◇◇◇◇◇
マリス:「レキ!」
レキ:「ああ、わかってる。」
レキたち3人は、前方に禍々しい気配を感じて立ち止まった。
少し進むと案の定、巨大な魔物が1匹いるのが確認できた。
レキ:「早速お出ましか。見るからに亜種だな。」
マリス:「そうね。クロムジャイアントベアかしらね。」
ヤヌリス:「うむうむ、これならBランクってとこだな!
まあ、1匹だし私なら楽勝だな!」
ここ、魔なる樹海は瘴気が充満しているので、魔物はクロム種が生まれやすい。
しかも、ここの魔物も弱肉強食の摂理に従い、強者のみが生き残っているため、ほとんどの魔物はクロム種と言っても過言ではない。
たまに魔なる樹海から出てくるクロム種の魔物は、人間を襲うために街や村を襲うこともあり、破滅的な損害を被ることがある。
最低でもAランクハンターが討伐に加わらない限り、殲滅するのは難しい。
いわゆる天災は忘れた頃にやって来るの見本のようなものである。
この魔物たちは一筋縄ではいかない。
レキ:「ヤヌリス!まだお前の戦闘力を見てなかったな。こいつを殺ってくれ。」
ヤヌリス:「オーケー!やっと出番かな。
まあ、戦闘するってほどでもないと思うけど。いっちょ行ってみるか!」
ヤヌリスはそう言うと戦闘体制も取らずにクロムジャイアントベアに向かってゆっくり歩いて行った。
レキ:「おい!ヤヌリス!油断するな!」
案の定、クロムジャイアントベアは無防備に近づいてくるヤヌリスに向かって鋭く重い爪をものすごいスピードで振り下ろした。
それをヤヌリスは軽く避けただけだと思ったのだが……。
ドスーン!
ヤヌリス:「ふ。所詮はBランクだな。
レキ!終わったぞ!」
何が起こったのかわからない。
目の前には、見た目無傷のクロムジャイアントベアが口から血を吐き横たわっている。
マリス:「ふふふ。ヤヌリスは異常ね。」
レキ:「いや。何をした!?」
マリスの口ぶりからするとヤヌリスが何かをしたのは想像がつくが、一体何が起こったのかレキには全くわからなかった……。
ヤヌリス:「ん?レキには見えなかったか?」
レキ:「ああ、残念だが全く。」
ヤヌリス:「そうかそうか。私は強いからな。
この程度なら一瞬だな。」
マリス:「レキ。たぶんヤヌリスのあれはマカイクラッシュだと思うわ。」
ヤヌリス:「うん、そうそう。
まあ、この程度の魔物ならスキルを使う必要もなかったんだけどね。
最初だからちょっといいとこ見せようかなってね。ははは!」
ヤヌリスの強さは想像以上だった。
レキ:「そうだな。ヤヌリスの強さは疑いようがないな。
で、マカイクラッシュってのはどういうスキルなんだ?」
ヤヌリス:「おー。今のな。
体の内側に衝撃波を与えたんだぞ。
魔人も魔物も内臓は鍛えられないからな。
結構効くんだぞ。
こいつくらいなら一発だな。」
レキ:「なるほど。そういうスキルか。」
マリス:「レキ。ヤヌリスは魔人の中ではまだ若いから伯爵級になっているけど、実力はそれ以上だと思うわよ。」
レキ:「そうなのか。それは大当たりだな!
それに今ので俺のレベルも上がったよ。
ヤヌリス。魔皇城までの間、どんどん魔物を狩ってくれ。俺のレベルも爆上がりだな。」
ヤヌリス:「おう。私に任せなさい。
レキが魔皇になってもらわないと困るからね。」
レキは、見た目が幼女のヤヌリスがものすごく頼もしく見えてきた。見た目が幼女……。
マリスとヤヌリス。いい組み合わせだ。
そう、お互いに足りないものを補完している。ということだ。レキは納得した。
ヤヌリス:「なんだ?私の体が気になるのか?
