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「樹。ずっとこんな感じ続いていくの?」
すると二人になって透子がそんなことを聞いて来る。
「ん? 何が?」
「なんか一つずつ周りの大切な人が今日のこの特別な日に幸せをくれるっていうか・・・」
「あっ、気付いた?」
「やっぱりそうなんだ?」
「言ったでしょ? 今日は透子が幸せになる日だって。皆にね、力を貸してもらって幸せな結婚式作りたかったんだよね」
「えっ?」
「透子がさ、幸せになる為に、この結婚式で皆、自分達から望んで一人ずつ幸せをわけてくれてるんだよね」
「どういうこと?」
「オレがさ、こうやって手作りで気持ち込めた結婚式作りたいって言った時、皆が自分の出来ることを協力したいって。自分達も一緒に幸せな結婚式作りたいって皆が言ってくれた」
「だから・・? 美咲がヘアメイクしてくれたり、麻弥ちゃんがウエディングドレス作ってくれたり、三輪ちゃんがブーケ作ってくれたり・・・」
「そういうこと」
ようやく今日の目的に気付いた透子に、そう言って微笑む。
この結婚式はオレが企画したモノではあるけど、一つ一つ一人一人透子に贈りたいサプライズは全部その人たちが用意したモノだよ。
その人たちが透子を想って、透子の喜ぶ顔を想像して用意してくれた贈り物。
オレでさえ、皆の気持ちや協力がホントに嬉しくて有難くて胸が熱くなるほど。
「実はさ、今日のこの会場の別荘も」
「ここも?」
「透子。もう少しこっち来て」
そしてようやくメイン会場でもある別荘の庭が見える窓際まで連れて行く。
「すご・・・」
そこには今日の結婚式として豪華に用意された特別な場所が存在していて。
「ここでオレ達の結婚式挙げよ。この場所でさ、父さんが結婚式したらどうかって言ってくれたんだ。父さんが好きなこの空間でさ、ぜひオレたちにここで式を挙げてほしいって」
「お義父さんが・・・?」
「そう。会社の屋上あんなにこだわって作った父さんだからね。この別荘の庭も、父さんすごくこだわって作ったみたい」
別荘の中でも、親父がこだわって作り込んだこの庭。
小さい頃来た時は特に何も感じなかったけど、久しぶりにこの別荘に来た時に、その豪華すぎるガーデニングに親父のこだわりや思いを改めて感じることが出来た。
今までは、オレたち家族は皆一緒に揃うことも少なくて、親父一人では眺めるだけにしてもあまりにも広すぎたその庭。
だけど、今日はその庭には元々のそのガーデニングに加え、結婚式の会場として、たくさんの人が賑わい、華やかで温かい特別な場所へとカタチを変えた。
この庭こんなに輝いてたっけ。
その場所はオレたち家族の時とは想像つかない同じ場所とは思えないほど、輝いて見えて。
見慣れた場所でもありずっと遠のいていた場所。
だけど、今その場所はこんなにも素敵な場所になっていて。
広すぎるその庭は、少し寂しい気がするほどだったのに、今は愛する人とそしてそれを祝福してくれる周りの人たちのおかげで、こんなにも特別な場所になった。
「あの屋上も素敵だったけど、ここはもっと素敵」
「だから親父が一番好きなこの場所でオレたちの幸せな姿を見たいって、親父がここ用意してくれた」
「嬉しい。そんな特別な場所で結婚式出来るなんて・・・」
親父がそう言ってここを用意してくれたことも、そしてそれを同じように透子も喜んでくれるのが嬉しい。
「この場所は親父からのプレゼント」
「お義父さんからそんなこと言ってもらえたなんて幸せすぎるね」
「こんな日が来るなんてオレも思ってなかったけどね」
「そうだよね。でも今はお互い大切に思い合ってる存在なのわかってるし」
