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「おっしゃぁ!レフト前!」

一塁ベースをオーバーランしたとき、純さんの嬉しそうな声が耳に入る。

「続けよ!亮介!」

次のバッターは亮さん。監督からのサインは盗塁。あの頃と変わらないにこやかな笑みを浮かべる亮さん、期待してくれている監督。

ドクドクと心臓の音が聞こえてくる。

ピッチャーが振りかぶる。と同時にスタートを着る。

狙うは二塁。

視界の端に白球が見えた気がする。が、すでに俺は二塁ベースにスライディングしている。

「セーフ!」

二塁審の声がグランドに響き渡る。

「うぉぉぉ!速い!」

「さっきの守備といいなにもんだ?あいつは?!」

観客から歓声が沸き上がる。

思わず舌を出してピッチャーとキャッチャーを煽ってしまった。


この回は亮さんのセカンドゴロでワンアウト三塁になり、エンドランで見事に純さんが決めて一点を先制した。

その後も丹波さんの粘り強いピッチングで一点を守りきり、1対0で青道の勝利となった。


「やっぱり凄いよ洋一!」

整列し試合が終わり、帰る準備をしている俺に興奮した声とともに成宮が抱きついてきた。

「うぉっ!」

「なぁなぁ!やっぱり稲実に来いよ!お前がいれば絶対甲子園に行ける!」

「だぁ~かぁ~らぁ~!俺は高校で野球はしないの!今日は高島さんに連れてこられて流れでやっただけだって!」

ひっついて離れない成宮を何とか引っ剥がしてカルロスに押し付ける。

「‥‥何でやめんの?」

急に静かになった成宮は、じっと俺を見つめながら言った。

「‥‥‥何でお前に教えなきゃいけないんだよ。」

「気になるから。」

「‥‥‥資格がないから。」

「はぁ?」

意味がわからないと首を傾げる成宮が声を上げようとしたとき、監督がやってきた。

「倉持、青道にこないか。」

「は?」

予想外すぎる監督の言葉に、思わず裏返った声を出してしまった。

「お前が高校で続ける気のないことは知っている。だが、あれだけの才能をなくしてしまうのは惜しい。」

「でも、」

「倉持君、あなたが何故野球を続けないという決断をしているのか、私達にはわからない。最終進路決定まで一週間あるわ。貴方の好きに決断すればいい。けど忘れないで。私達はあなたを待ってるわ。」

高島さんが優しくほほえみ、その後ろに立っている純さん達も笑っていた。

「倉持。一試合だけだったけど、お前と二遊間が組めてよかったよ。できれば、残りの高校生活はお前と二遊間を守りたい。」

亮さんが、一歩前に出て俺の頭を撫でた。

「待ってるから、絶対きなよ。これ、先輩命令。」

そう言って元の位置に戻る亮さんは、俺の知っている亮さんと全く同じで、心臓が縛り付けられる気がした。

もう一度、この人達と、

「‥‥考えておきます。」

俺はそれだけ言い残して、駅へとかけていった。

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