ムラムラしてきたか?」
レキ:「いや、大丈夫だ……。」
それからも、主にヤヌリスがクロム種の魔物を狩りながらレキたちは魔皇城を目指した。
クロム種の魔物、時にはAランクの魔物を狩ることで、レキのレベルは爆上がりし続けている。
レキの場合は召喚した魔人や魔物が討伐した際に自分のレベルも上がるので、自分で討伐しないとレベルが上がらないリオのスキルよりもチートスキルかもしれない。
◇◇◇◇◇
レキ:「マリス、ヤヌリス。
あれじゃないか?」
魔なる樹海の中に一際目立つ城が見えてきた。
ヤヌリス:「おー!あれじゃない?
すごく大きいぞ!」
マリス:「そうね。300年も経っているとは思えないわね。何か結界のようなもので守られてるのかもね。」
レキ:「ああ。あれが俺たちの城になるんだな。」
それから少し行くと樹海から開けた場所に出た。そしてその全貌が明らかになった。
魔皇城と思われる城は、その周囲を大きな城壁に囲まれており、城門は閉じている。
レキ:「あそこから入るんだな。」
近づいてみると確かに城門は硬く閉ざされており、城壁には無数の傷があるものの頑強にそびえ立っている。
マリス:「なるほどね。この城壁で守られているのね。
何か特殊な強化対策が施されているみたいよ。だから、魔皇城が無傷で健在してるのね。」
レキ:「ああ。とにかく、城門に行ってみよう。」
レキたちは、城門にたどり着いた。
レキが城門を押すとすんなりと開いた。
レキ:「意外にすんなり開くんだな。」
マリス:「そうね。たぶん、魔物は入れないようになってると思うんだけど、どういう仕組みになってるのかしらね?」
ヤヌリス:「うおー。いいじゃない!これ!」
開かれた城門の内側に思わずヤヌリスが驚いた。
レキ:「確かにすごいな。
これは城門ではなくって街門ってことか?」
城門の内側には、かつて魔人が住んでいたであろう街のようなものが存在した。
この世界の街は、魔物から守るためにいずれの街も壁に囲まれている造りになっている。
いわゆる、〇〇王都と呼ばれる街は、国王が住む王城を中心に街を塀が囲んでいて、その他の領都や街や村も小さいが、同じように塀に囲まれている。
レキ:「これなら、平民魔人を召喚しても、一から街を作る必要はないな。」
マリス:「そうね。これが魔人の国になるのね。」
レキ:「よし!じゃあ、俺たちの城、魔皇城に入るとするか!」
ヤヌリス:「おー!」
マリス:「ふふふ。」
◇◇◇◇◇
レキたちは程なく、魔皇城に入った。
魔皇城の本当の城門もレキが押すとすんなりと開いた。
レキ:「これは中も広すぎてよくわからないな。
ゆっくり見て回るか。」
マリス:「ん!?ちょっと待って!
レキ!この城に誰か居るわよ!」
ヤヌリス:「おー!そうだな。
レキ!これは魔物の気配ではないぞ!」
マリスとヤヌリスはいち早く、薄い気配を感じた。
マリス:「レキ。この気配、この城の最上階辺りからじゃないかしら?」
レキ:「そうなのか?
俺にはまだ気配はわからないが……。
なぜ、この城に誰かがいるんだよ?」
マリス:「それはわからないわ。
先代魔皇は死んだはず……。」
ヤヌリス:「むー。まあ、行ってみればわかるだろ!
誰が居てもこのヤヌリス様に任せなさい!」
レキ:「ああ、頼む。
しかし、いきなりどうなってんだよ!
ディスハー様は何も言ってなかったぞ。」
マリス:「レキ。とにかく、確認しましょう。」
レキたちは、マリスの案内で気配のするところ、城の最上階に向かって行った……。
◇◇◇◇◇
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!