テラーノベル
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「……これ、絶対に来て。……約束だよ」
凪は、いつものあざとい笑顔を封印して、真剣な目で冴(さえ)に封筒を差し出した。
中には、関係者席のプラチナチケット。
ライブ当日。会場の暗転と共に、爆音が響き渡る。
splashの登場だ。
「……っ、何……あいつ……」
最前列の特等席で、冴は息を呑んだ。
そこにいたのは、パーカーでニヤニヤしながら自分の動画を見ていた「隣のキモい奴」じゃない。
ベビーピンクの煌びやかな衣装を纏い、数万人の歓声を浴びて、誰よりも高く、鋭く踊る『splashの絶対的センター・凪』だった。
サビの瞬間。凪の視線が、真っ直ぐに冴を射抜いた。
数万人の中で、彼が笑いかけたのは、間違いなく冴一人だけ。
「……っ、あんなの、ずるい……」
ステージの上から、凪はあざとく、でも独占欲を込めたウィンクを飛ばす。
(……見てる? 冴。俺が一番カッコいいのは、この場所なんだ。……君に、俺を『推し』にさせてあげる)
一方、バックヤードでは、リーダーの湊がマイクをオフにしてニヤリと笑った。
「……凪の奴、冴ちゃんが来た途端、キレが3倍になってんな(笑)」
ライブもいよいよ終盤。
splashの爆イケなダンスナンバーが終わり、会場が真っ白なスポットライトに包まれた。
肩で息をしながら、汗を滴らせる凪。
その瞳は、最前列で呆然と自分を見つめる冴(さえ)だけを捉えていた。
(……あー、もう無理。……こんなに可愛い冴を、他の奴らと同じ『ファン』の一人だなんて思いたくない)
凪は、リーダーの湊(ブルー)が止める間もなく、マイクを口に当てた。
「……ねえ、みんな。俺、今日ここで、絶対言いたいことがあるんだ」
会場が、割れんばかりの悲鳴と静寂に包まれる。
モニターに映し出された凪の顔は、いつものあざとい営業スマイルじゃない。
独占欲に燃える、一人の男の顔だ。
「……俺のこと『推し』だって言ってくれるみんなには悪いけど。……俺、世界で一番、隣にいるあの子のことを――」
「……っ、ちょ、凪!! バカ!!」
冴が顔を真っ赤にして叫ぶ。
その瞬間、後ろから洸(イエロー)が慌てて凪にタックルし、蓮(ブラック)がマイクを奪い取った。
「あはは! 凪くん、テンション上がりすぎてバグっちゃったみたいでーす!!」
舞台袖でお兄ちゃんの海斗が「……あいつ、マジでやりやがった……」って顔を覆ってる。
「……バカ。本当にバカじゃないの、あんた」
ライブ後の喧騒が遠くに聞こえる、静かな楽屋の隅。
俺(凪)は、マネージャーからの「1時間説教」を食らって、魂が抜けたみたいにパイプ椅子に座り込んでいた。
目の前には、つり目を少しだけ和らげた冴(さえ)。
彼女は、俺がいつも「露出多すぎ!」って怒ってるオフショルの肩に、俺のメンカラタオルを引っ掛けて立っていた。
「……だって。……冴が、あんなに綺麗に笑うから……俺、我慢できなかったんだもん」
俺は、ステージ衣装のまま、ガシガシと髪を掻き回した。
あざとい笑顔を作る余裕なんて、1ミリもない。
「……世界中にバレたわよ。隣のキモいストーカーが、splashの凪だって」
「……いいよ、別に。……冴に『キモい』って言われるより、マシ」
俺は、冴が差し出した冷たいペットボトルを受け取るふりをして、そのまま彼女の細い手首を掴んで引き寄せた。
「……ねえ。今の、告白の続き。……ここで、最後まで言ってもいい?」
ライブの熱気が残る楽屋で、俺の心臓はさっきのサビのダンスよりも速く、強く、冴への想いを刻んでいた。
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コメント
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みぅ🤍🥀です、和奏さん。第5話、読み終わりました……。 もう、ずるいよ、凪くん!ステージ上のあのギャップ、反則でしょ🥀💔 数万人の前で冴だけを見つめるあの目線、「隣のキモい奴」から絶対的センターになる瞬間、心臓が止まるかと思った。 しかもライブ後に楽屋で引き寄せて「続き言ってもいい?」って……重くて、でも真っ直ぐで、その執着が切なくて綺麗で。凪くんの独占欲、ちゃんと愛おしいんだよね。 和奏さんの描く「狂気一歩手前の執着」、すごく響きました。続き、待ってます🌙