恐怖に怯える仲間を励まし、グループをまとめるムードメーカー。
秘密: ???
神崎 莉子
(かんざき りこ)
16歳・女子
性格:気が強い、現実主義、口が悪い。
心霊現象を信じず、すべてに合理的な説明をつけようとする。
秘密:???
霧島 律
(きりしま りつ)
17歳・男子
性格:臆病、繊細、記憶力がいい。
出来事をすべてノートに記録している。誰が何時に何を言ったか、細かいことまで覚えている。
秘密:???
水瀬 ひより
(みなせ ひより)
16歳・女子
性格:優しい、泣き虫、争いが苦手。
仲間同士が疑い合う中で、全員を信じようとする。
秘密:???
雨宮 透
(あまみや とおる)
17歳・男子
性格:無愛想、皮肉屋、単独行動が多い。
肝試しを提案した人物。最初から七瀬零の存在を知っていたような態度を取る。
秘密: ???
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午前零時、旧校舎。
そこには、十年前に死んだ生徒の幽霊が出る。
そんな噂を、俺は信じていなかった。
幽霊なんているはずがない。
死んだ人間が、この世に未練を残して現れるなんて、ただの作り話だ。
…そう思っていた。
少なくとも、この夜までは。
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十月十二日、午後十一時四十分。
俺たち七人は、町外れにある旧校舎の前に集まっていた。
十年前、火災によって使われなくなった中学校の旧校舎。
窓ガラスは割れ、外壁には黒い染みが残っている。入り口には立ち入り禁止の看板が立っていたが、錆びたフェンスは人が通れる程度に曲がっていた。
ここに来た理由は、単純だった。
十年前の火災で亡くなった生徒の幽霊が、夜中の旧校舎に現れる。
そして、その幽霊が現れる場所は、七番教室。
そんな噂を聞いた俺たちは、肝試しのつもりでここに来たのだ。
……本当に、それだけだったはずなのに。
澪)ねえ、本当に入るの? 思ってたより雰囲気あるんだけど……。
悠真)今さら何言ってんだよ。ここまで来たんだから入ろうぜ。
莉子)私は全然平気だけど? こういうの、むしろ好きだし。
律)じゃあ、莉子が先頭でいいんじゃないか。
莉子)えっ、いや、それは……ほら、みんなで行ったほうが安全じゃん?
悠真)お前、絶対怖いだろ。
莉子)怖くないってば!
ひより)ふふっ……。でも、あんまり大きな声を出さないほうがいいかも。誰かに聞こえたら、怒られちゃうよ。
悠真)誰にだよ。十年前に死んだ幽霊?
ひより)……そういうこと言うの、やめなよ。
ひよりの声が、ほんの少しだけ小さくなった。
俺は懐中電灯を持ち直し、残りの二人に目を向けた。
朔)透、どうした?
透は旧校舎を見上げたまま、黙っていた。
さっきから、ほとんど喋っていない。
いつもなら、こういう肝試しを一番面白がりそうなやつなのに。
透)……なあ。
朔)ん?
透)俺たち、帰れなくなるかもしれない。
悠真)……は?
透)ここに入ったら、帰れなくなる。
莉子)ちょっと、何それ。怖がらせようとしてるの?
透)違う。
透は、ゆっくりと俺たちを振り返った。
その顔は、冗談を言っているようには見えなかった。
透)俺たちは、七番教室に行かなきゃいけない。
朔)……なんで、七番教室のことを知ってるんだ?
透)……。
朔)透?
透は答えなかった。
ただ、旧校舎の入り口を見つめていた。
まるで、そこに誰かが立っているかのように。
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旧校舎の中は、外よりもずっと冷えていた。
床には割れたガラスや木片が散らばり、壁には古い掲示物が残っている。
懐中電灯の光が、薄暗い廊下をゆっくりと照らしていく。
一歩進むたび、床がぎしりと軋んだ。
澪)……なんか、 変な匂いしない?
律)焦げた匂いか?
澪)うん……。十年前の火事のせいかな。
律)十年も前だぞ。さすがに、まだ匂いが残ってるとは思えないけど。
ひより)……。
朔)ひより?
ひより)えっ? あ、ごめん。何?
