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水ねこ
73
「えへ、オツキン、オツキン…♡」
……え。
朝一に見た光景は、天地がひっくり返ったのかと思えてしまうほど異常な光景であった。
太陽がオツキンにぎゅっと抱きついていた。
いつものとがった声ではなく、甘く熱のこもった声でオツキンの名を何度も繰り返して呼んでいる。
氷虎は目と耳両方疑った。
目眩すらした、あまりにも非日常的すぎる。
「ど、どうなっているんだオツキン、なんで太陽がお前に…」
恐る恐る聞くと、オツキンは片手で太陽を撫でながら言った。
「興味本位で惚れ薬作ってたんだよ、そしたら突然太陽が扉蹴破って現れたもんだから驚いちゃって…」
”よいしょ☆お邪魔しまああああす!!!!”
”うわああああ!!!!”
「…で、勢い余ってコイツにぶっかけちまったんだ、どうやら最初に見た奴に惚れちまう効果だったらしい」
ほんっと困るよなあ、と呆れたように言っているが、まんざらでもなさそうだ。
「いやそもそも興味本位で惚れ薬を作るな」
「ごめんって」
ため息をつき、視線を太陽へと移す。
太陽は頬をぽっと染め、ふにゃりととろけきった顔をしていた。
氷虎はいつの間にか、こく、とつばを飲み込んでいた。
太陽のあんな顔、一度も見たことがない。
脳をじんわりと、熱く、胸焼けするような甘さを含んだ感情が支配していく。
それと同時にその対象が自分ではないことに少し苛立ちを覚えた。
……何故?
不意に頭が空っぽになった。
何故俺がそこまで思う?俺はただのアイツの知り合いでしかないじゃないか、アイツが誰とどこで何をしていようと…
「半日程度で治るみたいだから、そこまで心配しなくていい」
その言葉に酷く安心感を覚えてしまったのは、気のせいだと思いたいのだが。
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