『侑…おはようさん』
治の、寝起きの、俺だけが聞ける
甘い声が好きや。
『侑、はよせな学校遅れるで』
俺よりもちょっと大人っぽい雰囲気が好きや。
『なぁ、ツム、後でジュース奢ったるから卵焼きくれへん??、』
いや、子供っぽいところも好きや。
『もっかいやったてもええで?笑』
ゲームで俺が負けた時、ちょっとムカつくけど
俺が勝つまで付き合ってくれる治も好きや。勿論手加減なんかせぇへん。全力でやってくれる治が。
『ははっ、それおもろっw 涙でてきたわ笑』
俺がアホなこと言って、泣くほど笑ってくれる治も好きや。
『ツム、好きやで。』
愛おしそうに俺を見つめて、
優しく俺を撫でて、
キスをしてくれる治が
大好きや。
__________
〘 ピピピピッ ピピピピッ〙
『ツム、はよ起きな学校遅れんで。』
『んー………ん。』
『ツム?、 なんで泣いとんの? 』
『え??』
あ、 そか 。なぁんや
今のは、、夢か。
アホやな俺。 …………
俺に好きとか、 言うわけないやんw
『怖い夢でも見たんか、 はよ支度し。
やないと置いてくで~。』
なんで、 止まってくれへんの?
俺の涙。。。。
________________
学校
〜昼食〜
侑『んぁ、角名ぁー!!! こっちや〜』
銀『すまんっ!もう食べ始めてもた。』
角名『ん。大丈夫。 担任にちょっと雑用頼まれてて、遅くなった。』
銀『おわ〜、それは最悪やな、お疲れさん。』
角名『ありがと、銀。』
俺と銀が食べている2年2組の教室に、角名が隣からやってくるお昼の時間。このグループでおる時間、結構好きや。アイツのこと忘れることが出来る、唯一の時間やから。
『今日も治は、彼女と食べとるんか〜ええなぁ』
触れんようにしとった話題を、
あっさり出してくる銀。
窓から外を見ると、外のベンチで治が見ず知らずの女と楽しそうにお弁当を食べているのが見える。
今俺はどんな顔をしているのだろうか。。
多分……真顔。 何を考えているのかはよく分からない、けど笑ってはいないとわかる顔。サムやったら、“何不機嫌なっとうねん。“ って言ってくるぐらいの。サムじゃないとわからんぐらいの、そんな顔。
(サム。俺の前であんなふうに笑わん。。)
きっと一日の3分の2は顔を合わせている双子の片割れ。なのに、あんな表情で、愛おしそうに見つめられたことは一回もない。
目を合わせれば、俺を呆れた顔で見て、
しゃーなし みたいな感じで俺と一緒に登校する。
別に無言になって気まづいとか、
睨まれるとか、そーゆーんじゃなくて、
家族やから、双子やから一緒に居るみたいな?
それが当たり前やからそうしてるみたいな。
別に仲ええ双子やなってよォ言われるし、
距離感バグってない? と 、角名にも言われる。
けど、ちょっと意識してしまってるのは俺だけで、治は俺と双子やから一緒に居るだけなんや。
そんなん分かりきってることやのに………
何故か治と女を見てると、
何かが込み上げてきて
鼻がツンっ と痛くなり、心が苦しくなる。
呼吸をするのも忘れてしまいそうなぐらい。
それを見て見ぬフリして、
込み上げてくるものをグッとこらえて、
また友人2人の方を見る。
俺が上記のことを考えてる間に、銀と角名は
昨日戦った相手チームの分析をしていた。
このふたりと居たらやっぱ落ち着く。
俺の人生とも言えるバレーについての話はやっぱり楽しい。
そうだ。俺たちはバレーが全てなのだ。
角名と銀も高校ではバレーに集中したいから彼女は作らんって言っとった。
やのにアイツは、。
あぁぁぁ、アカン。 またアイツのこと考えてもた。
はよ、兄弟離れしな……
こんな気持ち無くさな……
バレーと結婚する勢いで居らな…
なんて、アホな事を考えてしまう。
また鼻がツンっ と痛くなる。
はぁ、 何でアイツのことでこんな悩まなあかんねん。 アホらし。
忘れよ、忘れよ。
そう思い2人の会話に足を踏み入れた。
〜部活終わり〜
治『すまん、ツム。 今日も……』
侑『わかっとるて。 彼女家まで送るんやろ。
先帰っとくから。』
治『お、おん…。』
なんか嫌や。
別にそんなん謝ることちゃうやん。
絶対に2人で一緒に登下校しよなって言ったわけちゃうし、学校も一緒、部活も一緒、家も一緒やからたまたまずっと一緒に帰ってただけやろ?
