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#ダンジョン配信
百鬼清風
1,660
#料理
Yさん。
47
神崎屋に道具を戻し、手を洗って、クーラーボックスから打ち上げの分を出した。
いつもの厨房で、また肉を焼き始めると、さっきまで一緒に焼いていた眞子が、今度は箸を持っている。
「早く食べたい」
「まだ、もう少しかかる」
「分かってる。待ってる」
そう言いながら、鉄板を見つめている。
天音たちは飲み物を選んで、グラスをテーブルへ運んだ。紬と莉音のジュースも、冷蔵庫に入れておく。
「こんばんは」
雪乃が入ってきた。昼間とは違って上着を腕に掛けている。続いて山本も来て、カウンター席に腰を下ろした。
「お疲れさまです。私も、いただきに来ました」
「お疲れさん。雪乃も、いろいろありがとう」
雪乃が微笑み、山本が隣で笑う。
「ちゃんと、打ち上げ分は残したんだな」
「ええ」
「なら、今度は一緒に飲もう」
仕事は終わったと言うので、二人には冷えたビールを出した。俺の分も一本、冷蔵庫から出す。
ハンバーグ串が焼け、仕上げにたれを塗るころ、また扉が開いた。
「ただいま!」
普段着に着替えた紬だった。莉音も一緒に入ってきて、鞄を置く。
「おかえり。ライブ、見てたぞ」
「見てくれた?」
「ああ。終わりのほうは、眞子に代わってもらってな。みんなで前へ出てくるところ、すごかったぞ」
紬が嬉しそうに笑い、莉音がその隣で頭を下げた。
「ありがとうございます。紬ちゃん、出番の前もハンバーグ串の話をしていたんですよ」
「莉音ちゃん!」
「何本売れたかしら、もう冷蔵庫が空かしらって」
天音が、待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「全部売れたよ」
「全部?」
紬は目を丸くしたあと、俺を見た。
「よかった。……でも、一本くらい、一緒に私もお客さんに渡したかった」
「昨日、あれだけ作ってくれただろ。ちゃんと食ってもらえたよ」
串が全部焼けたので火を止め、大皿に並べてテーブルへ運んだ。紬もついてきて、焼き目を覗き込む。
「今日は歌、良かったよ。よく働いたな」
「晃一さんたちだって、ずっと串を焼いて売ってたんでしょう」
「ああ、一緒に食おう」
エプロンを外し、俺も椅子に腰を下ろした。山本と雪乃、眞子もカウンターからテーブルへ移り、天音が俺の前にグラスを持ってくる。紬と莉音は手を洗い、冷やしておいたジュースを受け取ってテーブルについた。
全員が座ったのを見て、ビールを注いだ。
「じゃあ、お疲れさん」
「お疲れさまでした!」
ビールとジュースのグラスが持ち上がる。
ひと口飲むと、冷たくて苦い。今日はずっと肉とたれの匂いを嗅いでいたから、余計に美味く感じる。
「晃一さん、これ、ご飯も食いたくなる」
眞子が、もう串を半分食べていた。
「まず串を食ってくれ。熱いうちにな」
「うん。まずは食うぜ」
ご飯を諦めた返事ではなかった。
隣の彩希が肉をかじり、慌てて口元を押さえる。
「熱い。でも、美味しいです。たれ、こんなにいい匂いだったんですね」
「ずっと横にいると、分からなくなるんだよな」
山本は串の肉を噛み切り、すぐにビールを飲んだ。
「これはビールに合うな。あと、やけに力が出る。腕力と持久力か」
「あたしも。あんなに焼いたのに、まだ元気だぞ」
眞子が力こぶを作ると、里沙がその腕をつついた。
「もう働かなくていいんですよ」
「食べるほうで使う」
「そんなに力を入れて食べなくても」
天音が笑い、莉音もグラスを持ったままくすくすと笑っている。
紬は串の先をかじってから、焼き目を見つめた。
「これ、私が作ったのかしら」
「形、そろえたからな。俺にも分からん」
「あたしのかもしれないぞ」
紬も否定できなかったらしく、串を見てから、眞子と一緒に笑い始めた。
俺も一本取って、かじる。表面は香ばしく、中の肉は軟らかい。醤油だれのあとから、ガウルの肉の味がちゃんと感じられる。
硬い牛肉も、みんなで手をかけたら、ずいぶん美味くなった。
「晃一さん、それ一本じゃ足りないでしょう。もう一本」
紬が俺の皿に串をのせた。
「まだ最初のを食ってる」
「冷める前に、ちゃんと食べて」
「普段、俺が言ってることだな」
紬は得意そうに笑って、俺の皿にもう一本足した。
おいおい、増やすな。ビールも飲ませてくれ。
そう思いながら、慌てて詰め込んで、熱いうちに次の串を取った。
コメント
1件
おつかれさまです、リオンです。 ダンジョン祭りが終わって、あの厨房に戻っての打ち上げいいですね。みんなで焼いた串を、今度はみんなで食べる。「これ、私が作ったのかしら」って、形そろえたから誰のか分からなくなってるの、すごくいい。作った本人たちも混乱してる感じに、ほっこりしました。 ずっと肉とたれの匂いの中にいると、自分のが分からなくなるの、分かります。ビールが冷たくて苦くて美味そう。 香ばしい表面と中の柔らかさ、醤油だれのあとからガウルの肉の味がするっていう描写、飯テロですよね…読んでて串が食べたくなりました。