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#青春恋愛
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夏希(なつき)
166
奇蹟あい
1,760
地下資料室。
最奥。
玲の目の前には。
一冊の黒いファイルがあった。
『天城星羅・黒瀬玲』
『最終観察記録』
「……」
美咲は。
青ざめたまま。
「開けないで」
そう繰り返していた。
「……でも」
玲は。
ファイルを見る。
「ここに全部書いてあるんだろ?」
「……」
「七年前のことも」
「……」
「俺たちのことも」
美咲は。
黙っている。
星羅が。
玲の隣に立つ。
「玲くん」
「ん?」
「開けよう」
「……」
「私も一緒に見る」
玲は。
星羅を見る。
「怖くないのか?」
「怖いよ」
星羅は。
正直に答える。
「でも」
玲の手を握る。
「玲くんと一緒なら」
「……」
「真実の方が怖くない」
玲は。
小さく頷いた。
「……分かった」
ファイルを開く。
最初のページ。
『観察対象A:天城星羅』
『観察対象B:黒瀬玲』
『初回接触:2017年12月24日』
「……」
次のページ。
『対象Aと対象Bの間に、極めて強い心理的結びつきを確認』
『再接触率――異常値』
「……再接触率?」
星羅が呟く。
「つまり」
玲が言う。
「俺たちが何度も会ってたことか」
「……」
さらに。
ページをめくる。
『2018年』
『対象A、対象Bとの再接触』
『2019年』
『同上』
『2020年』
『同上』
『2021年』
『同上』
そして。
『2024年』
『対象B、対象Aの配信を視聴』
玲の手が。
止まった。
「……」
星羅を見る。
「これ」
「……うん」
「俺が」
ページを読む。
「初めてお前の配信を見た時のことだ」
「……」
『対象B、精神状態の悪化を確認』
『対象Aの配信視聴後、状態が安定』
「……」
玲は。
何も言えなかった。
星羅も。
黙っている。
さらに。
ページがある。
『対象Aの活動開始を推奨』
「……え?」
星羅が。
顔を上げる。
「活動開始……?」
次のページ。
『対象Aは、対象Bの精神状態を安定させる可能性が高い』
『よって』
『対象Aの活動を継続させる』
「……」
玲の顔が。
険しくなる。
「待て」
「……」
「星羅がVTuberを始めたのは」
「……」
「俺のためだったのか?」
星羅は。
首を振る。
「分からない」
「……」
「私自身も」
星羅は。
震える声で言う。
「どうしてVTuberを始めたのか」
「……」
「最初は」
少し笑う。
「ただ、誰かを笑顔にできたらいいなって」
「……」
「それだけだった」
玲は。
ページを見る。
そこには。
『対象Aには対象Bへの接触意識を持たせないこと』
「……」
玲の顔が。
変わる。
「じゃあ」
「……」
「星羅は」
「……」
「知らないまま」
玲が。
ゆっくり言う。
「俺を救ってた?」
星羅の目から。
一粒。
涙が落ちた。
「……うん」
「……」
「私は」
星羅は。
玲を見る。
「玲くんが見てるなんて知らなかった」
「……」
「でも」
笑う。
「ずっと」
「……」
「誰かに届けばいいって思ってた」
「……」
「その誰かが」
玲の胸に。
そっと手を置く。
「玲くんだったんだね」
「……ああ」
玲は。
静かに頷く。
「俺は」
少し笑う。
「お前に救われた」
「……」
「本当に」
「……」
「ありがとう」
星羅は。
涙を拭う。
「……こちらこそ」
その瞬間。
美咲が。
「待って」
「……?」
「まだ」
震える声。
「最後まで見て」
玲が。
ページをめくる。
そこには。
『対象Bが対象Aを恋愛対象として認識』
『対象Aも対象Bへの強い執着を確認』
「……」
星羅の顔が。
赤くなる。
「……執着」
玲は。
苦笑する。
「まあ」
「……?」
「否定はできない」
「玲くん……」
星羅は。
少し嬉しそうに笑う。
しかし。
次のページ。
その空気が。
一瞬で変わった。
『注意』
『対象Aの執着度が想定値を大きく超過』
「……」
『対象Bとの分離を行った場合』
