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「本当に強いんだ……」
水でも飲むような感覚で顔色一つ変えずに次々と飲んでいく雪之丞を見て、ナギは呆れた表情を浮かべながら溜息を零した。
暫くは楽しく、撮影の事や雪之丞の作っているゲームの事、CGの事などをつまみを食べながら他愛もない話をしていたが、次第に雪之丞の口数が減り始めた。
「ゆきりん?」
「ねぇ、蓮君と付き合い始めたって本当?」
いきなり核心を突いた質問を投げかけられぎくりと身体が強張る。だが、今更誤魔化してもいずれバレるだけだと思い、ナギはゆっくりと首を縦に振った。
「そっか。……あーぁ。蓮君は誰とも付き合わないと思ってたのに」
「……」
少し大きな独り言のように呟かれた言葉に、ナギが何も返せずにいると、雪之丞は自嘲気味に笑ってカウンターへと身体を預けた。
「……ずっと、好きだったんだけどな……。でも、言えなくって……。友達として側にいれるだけでいいって割り切ろうって思ってたんだけど……」
おつまみにと差し出されたポッキーを口に咥えながら、泣き笑いのような表情で苦し気に思いを吐露する雪之丞。その姿を見て、ナギの心臓はズキリと痛んだ。
彼が蓮の事を好きなのは知っていた。みてれば大体わかる。だけど、こんな風に本人の口から直接聞かされると複雑だし、罪悪感のようなものが込み上げてきて思わず視線を落とした。
「こんな事なら、もっと早くに思いを伝えておけばよかった……」
雪之丞はそう言うと、グラスに残っていたカクテルを飲み干し、小さく溜息を漏らすとカウンターへと突っ伏してしまった。
(悪い事しちゃったかな……)
でも、自分だって蓮の事が好きなのだ。初めて会った時から――いや、雑誌に載っていた姿を見たあの瞬間から彼の事は気になっていた。
だから、譲る気はない。でも、イマイチ蓮の気持ちが掴めない。
恐らく両思いであると思ってはいるものの、はっきりと言われたわけでは無いし、そもそも、恋愛対象として見られてるのかさえ疑問に感じる時がある。
「あらあら、暗いわねぇ。お酒はもう少し楽しそうに飲むものよ?」
「ナオミさん……。ねぇ、お兄さ……蓮さんって高校時代って、どんな感じだったの?」
ナギは、目の前に置かれたカクテルを一口含むと、思い切って尋ねてみた。すぐ隣で雪之丞がピクリと反応しゆっくりと此方に視線を向けるのがわかった。
「うーん、そうねぇ……。一言で言えば絶対君主って感じ?」
「絶対……君主?」
「あの人、あのルックスでしょ? 昔はもう少しイキっててね~。自分の事「俺」って言ってたし、眼鏡掛けてて……、物凄く冷たくって俺の言う事は絶対だ。みたいな?」
ナオミの言葉に思わず言葉を失う。今の物腰穏やかそうな彼からはとてもじゃないが想像できない。
「すっごい虐めっ子でね、ちょっと気に入らないことがあると弱みを握って、道具みたいに扱うの。力づくで屈服させて、快楽に溺れさせて飽きたらポイ。 裏表が激しいから、裏の顔を知ってるのはごく一部で女の子は皆、彼に惚れ込んでたけど……。彼、男しか興味なかったから」
「へ、へぇ……」
なんとも言えない気分になりつつ、ナオミの話に耳を傾ける。快楽に溺れさせて、飽きたらポイ……?
もしかして、今はいいけど飽きたらいつか自分も捨てられたりするのだろうか?
そんなのは嫌だ。と急に不安が押し寄せて来る。
「好きな人とか……いなかったの?」
「そうねぇ、そもそも自分以外の人間は全員見下してるような奴だったし、あぁ、でも好きな人って言えば……、一人だけいたわよ。最近までずっと片思い拗らせてた人」
その答えにナギは目を見開いた。そう言えば、初めて会ったあの日、フラれて傷心旅行中だとかなんだと言っていたような気がする。
「人の気持ちなんて考えたことがない人だから、あれこれ裏で画策して強引に手に入れようとしてたみたいだけど、結局失敗しちゃったのよねぇ」
そう言って苦笑しながらナオミは肩をすくめた。