朔)いや、何か知ってるのかと思って。
ひより)……何も知らないよ。
ひよりは笑った。
けれど、その笑顔はどこか不自然だった。
俺たちは廊下の奥へ進んでいく。
壁に取り付けられた教室番号のプレートは、ほとんどが錆びて読めなくなっていた。
それでも、一番奥の扉だけは違った。
扉の上には、はっきりと数字が残っている。
七。
七番教室。
朔)……ここか。
悠真)マジであったな。七番教室。
莉子)普通に教室じゃん。幽霊なんているわけないって。
澪)……でも、ここだけ妙にきれいじゃない?
澪の言うとおりだった。
廊下の壁は剥がれ、床には埃が積もっている。
なのに、七番教室の扉だけは、ほかの場所よりもずっときれいだった。
取っ手にも、埃がほとんど付いていない。
まるで、誰かがつい最近まで使っていたかのように。
律)……誰か、ここに入ってるんじゃないか?
朔)かもしれないな。
俺は取っ手に手を伸ばした。
その瞬間。
透)触るな!
透の叫び声が、廊下に響いた。
俺は思わず手を止めた。
朔)……何だよ、急に。
透)開けるな。
朔)だから、何でだよ。
透)……頼むから。
透の手が震えていた。
悠真)おい、透。さっきからどうしたんだよ。
透)……中に、あるんだ。
澪)何が……?
透は答えなかった。
俺は、もう一度七番教室の扉を見た。
そして、ゆっくりと取っ手を回した。
扉は、抵抗もなく開いた。
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教室の中には、机も椅子もなかった。
ただ、黒板と、窓際に置かれた古い机が一つだけ残っていた。
その机の上に、白い封筒が置かれていた。
周囲には埃が積もっているのに、封筒だけは真っ白だった。
朔)……何だ、これ。
俺は封筒を手に取った。
表面には、黒いペンで名前が書かれていた。
黒瀬朔。
白雪澪。
朝比奈悠真。
神崎莉子。
霧島律。
水瀬ひより。
雨宮透。
俺たち七人の名前だった。
澪)……え?
悠真)おい、ちょっと待てよ。何で俺たちの名前が書いてあるんだ?
莉子)誰かのいたずらでしょ? そうだよね?
律)……全員分、ある。
ひより)そんな……。
俺は封筒を裏返した。
そこには、たった一文だけが書かれていた。
『十年前、私を殺した七人へ』
朔)……十年前?
澪)私たち、まだ生まれてないか、小さかった頃だよね……?
悠真)いや、待て。そもそも、殺したって何だよ。
莉子)こんなの、誰かが私たちを脅かそうとしてるだけだって!
莉子はそう言ったものの、声が震えていた。
俺は封筒の端に指をかけた。
そのときだった。
透)開けるな!
透が俺の手首をつかんだ。
朔)……おい、いい加減にしろよ。
透)開けたら、始まる。
朔)何が始まるんだよ。
透)……全部だ。
透は俺の手首を離した。
そして、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
透)もう、止められない。
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そのとき。
廊下から、音がした。
ぺたり。 ぺたり。
濡れた足で、床を歩くような音。
全員が、一斉に扉のほうを向いた。
澪)……今の、何?
悠真)誰かいるのか?
ぺたり。 ぺたり。
音は、確実に近づいていた。
俺は懐中電灯を扉の外へ向けた。
けれど、廊下には誰もいない。
それなのに。
床には、濡れた足跡が一つずつ増えていった。
まるで、透明な誰かが歩いているかのように。
莉子)……やだ。
ひより)……っ。
律)全員、動くな。
足跡は七番教室の前で止まった。
そして。
コン、コン、コン。
扉が、三回叩かれた。
誰も動けなかった。
呼吸の音すら、やけに大きく聞こえた。
朔)……誰だ?
返事はなかった。
代わりに。
背後から、声がした。
???)……遅かったな。
聞き覚えのある声だった。
低く、落ち着いた声。
何度も自分の口から聞いたことのある声。
俺は、ゆっくりと振り返った。
そこには、誰もいなかった。
……いや。
正確には、俺たち以外には誰もいなかった。
澪)……今の、誰の声?
悠真)……朔、お前、喋ったのか?
朔)……俺は何も言ってない。
悠真)でも、今の声……。
莉子)嘘でしょ……。だって、今、後ろから……。
透)……来た。
透が、床を見つめていた。
俺たちも視線を落とした。
七番教室の入り口には、濡れた足跡が残っていた。
一つ、二つ、三つ。
全部で七人分。
足跡は廊下から教室の中へ向かって続いていた。
そして、教室の中から廊下へ向かう足跡が、もう一つ。
それだけが、逆向きだった。
まるで。
八人目が、教室の中から出ていったかのように。
朔)……八人目?