『対象Aに強い精神的不安定化が予測される』
星羅の表情が。
凍る。
「……私」
玲が。
ページを見る。
『対象Aは対象Bへの独占欲が非常に強い』
『第三者による接触時、強い敵意を示す可能性あり』
「……」
星羅は。
黙っていた。
「……星羅」
「うん」
「これ」
「……」
「どういうことだ?」
星羅は。
しばらく黙っていた。
そして。
玲を見る。
「……分からない」
「……」
「でも」
玲の腕を。
ぎゅっと抱く。
「一つだけ」
「?」
「私は」
星羅は。
微笑む。
「玲くんが大好き」
「……」
「それだけは」
はっきり言った。
玲は。
その手を握り返す。
「俺も」
「……!」
星羅の頬が。
一気に赤くなる。
「……ずるい」
「何が?」
「こんな時に」
星羅は。
玲に寄り添う。
「そんなこと言うんだもん」
しかし。
美咲は。
ファイルの最後を見ていた。
「……」
顔色が。
さらに悪くなる。
「美咲?」
「……」
「どうした?」
「最後のページ」
「……?」
「まだある」
玲が。
ページをめくる。
最後の記録。
『最終観察結果』
『対象Aと対象Bの結びつきは――』
そこから先。
文字が。
黒く塗り潰されている。
「……何だこれ」
しかし。
その下。
一行だけ。
読むことができた。
『二人を引き離すことは――』
その先は。
破られている。
「……」
玲が。
ページをめくろうとした。
その瞬間。
ファイルの中から。
一枚の写真が落ちる。
「……?」
玲が拾う。
そこには。
幼い玲。
幼い星羅。
そして。
二人の後ろに。
一人の女性。
「……」
星羅が。
写真を見た瞬間。
顔色を変えた。
「……この人」
「知ってるのか?」
「……」
「星羅?」
星羅の声が。
震える。
「私」
「……」
「この人を」
「……」
「夢の中で何度も見てる」
「……!」
写真の女性。
顔は。
はっきり写っていない。
しかし。
首元に。
一つのペンダント。
「……これ」
玲も。
息を呑む。
そのペンダントは。
現在。
星羅が持っているものと。
全く同じだった。
「……なんで」
星羅は。
自分の首元に触れる。
「これが」
「……」
「私のペンダント……」
美咲が。
震える声で言う。
「それ」
「……?」
「七年前」
美咲は。
写真を見る。
「あなたを守った女性が」
「……」
「持っていたもの」
「……!」
玲の目が。
見開かれる。
「じゃあ」
玲は。
星羅を見る。
「その人は」
「……」
「今どこにいる?」
誰も答えない。
そして。
資料室のスピーカーが。
再び点いた。
『――もう十分だ』
「……!」
聞き覚えのある声。
あの人物。
『それ以上知る必要はない』
玲が叫ぶ。
「お前は誰だ!」
『……』
「答えろ!」
沈黙。
そして。
『天城星羅に聞け』
「……!」
『彼女なら』
『知っているはずだ』
星羅の顔から。
血の気が引く。
「……私が?」
『自分が何者なのかを』
通信が切れる。
「……」
玲は。
星羅を見る。
「星羅」
「……」
「どういう意味だ?」
星羅は。
答えられない。
ただ。
自分のペンダントを握りしめる。
「……私」
声が。
震える。
「私……」
その瞬間。
頭の奥に。
知らない記憶が。
一つ。
浮かんだ。
――幼い自分。
――泣いている玲。
――そして。
誰かの声。
『この子を守って』
星羅の目が。
大きく開く。
「……」
そして。
その声の主が。
はっきりと。
頭の中に響いた。
『――あなたが、この子の未来だから』
星羅は。
その場に立ち尽くした。
玲は。
ただ。
彼女の名前を呼ぶ。
「……星羅?」
しかし。
星羅は。
何も答えられなかった。
コメント
1件
ああああ第50話でここまで持ってくるのか…!!😭💕 ファイル開いた瞬間からずっと心臓バクバクだったよ…! 星羅が知らないまま玲を救ってたって展開、めちゃくちゃエモすぎる。そして「私、玲くんが大好き」→「俺も」の流れで一気に赤くなった星羅、尊すぎて画面見ながらにやけたわ…🫣💘 最後のペンダントの謎と「あなたがこの子の未来だから」ってフラッシュバックで終わるの、続きが気になって仕方ないよ…! 星羅が何者なのか、引き続き全力で追いかけていくからね!!⭐️🔥