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「あのね、透子。よく聞いて」
透子を見つめながら冷静に話しかける。
「はい・・・」
「オレがその時も修さん以外誰にも言わなかったのは同じ理由。単に自分以外の男に透子の存在を知ってほしくなかっただけ。そうじゃなくても透子は自覚ないけど、会社ではすでに透子に憧れてるヤツもいるし。それに加えオレの連れなんかに紹介したら、そいつらも気に入って、逆にそこで透子にアプローチして、透子がそっちに行かれたら困ると思った。だからあんな時でさえオレは透子を独り占めしたくなった。それがホントの理由」
ホントならこんなカッコ悪いこと透子に知られたくなかった。
透子は幸せに思ってくれてる場所なのにオレがそんなカッコ悪いこと思ってただなんて。
だからあの時実はそれが気にはなっていた。
お披露目パーティーとか言いつつ、結局軽い感じのパーティーになって、透子をただ見せつける会になっていたこと。
本来ならちゃんとした場所でちゃんとオレたちが幸せだと皆に知ってもらって誓えることで、きっと透子は女性としての幸せももっと感じることが出来たんだろうなって。
オレの友達を透子にも紹介出来たことも確かに嬉しかった。
ずっと昔から仲良くしてるヤツも多いし、実際これから透子もそいつらとも顔なじみもなってほしかったし。
だけど、あの場で透子はどこまで幸せだと感じてくれたのかは正直わからなくて。
あの場で無理してオレやオレの連れにも付き合ってくれてたんじゃないかと心配になった。
だからあの時のパーティーは、オレにとってまだまだ独占欲が止まらないのも自覚した日でもあり、透子に心から幸せだと感じてもらえたのか自信を持てなくなった日でもあった。
「私が勝手に考えすぎたのもあるかもしれないけど・・・でも樹も大袈裟だよ。樹がモテて私が不安になることはあっても、樹がそんな心配する必要全然ない」
なのにまたそんなことを言う透子。
オレが女性に言い寄られても適当にあしらえばいいし、透子以外興味ないから何の問題もないって言い切れるけど。
透子はそうじゃないでしょ?
オレにとっちゃずっと高嶺の花の存在だった人なのに、実際いつオレ以外に心惹かれて持って行かれるかって恐れているのに。
だから透子の気持ちが離れないように、オレは透子がどれだけ好きか、結婚してからも今もずっと伝え続けてる。
仕事が忙しくなって会える時間が例え少なかったとしても、透子がオレの奧さんでいてくれることで、それだけでオレは支えになってるし、独り占め出来てる幸せですべて頑張れる。
なのに透子ときたら・・・。
「透子こそ相変わらず無自覚で困る。実際オレあのパーティーでそういう感じのこと直接言われてるから。だからオレが耐えられなくて軽くしか挨拶させなかった。だけど、やっぱりオレがこんなに好きになった大切な女性だって、皆にも紹介したかった。なんか矛盾してるけど・・・」
ただ綺麗な奥さんだと褒められるだけなら良かった。
だけど、それ以上の言葉も視線も確実にオレは感じ取ったから、すぐさま透子を守った。
情けないけど、オレはまだまだ余裕なんて全然ない。
だから挨拶も必要以上にはさせなかったし、透子はオレのモノだとずっと透子をオレの隣で守りながら牽制してた。
「違う。ごめん、樹。樹はちゃんといつもこうやって気持ち伝え続けてくれてるのに、私がそれをわかってなかった。勝手に自分で樹を求めすぎてた」
だけど、透子はオレの言葉を聞いて今度はそんな風に言って来る。
その言葉だけで十分。
透子もオレをちゃんと求めてくれることがその気持ちをこうやって伝えてくれることが嬉しくて。
きっと透子はそんなオレを寂しく感じたってことだよな?
オレがこんなにも透子のこと好きなのは明らかなのに、なぜか不安になってそう感じてくれてたってことだよな?
「いいよ。透子はそのままで」
「えっ・・ ・?」
なら全然問題ない。
「オレ求めすぎるとか最高じゃん。透子の我儘なんて我儘なうちに入らないし、逆にそれはオレの喜びに繋がる」
もっとそうやってオレを求めてくれればいいのに。
オレの気持ちになぜか自信を持てなくて、透子を不安にさせるのはちょっと辛いけど。
だけど正直それだけオレのことが好きで不安になってくれているのなら嬉しすぎる。
「何それ・・・」
「もっと透子にならオレは振り回されたい。 いいよ。もっと我儘言って。オレを好きなら尚更」
透子はそんな気持ちも素直になかなか伝えようとしないから。
なぜか勝手に不安になって落ち込んで。
そんな心配まったくあるはずないのに。
どこをどう心配してそんな不安になるのかはまったくわからないけど。
でも透子の頭の中、もっともっとオレでいっぱいにしてほしい。
一人で不安になるくらいなら、どんなことも直接オレに伝えてほしい。
オレを求める我儘なんて、そんなの最高に嬉しくて幸せなだけだから、もっともっと伝えてほしい。