テラーノベル
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魔法の練習が終わった、その日の夜。
私は自室のソファに座らされ、目の前の光景をぼんやりと眺めていた。
(……なんで、こうなった)
部屋の中央には、父と母。
その隣に、ユリウスお兄様。
レオンハルト王子。
そして、エリオス、セレス、カイ、ノア。
全員、真剣な顔をしている。
「では、ルクシアに関する今後の方針を決める」
父の低い声で、会議が始まった。
(会議……?)
「まず第一に」
父が指を一本立てる。
「ルクシアの単独行動は禁止だ」
(……え)
「えっ?」
思わず声が出た。
「屋敷内であっても、必ず誰かが付き添うこと」
「当然だね」
「当たり前だよ」
ユリウスとレオンハルト王子が、即座に頷く。
(即賛成!?)
「第二」
父は続ける。
「魔法の使用は、必ず大人の立ち会いのもとで行う」
「はい」
「もちろんです」
今度は母とエリオスが頷いた。
(……私の意見は?)
「第三」
さらに指が立つ。
「体調が少しでもおかしいと感じたら、即座に申告すること」
「異変を感じたら、すぐに知らせてください」
「無理は絶対にだめだよ」
セレスとノアの声が重なる。
(……包囲網)
「第四」
父は何事もなかったかのように続ける。
「就寝時間は必ず守ること」
「第五」
「外出は原則禁止」
「第六」
「疲れたら、すぐ抱っこ」
(……え?)
「それ、必要ですか?」
思わず聞き返すと。
「必要だ」
「必要だよ」
「必要だと思う」
三方向から、即答が返ってきた。
(全会一致……)
レオンハルト王子が、真剣な顔で言う。
「ルクシアは、守られるべき存在だから」
ユリウスも、強く頷いた。
「無理させるくらいなら、過保護でいい」
――こうして。
**『ルクシア過保護ルール』**が、正式に制定された。
◆
……その翌日。
(……ちょっとくらい、いいよね)
私は自室の扉の前に立っていた。
目的は、ほんの数歩先の廊下。
誰もいない今なら、少しくらい――
そっと、扉を開ける。
一歩。
「ルクシア」
(早っ!?)
背後から聞こえた声に、全身がびくっと跳ねた。
振り返ると、そこにはユリウスお兄様。
「どこ行くつもり?」
「えっと……お、水……」
「言えば持ってくる」
にこり、と笑う。
(圧)
その瞬間。
「ルクシア?」
今度は反対側から、レオンハルト王子の声。
「一人で動いちゃだめって、決めたよね」
(挟まれた)
さらに。
「今、単独行動でしたよね」
「心拍、少し上がってます」
「大丈夫?」
いつの間にか、エリオス、セレス、カイ、ノアまで集まっていた。
(……包囲網、完成)
「……ごめんなさい」
小さくそう言うと。
「ほら」
ユリウスが、私を抱き上げる。
「移動はこうするって決めただろ」
(抱っこもルールなの!?)
「水、持ってくるね」
レオンハルト王子は、すでに準備万端だ。
(……自由とは)
でも。
抱き上げられた腕は、驚くほど優しくて。
みんなの表情は、本気で心配していて。
(……まあ、いっか)
私は小さく息を吐いた。
過保護ルールは、破る前にバレるらしい。
そして今日も私は、
大切に守られながら、生きている。
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