「実際は親父に結婚認めてもらえなくて、これだけ幸せになるまで時間かかったワケだけどね。でも今ちゃんと祝福してもらえるからこそ、こうやってカタチにしたかったんだよね」
「うん。嬉しい。今がすごく」
ホント今こんなに親父とわかり合って、しかもこの場所で結婚式を挙げられるなんて夢みたいで。
透子がいなければこんなこと実現しなかったし、きっと親父も透子じゃなければそんなことも言ってくれなかったと思う。
それから人前式が始まり、高杉と三輪さんのスムーズな司会のまま、どんどん式が進んでいって。
オレたち二人の未来を証明してくれる承認してくれる人は、もちろんオレたちが誰より信頼してずっと力になってくれて支えてくれた修さんと美咲さん。
二人に証明書にサインをしてもらい、そしてこの二人をはじめ、今までオレたちを応援してくれて支えてくれた人たち皆の前で、改めてオレたちの永遠の愛を誓う。
やっと実現出来たオレと透子の本当の結婚式。
そして、その式が終わり次第、透子には二回目のドレスに着替えてもらう。
それに合わせてオレも着替え終わり、透子が用意出来るのを部屋の外で待機する。
きっと透子はもうこれで十分満足だとか言いそうだけど、まだこのサプライズは続いてること知ってまた驚くんだろな。
透子の幸せ祝いたい人たちは、まだこんなもんじゃないからね。
すると、透子がいた部屋のドアが開く。
そしてそこから出て来た透子。
うわっ・・またさっきのとは違ってまたこのドレス姿も綺麗すぎる・・・。
オレは出て来た透子に優しく微笑んで迎え入れる。
「やっぱり正解」
「え?」
「そのドレスも透子すごく綺麗」
「ありがと・・・」
「やっぱり結婚式やってよかった。こんなに綺麗な透子見れた」
「樹も。すごく素敵」
「当然。透子に釣り合うのはまぁオレくらいだろうから。今は自信持って透子の隣にオレも並んでいられる」
こんな幸せな場所オレ以外並ぶことなんて出来るはずないでしょ。
こんなに透子好きなオレだけの幸せな特権なんだから。
「私も」
「ん?」
「私もこんなにカッコいい樹見れてよかった」
「そっ?」
「うん」
「惚れ直した?」
「うん。もう何回も惚れ直してる」
そう言って微笑む透子。
その言葉が心地よくて幸せで。
「でもまだまだオレには適わないけどね。透子のこと好きな気持ちは、透子がオレを好きな気持ちにもきっと負けないから」
だけど、やっぱりオレが透子を想って来た年月も深さも、透子にだって誰にも負ける気しないから。
「じゃあ、私も負けないかな」
「何が?」
「今誰より一番ホントにすごく幸せ。きっとそれは樹にも負けない」
「確かに。今日はオレより透子が一番幸せになってもらいたい日だからね」
「でしょ?」
うん。今日は透子が一番幸せになってもらわなきゃ困る。
透子を好きな気持ちは、きっとやっぱりオレの方が大きいと思うけど。
だけど今日は透子の為にこの場所を用意したんだから、今はその言葉をもらえるのが一番嬉しい。
「じゃあ、これからもっと幸せになりに行こっか」
そしてそんな愛しい人をもっと幸せにする為の場所へ連れて行くために、手を差し出す。
「うん」
その手にそっと手を重ね、その愛しい人が微笑む。
愛しい人といると、今まで知らなかった幸せがどんどん増えて行く。
それは自分も幸せを感じられて、その人も幸せになれるたくさんのこと。
一緒にいるだけでこんなにも幸せになれて、そしてもっと幸せになってほしいと思うようになって。
自分以上にその人の幸せを望む。
そんな優しい世界があるなんて、透子と出会って初めて知った。
透子はオレにいろんな初めてを教えてくれた人。
小さい頃に感じたその初恋は、今もなお、オレの中できっと同じようにその想いは続いている。