誰も答えなかった。
その瞬間、教室の窓が一斉に揺れた。
風は吹いていない。
なのに、黒板に積もっていた埃が、ふわりと舞い上がった。
そして、黒板の中央に。
何もなかったはずの場所に。
白い文字が浮かび上がった。
『ひとり、足りない』
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俺たちは、逃げるように旧校舎を出た。
誰も口を開かなかった。
誰も、振り返らなかった。
ただ、全員が同じことを考えていたはずだ。
あの足跡は何だったのか。
八人目は誰だったのか。
そして、あの声は。
……本当に、俺の声だったのか。
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その夜、俺は夢を見た。
暗闇の中に、誰かが立っていた。
顔は見えない。
けれど、その人物が俺を見ていることだけは分かった。
???)お前が、殺した。
朔)……誰を?
???)忘れたのか?
声が近づいてくる。
???)お前が、殺したんだ。
朔)……違う。
???)じゃあ、どうして名前を覚えている?
俺は答えられなかった。
暗闇の中で、誰かが笑った。
そして、その人物は俺の耳元で囁いた。
???)七瀬、零。
その名前を聞いた瞬間、目が覚めた。
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午前四時十七分。
俺はベッドの上で、荒い息を吐いていた。
全身が汗で濡れている。
夢だった。
ただの夢。
そう思い込もうとした。
けれど、机の上に置かれたノートを見て、俺は固まった。
ノートは開かれていた。
最後のページに、黒い文字が書かれていた。
『七瀬、零』
俺は、そんな文字を書いた覚えがなかった。
ペンを持った記憶すらない。
それなのに、文字は確かにそこにあった。
まるで、誰かが俺の手を使って書いたかのように。
俺はノートを閉じた。
そして、スマートフォンを手に取った。
画面には、見覚えのない通知が一件届いていた。
送り主は、知らないアカウント。
添付されていたのは、一枚の写真だった。
俺は写真を開いた。
そこには、七番教室が写っていた。
今のように荒れ果ててはいない。
机も椅子も並んでいて、黒板には日付が書かれている。
十年前の七番教室。
写真の隅には、七人の子どもたちが立っていた。
そのうちの一人が、こちらを見ていた。
黒い髪。
白い顔。
感情の読めない目。
俺は、その顔を知っている気がした。
けれど、どうしても思い出せない。
写真の下には、短い文章が添えられていた。
『十年前、私を殺した七人へ。次は、あなたたちの番です。』
そして、写真の撮影日時を確認した瞬間。
俺の指が止まった。
撮影日時は、十年前の日付だった。
……そんなはずがない。
この写真は、今夜の俺たちが訪れた七番教室を写している。
そうとしか思えないのに。
俺は、もう一度写真を拡大した。
教室の後ろ。
窓際の机のそば。
そこに、見覚えのある人物が立っていた。
俺だった。
今の俺と、まったく同じ顔をした少年が。
十年前の教室で、こちらを見つめていた。
朔)……何だよ、これ。
声が震えた。
写真の少年は、笑っていた。
まるで、俺がこうして怯えることを、最初から知っていたかのように。
そのとき、スマートフォンが震えた。
新しいメッセージが届いていた。
送り主は、さっきと同じアカウント。
文章は、たった一行だった。
『七番目を、完成させて。』
俺は画面を見つめたまま、動けなかった。
七番目とは、何なのか。
誰が、何を完成させようとしているのか。
そして。
十年前の写真に写っていた、あの少年は。
……本当に、俺だったのか。
まだ、何も分からない。
けれど、一つだけ確かなことがあった。
あの夜。
俺たち七人は、確かに旧校舎へ行った。
そして、あの場所には。
七人分ではない、八人分の足跡が残っていた。
第1話 八人分の足跡 終。
無名
27
桜城
#失恋
霞月 つむぎ 🌌🐈⬛🪽
6,118
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コメント
3件
わあ…まずタイトルからしてエモくてゾクゾクした!!第1話でいきなり「八人分の足跡」ってラストのどんでん返し、持ってかれたよね😭💦 透くんだけ最初から何か知ってそうなフリ、めっちゃ気になるし、写真の中に今の朔くんが写ってるの…時間の矛盾ヤバすぎでしょ!?もう続き読みたくて仕方ないよ〜!次話も楽しみにしてます🔥