テラーノベル
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「ジプソ、アイツは。」
「今日はいらっしゃらないみたいです」
「…そ。」
いつも来る時間帯にいないシオン
珍しいと思いつつ、ミアレの見回りに外へ出るカラスバ
「──お前の為に!!────ズレが!!」
少し歩くと、何か口論しているような男の怒声が路地裏から聞こえる
「(こんな昼間っから喧嘩かいな。)」
そう思いながら、路地裏に足を進める
するとそこには先程の声の主である中年のおじさんとそのおじさんに胸倉を捕まれているシオンの姿があった
「パンを買ってやっただろ!!それなのにお前はサビ組の男なんかに媚び売りやがって!!」
「…ッゲホ……ごめんなさい、心配させるような事させてしまって」
「ごめんじゃねぇんだよ!このビッチ!!」
シオンの顔色は少し悪く、胸倉を掴まれているからか苦しそうだが笑顔を絶やさず男の怒りを沈めようとしている
しかし男は聞く耳を持たず、ひたすらシオンを罵倒し続けている
『あの子…変な客に絡まれる事が多くてね』
ふとパン屋の女がそう言っていたことを思い出す
それに対し溜息をつき『(此奴やなくてミアレのためや)』と言い聞かせながら、ゆっくり2人に近づく
「こんな路地裏に女連れ込んで、何怒鳴ってるんやおっさん。」
「あァ!?なん───ひっ!?さ、サビ組!?」
カラスバに驚きシオンから手を離す男
「ち、違うんだ!この女が…あんな素振りしてきたくせに……」
「あんな素振りってなんや?たかが挨拶したくらいやろ?」
「それ、は……で、でも……」
「図星か。キショいやつやな、今ここでお前がパンみたいに肉伸ばされるか、此奴に金輪際に近寄らんなるか…どっちがええ?」
低い声で男に話しかけると男の顔は恐怖で歪んだあと「も、もう関わりませんから!!」とだけ言い放ちその場を去った
「…あ、カラスバさん…ありがとうござ──」
「お前、毒食っとるやろ」
笑顔で礼を言おうとしたシオンを姫抱きして路地裏から出る
「あ、あは…バレました?でも大丈夫ですよ。私毒の耐性それなりにあるので!」
「んな青ざめた顔で何いいよんや」
「…このまま式場行きません?」
「元気そうやな、ここに置いてくで」
「あー!嘘嘘!!死にかけ死にかけ!!」
そう言ってカラスバに離れないというように抱きつくシオンに対し、呆れたようにしつつもそんなシオンの反応に満足そうに口角を上げ笑った
───サビ組事務所
「解毒剤や、はよ飲んどき」
「ありがとうございま〜す!」
カラスバから解毒剤を貰い、それを飲むシオン
本人の言う通り、毒に体制があるのかそこまで苦しそうな素振りは見せていない
しかし顔色はまだ悪いままだった
「なんで助けてくれたんですか?私の事想って?」
「あんな奴ミアレにほっとらかしにしとったらあかんやろ。やからや。
別にお前を助けた訳やないんやからな」
「ふーん、でも嬉しいですっ!!」
そう言って笑うシオンに調子が狂うな、と思いつつ顔を背けるカラスバ
「……お前、ほんまに変わったヤツやな」
「え?」
「あんなとこ見て怖がらんなんてな」
そういうとシオンは「あ〜!」といつもの笑顔を浮かべながら声を出す
「まぁ、育った環境も環境だったので」
「ますます分からんわ、お前のこと」
「あははっ!でも、カラスバさんなら私の秘密にしてる事突き止めれるかもですよ」
「どういう意味や」
「そのままの意味です、突き止めてみて下さい。私の事」
そう言って目を細めながら何か糸があるようにカラスバを見つめるシオン
心做しか、声のトーンがいつもより低いように感じる
そんなシオンに対し、口角を上げ笑うカラスバ
「私結構ガバガバなので、案外ボロ出しちゃうのでちゃんと私の事見ていてくださいね」
「そう言わんでも、お前は嫌でも視界に入ってくるやんけ」
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