[運命の光景]
若井side
若き日の祖父、ユウヤが薪をくべている間、ユリは俺と涼架を湖畔の岩場へと案内してくれた
夕日が湖面をオレンジ色に染め、対岸の森をシルエットに変えていく。
「それにしてもあなたたち、本当仲良いのね」
ユリが微笑みながら、俺と涼架に言った。
二人は顔を見合わせ、少し戸惑った表情を浮かべる。
「そんなことないですよ。こいつとは、昔からしょっちゅう喧嘩ばっかりで…」
涼架がそう言うと、ユリは楽しそうに笑った。
「ふふ、そういうものよ。本当に大切な人ほど素直になれないものなの」
その言葉に俺の胸がチクッと痛んだ。
まるで、彼女が俺の心を読んだかのようだった
「…どうして、そんなこと言うんですか?」
俺がユリに尋ねると、ユリは少しだけ寂しそうな顔をして、ユウヤの方に目を向けた。
「ユウヤもね、私にいつもちょっかいばかりかけてくるの。絵を描いていたら、わざと邪魔したり、私の描いた絵を見ては『下手くそ』って言ったり…」
それは、まさに現在の俺と涼架の関係そのものだった。
「でもね、本当に大切な絵は邪魔してこなかったり、こっそり直してくれたりするの。本当は優しい人だって、私にはわかるから」
ユリはそう言って、再び微笑んだ。
そして、俺と涼架の目をまっすぐ見て、こう尋ねた。
「ねぇ、あなたたち、もしかして付き合ってるの?」
その言葉に、涼架は顔を赤くして、慌てて否定した。
「ち、違います!ただの幼なじみです!」
涼架がそう言うと、ユリはくすくす笑いながら言った。
「そう。でも、あなたたちの間には、見えない何かがあるわ。それは、とっても温かいもの」
「ねぇ、いつか、あなたたちが本当に大切なものを見つけたら、教えてくれる?」
ユリの言葉に、俺は何も答えられなかった。
ただ、涼架の方に目を向けた。
涼架もまた俺の方を見つめている。
その時、ユウヤが俺を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい!若井くんだっけ?薪をくべるのを手伝ってくれー!」
ユウヤの声に返事をして俺は、ユウヤの元に向かった。
次回予告
[本当の意味を知る時]
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コメント
1件
ユリさんには何でもお見通しだねぇ…