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「さっ。ここがオレたちの結婚式の会場」
別荘の奧まで進み、そのメイン会場が近付くと、まずはその手前で声をかける。
すると、そのタイミングで駆け寄って来る人が一人。
「望月さん」
「三輪ちゃん!」
透子が信頼している仕事上での後輩の三輪さんの存在に気付き、またパァッと明るい顔になって嬉しそうにしている透子。
「おめでとうございます」
「三輪ちゃんまで来てくれたんだ」
「もちろんです。っていうか、今日私結婚式の司会させて頂くので」
「えっ? 三輪ちゃんが?」
「はい。高杉さんと一緒に」
「そうなんだ!?」
「オレがお願いしたんだ。二人に」
三輪さんの言葉にまだ状況を理解出来てないのか驚いている透子に、オレがお願いしたことを伝える。
「今日は透子とオレがお世話になってる人や身近な人たちに直接この結婚をお祝いしてもらいたくて、人前式にしたんだ。神様にじゃなく、皆の前で幸せを誓いたいなって思って」
今透子がブライダルの仕事をするようになって、その人前式をメインにしていることを知った時、素直に素敵だなと思った。
たくさんの人の前で永遠の愛を誓う人前式は、透子にピッタリだとそう感じた。
ここまで来るまで、たくさんの人に支えてもらったオレたちだから。
その人たちに見守られながら、愛を誓って幸せな時間を過ごしたい・・・そう思った。
そして仕事柄そういうのをいくつか見てきている透子は、やっぱりきっとどこかで自分のこととしても少なからず意識したはずだし。
それなら今までのそのどんな式よりも最高に幸せな式をプレゼントしたい。
たくさんの人に囲まれる、温かい結婚式を。
「まさか自分がするなんて思わなかった・・・」
自分が手掛けていたことを、周りのサプライズで経験するなんてさすがの透子も予想していなかったようで驚いてる。
「だろうね。透子は他の人たちが幸せになることで、自分のことのようにいつも幸せになってたからね」
「だってもう私はすでに樹と結婚出来て幸せだったから」
そう。透子からは一言も羨ましいとかそんな言葉は聞いたことなくて。
ただ式を挙げる二人がすごく素敵だったとか幸せそうで自分も幸せな気持ちになれたとか、そんな話ばかりで。
きっとそれも透子の心からの本心だったのだろうけど、でもそれを聞く度オレは透子にもそんな風に感じてほしいと思った。
そんな幸せそうにする透子を見たいと思った。
「でもさ。オレは誰よりも透子を幸せにしたいんだよね。そして透子に誰よりも幸せだと感じてもらいたい。だから今日は透子がその幸せを感じる日。時間かかっちゃったけど、ようやく透子にもその幸せ感じてもらえる」
「樹。いつからそんなこと考えてくれてたの?」
「ん? ずーっと前から。透子はさ、つい自分のことより他人を優先したり、周りの幸せを自分以上に願ったりさ、自分でなかなか幸せを手にしようとしない人だから。でもそんな透子だからこそさ、誰よりも周りの人たちを幸せにしてる。その優しさでたくさん救われて幸せになってる人がいるんだよ」
それをずっと伝えたかった。
透子はきっと気付いていないのだろうけど、透子がいてくれることでたくさんの人が優しい気持ちになれて幸せになれているということを。
そして透子が幸せになることを、周りのみんなが望んでいるということを。
「だから今日は皆で透子を幸せにしたいんだよね」
「皆って?」
「透子のことが好きな皆。だからさ、透子を幸せにしたいって皆が力貸してくれた。オレだけじゃないんだよね。透子を幸せにしたいって思うのは」
「そうですよ~。望月さん。はい。これ。私も望月さんに幸せになってほしくて作ったんで受け取ってもらってもいいですか?」
そう言いながら三輪さんが手作りのブーケを透子に手渡す。
「ブーケ・・・?」
「はい。私が望月さんを思って作りました。いつもどんな時も引っ張っていってくれて、常に私の憧れです。望月さんに今もついてこれてホントに嬉しいです」
「三輪ちゃん・・・。こちらこそいつも力貸してくれてありがとう」
三輪さんに今回の式の手作りの式の話をした時、すぐに三輪さんの方から自分で透子の為にブーケを作りたいと申し出があった。
大好きで憧れている透子の為に、三輪さんも力になりたいと幸せのお手伝いをしたいとそう言ってくれた。
「でもそんな望月さんなのに、早瀬さんのことになると、すっごく心配性で自信無くなって余裕なくなっちゃって」
「いやいや、ちょっと三輪ちゃん! もう前のことだから!」
ん? なんかもっと聞きたい話してくれてるみたいだけど?
「何? 透子、三輪さんにはそんな姿見せてたんだ」
「はい。望月さん本人は気付いてなかったですけどね。もう隋分最初から早瀬さんのこと好きになってたのバレバレでしたし、早瀬さんいなければホント望月さんは望月さんでいられなかったですから」
「そうなんだ?」
からかい半分で透子を見ると、顔を少し赤らめて照れてる姿。
やばっ嬉し。
透子、そんな三輪さんに無意識に見せるほどそんなにオレのこと想っててくれてたんだ?
しかも最初から?
うわっ、マジそれ聞けて嬉しすぎる。
「なので早瀬さん。望月さん・・・あっ、今日は透子さん、ですね」
「三輪ちゃん。慣れないでしょ? 私が職場では変わらず旧姓の望月のままでいるからそっちのが呼び慣れてるよね」
「でも今日は新婦として早瀬さんなので。透子さんって呼ばせてもらいますね」
「うん」
「早瀬さん。透子さん。この先も誰もが羨む最高にお似合いの二人でいてください!そして末永くお幸せに!」
「ありがとう。三輪ちゃん」
「ありがとう」
三輪さんの言葉に嬉しそうに微笑む透子。
「ブーケもホントに素敵。さすが三輪ちゃん、私の好きな感じわかってくれてる」
「ですよねー! どれだけ透子さんについてきてると思ってるんですかー。っていうか、透子さんそんなイメージなんですよね、私の中で。いつも凛としててカッコよくて綺麗で。だけど時には可愛い部分があったり繊細な部分があったり。そんな感じをこの花のデザインと色で表現してみました」
三輪さんが言うようにホントに透子のイメージそのモノで。
三輪さんはずっと透子と一緒に仕事してきただけに、透子のことがホントよくわかってくれてる。
見えてる部分でも、見えてない部分でも、それぞれの魅力があって。
オレがイメージしてる通りのブーケを作ってくれた。
うん、やっぱり三輪さんに頼んでよかった。
「ホントにありがとう」
「では、そろそろ司会、スタンバイしますね。もう参列者の皆さんお揃いなので」
「うん。よろしくね」
「はい!」
そう言って三輪さんは持ち場の場所へと戻って行った。