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◇◇◇◇◇
魔皇城が広すぎて、最上階に行くまでに相当迷って時間はかかったが、人の気配がするところまでようやく辿り着いた。
レキ:「やっと着いたな。
気配はこの扉の向こうだな。」
ここまで近づくとレキにもはっきりと気配を掴むことが出来た。
マリス:「そうね。気配は2つあるわね。
何があるのかわからないから、油断せずに行きましょう。」
ヤヌリス:「おー、戦闘になったら私に任せなさい。」
ヤヌリスは戦闘狂か?
まあ、こういう時は頼もしいな。
レキは前方のひときわ豪華な扉をゆっくりと開いた。
その部屋は最後の部屋にふさわしい豪華絢爛な造りになっており、その最奥の玉座には、レキの見覚えのある姿が座っていた。
その玉座の後方には、ヘルサイズ本部にあるものよりも巨大なディスハー像が存在感を示すように飾られていた。
リルミア:「やはり、生きてたのね。嬉しいわ。」
レキ:「なぜ、ここにいる?リルミア!」
玉座に座していたのはヘルサイズ参謀長で影の支配者リルミアだった。
俺たちより、早くここに辿り着いたってのか?
俺たちもかなりの最短距離で来たはずだが。
リルミア:「あら、会って早々それですか?
もちろん、ここは私の城ですからね。
300年も前からここに住んでるのよ。
居ても不思議じゃないでしょう?
この辺りはあなたたちより詳しいですよ。」
確かに。
そういえば、リルミアは先代魔皇の娘だったな。
半魔人だから魔なる樹海に入ることは可能なのか。
だとすれば、リルミアの横に立っているあいつはなぜここに居られる?
レキ:「なるほどな。
お前は俺が生き返ることを知ってたのか?」
リルミア:「まあ、賭けでしたけれどそうですね。
あなたの右手の甲にうっすらと魔皇の刻印を確認しましたので。
普通の人間なら気づくことすらないとは思いますがね。それはそれは興奮しましたわ。
あとは父親である先代魔皇から聞いた話からあなたはまだ覚醒していないとわかりましたから、その手順を踏む必要があるかと。
魔神ディスハー様とはお会いになられましたか?」
こいつ、そんなことまで知ってるのか。
確かに先代魔皇の話を聞いていれば知っていても不思議ではないか。
レキ:「ふん。なるほど。
じゃあ、お前の横に居るそいつは何者だ?」
リルミア:「そうですね。紹介しておきましょう。
彼女はジェノア。
私の最も信頼するパートナーで私専属の護衛ですよ。」
レキ:「なぜ、そいつはここに来られる?」
リルミア:「そうですね。
では、少し私の話をしましょう。
その前にそちらのお二人の殺気を解いていただけますか?
ジェノア。剣を納めなさい。」
ジェノア:「……はい。」
リルミアに言われて、ジェノアは戦闘体制を解いた。
レキ:「……いいだろう。
どうせ、お前とは話をする必要があったからな。
マリス、ヤヌリス。お前たちもだ。」
マリス:「わかったわ。」
ヤヌリス:「……。仕方ないわね。」
渋々ではあるが、マリスとヤヌリスも戦闘体制を解いて、レキの後ろに下がった。
レキ:「じゃあ、話を聞こうか。」
リルミア:「ええ。少し長くなりますが。
まずは、私の固有スキルのことを話します。
私のスキルは〈人魔契約〉。
あなたも一度は掛けたことがありますね。
ヘルサイズ内では呪術と言っていましたが、正確には、契約と言った方が正しいでしょう。
この契約を結んだ人間は〈人魔〉となるのです。
人魔というのは、わかりやすく言えば、人工半魔人というところでしょうかね。
あなたも経験していると思いますが、この契約後は契約前よりも戦闘力が上がったと思います。」
レキ:「ん?ああ、そういえばそうだな。」
確かに例の儀式の後に自分の動きが飛躍的に上がったのを覚えている。
ヘルサイズの一兵卒である黒兵ですら、あの強さになる秘密はそういうことか。
リルミア:「この人魔になったものは死ぬまで契約が解除されることはありません。
ですから、死ぬまで私が生殺与奪を握ることが出来るのです。
この契約をたくさん繰り返して、私はヘルサイズという組織を徐々に拡大していったのです。
今や冒険者ギルドであるハンターズとも戦える戦力を持ったのですよ。
素晴らしいでしょう?」
レキ:「……ああ。そうだな。
で、その女のことはどうなった?」
リルミア:「ジェノアですね。
この子は私が一番最初に契約した人魔です。
ただし、最初に契約したこの子だけは、他の子と違い少し特殊でしてね。
普通の人魔とは違い歳を取らなかったのですよ。
ですから、彼女も私と同じように300年は生きています。
300年もの間、私の護衛のために戦闘を繰り返しているので、この子の戦闘力は相当のものです。
今やヘルサイズ内には敵はいません。
現在の総統のガミラスより数段上と思っていただいけたら、わかりやすいでしょうか。
この子がいなかったら、私も今生きているかはわからなかったですからね。
現に300年の間、ヘルサイズ内でも私を暗殺しようとするものがいましたから。」
確かにな。
リルミアが邪魔だと思う奴もいただろうな。
しかし、このジェノアという奴はガミラスより上なのか?
それはかなり厄介だな。
リルミア:「それで、なぜジェノアがここにいるかということですが、レキは少し誤解をしているようですが、人魔となった従者はこの魔なる樹海に入ることは可能なんですよ。」
レキ:「ん?それは嘘だろう。
現に俺は以前、腕試しにこの魔なる樹海の入り口から入ろうと試みたことがある。
その時は進むことを断念した。
今でもそのことは覚えている。
禍々しい雰囲気に自我を失いかけたんだぞ。」
リルミア:「いえ、そんなことはありませんよ。
通常の人間ならこの魔なる樹海の入り口にさえ近づくことも出来ないはずでしょうから。
ただ、人魔が入れると言っても、通常の状態では無くなります。
入った途端に自我を失うものもいるでしょうね。
それだけ、ここの瘴気はものすごく濃いですから。
ただ、それは慣れれば徐々に順応していきます。」
レキ:「ほう、じゃあそいつはそれで300年かけて順応したという訳か?」
リルミア:「いえいえ、普通なら順応したとしても動ける程度で、戦闘能力などは弱体化してしまいますから。
ジェノアの場合は、私と同じように初めから入ることは出来ましたよ。
むしろ、力が漲ってくるようです。
私たちや魔人と同じように。」
レキ:「ほう。それは特殊だな。
ここでは、そいつはむしろ戦闘力が上がっているということか?」
リルミア:「ええ、そういうことですね。」
あのガミラスより数段上の戦闘力が、ここではさらに上がってるのか?
ますます、こちらとの戦力差が掴めなくなったな。マズイな。
レキ:「ああ、そいつのことは分かったが、俺がここに来た時の反応からすると、お前はここで俺を待っていたんじゃないのか?
ディスハー様とのことも知っていたしな。
だとすると、俺が生き返って次に向かう先は、ここ魔皇城だ。
お前はそれを知っていた。」
リルミア:「ふっ。……ええ、そうですよ。
レキ。
私はあなたを待っていました。
300年もね……。」
リルミアは、不敵な笑みを浮かべて、レキを見つめている。
まさに長い時間を経て、時は満ちたとでも言わんばかりに。
◇◇◇◇◇