[辿り着いたおとぎ話]
若井side
「伝えたいことがあるんだ」
涼架が俺の言葉に頷いたその瞬間、まばゆい光が二人を包み込んだ。
それは、空に揺らめくオーロラの光がそのまま地面に降り注いだかのようだった。
「わ、若井!?」
涼架の声が聞こえたが、俺には何も見えなかった。
ただ、祖父が日記に書かれていた「運命の女神」と言う言葉が、頭の中をぐるぐる回る。
そして、光が消えた時、二人はどこか雰囲気が違う場所に立っていた。
あたりは、さっきまでいた高原と同じはずなのに、どこか違和感がある。
空には、さっきよりも、もっと大きく、もっと鮮やかなオーロラが揺らめいている。
「ね、ねぇ、ここ…どこ…?」
涼架の声が震えている。
俺は、不安そうな涼架の手を思わず握った。
その時、遠くから声が聞こえた。
「君たち、こんな夜中に、 何してるんだい?」
振り返ると、そこに立っていたのは、一人の青年と一人の少女だった。
青年はどこか俺に似ている。
「…おじいちゃん……?」
俺は、思わず声を漏らした。
日記に載っていた、若き日の祖父の写真と目の前の青年があまりにもそっくりだったからだ。
「え、もしかして、君たち、旅の人かい?」
若き日の祖父は、不思議そうな顔で俺たちを見つめている。
「ね、ねぇ、あの人が…若井のおじいちゃん…?」
涼架も、信じられないと言うように、目の前の二人を見つめている。
すると、少女が、にこやかに微笑んだ。
「私は、ユリといいます。あなたは?」
ユリ。
その名前を聞いた瞬間、俺は、背中に電気が走ったような感覚を覚えた。
日記に、そう書かれていた。
祖父が恋した、運命の女神のような少女の名前
二人は、ユリと若き日の祖父、ユウヤと名乗った。
俺と涼架は、二人に事情を話すことはできなかった。
ただ、少し前に住んでいた町の名前を告げ、偶然通りかかっただけと伝えた。
ユウヤとユリは、そんな俺たちを不審に思うこともなく、温かく迎え入れてくれた。
ユウヤは、ユリにちょっかいを出してばかりだった。
ユリが大切にしている花壇の水をわざと多めにあげてしまったり、ユリが描いている絵をわざと、「下手くそ」と言ったり。
まるで現在の若井と涼架の関係そのものだった
「どうして、そんなにちょっかい出すの?」
涼架が、ユリにこっそり尋ねた。
すると、ユリは微笑んでこう言った。
「多分、不器用なんだと思う。本当は、優しい人だって私には分かるから」
その言葉は、まるで涼架がずっと若井に思っていたことのようだった。
俺は、過去の祖父の姿を見て、自分の行動が祖父から受け継がれたものだと確信する。
そして、祖父がなぜ、日記に「さよならには、意味があるみたいなんだ」と書いたのか、その理由を探すために、さらに過去の世界を旅することになる。
次回予告
[運命の光景]
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コメント
1件
予想外の展開!!!でもユリさんは傷つくんじゃなくて愛ある行動ってわかってたんだね