治『っ、 ツム …』
侑『ん?』
何や、こいつ……、
俺は振り向かない。 振り向いたら俺の負けだと思った。 治は何を思って俺を呼び止めたのか、
全くこいつの考えてることが理解できない。
終始無言の治。
意味わからん。
侑『何も無いんやったら、はよ彼女のとこ行ったらええやん。 じゃあな。』
自分でも思う、冷たいなって。 明らかに本心じゃないことを言っとるなって。
多分心のどっかで期待しとるんや。
これで、治がこっちに来てくれたらええなとか、
俺を優先してくれるかもとか、
治も、俺のことで頭いっぱいになってくれるかもとか。
んまぁ、そんな事はありえへんねんけどなw
その証拠に少し小走りで走ってる俺を、
追いかけてくるわけじゃない。
ただ見つめてるだけ。
どんな表情をしてるかはわからん。
けど俺が角を曲がるまで彼女の方に行くことは無かった。ただ、ずっと、俺の背中を見ているだけだった____
〘 治帰宅 〙
宮母『治おかえり〜。手洗ってご飯にし。
侑はもう食べとるで。ちょっとオカン買い忘れたもんあるから行ってくるな』
治『ただいま〜。 分かった。』
治が帰ってきた。
けど、治の方を直視することが出来ない。
何故かはわからん。
ご飯を急いで口に運び、自分の部屋に上がろうと治の横を通り過ぎようとした。
治『おい、』
『っっ!?、』
んまぁ、そぉなるわな。
俺の腕を掴んで、少し睨んだ顔でこっちを見ている。
『…なんっ、やねん。はよ、部屋行きたいんやけど 』
そぉ言う俺を無視して逃げられないように、壁まで追い詰める治。 悔しいことに、力で治にかなわんから、あっけなく壁に背中がついてしまった。
治『お前さ、 俺のこと避けとるやろ? 』
侑『そやったら、なんなん??』
治『普通に傷つくんやけど、』
侑『は??』
治は何を言ってるんだろうか。
傷つく? は?? そんなんで傷つくんやったら
俺は………
侑『何やねん!!別に俺の勝手やろ!!!
勝手に、傷ついとったらええやん!! そんなん俺に関係ないわ!!!』
そう述べ、治を突き飛ばして、自分の部屋へと向かっていく。
部屋に入れば鍵を閉め、二段ベッドの上に行くのはめんどくさかった為、下のベッドにダイブした。
治の匂いがする。
たまに、こぉやったらよかったなって思ってしまう時がある。
” もしあの女と俺が付き合っとったら、サムは俺のそばから離れんかったと思う。“
“あの女がサムに告白した時に、俺がその現場におったんやったら、サムは付き合ってなかったかもしれへん。“
もし俺が、サムのことが好きって伝えれてたら、俺らは付き合っとったんちゃうかなーって、、
考えてしまうんや。
もしあの女がめっちゃ性格悪くて、
治と釣り合わへん女やったら、
サムは俺のところに戻ってきてくれるんちゃうかなって。
俺の思ってる好きじゃなくても、『好きな人は?』って聞かれた時に、
一番に出てくる名前が俺やったらなって。
もっと俺が素直になれてたら、今日見た夢みたいな、日常が送れてたんちゃうかなって。
普通に片割れの恋愛を応援できてたら、こんなに心が苦しくなくて、涙も出てこんかったのになって。
サムがもっと俺に冷たくて、俺が離れていっても傷つかへんって言うんやったら、この胸のトゲトゲは、なくなったんちゃうかなーって。
いっそのこと全部終わりにしたら、一番楽になるんちゃうかって。
考えてまう。 ずっと。 アイツが頭から離れることは絶対ない。
-——-キリトリ線——–
俺の気持ちが恋ってことに気づいたのは、きっと中学ん時。
バレー一筋で、周りのこと何も見えとらんくて、周りのヤツらにめっちゃ嫌われとる俺を、1人構ってくれた治。
なぁ、覚えとるか、サム。
“なんでお前はいっつもこっち来るん?
サムは、皆から好かれとるやん。 “
俺が一人でいると、絶対に来てくれる治。
全然1人でも大丈夫〜
みたいな顔はしとったけど、所詮人間やし、
寂しいか寂しくないかで言ったらそりゃ寂しいわ…。
けどそんなん知らん奴らは『アイツ1人でも大丈夫やねんて、心ないんちゃう?w』 とか、
『偉そうやから、一人んなって当たり前や』とか
『侑ってええとこバレー上手いとこぐらいよなぁ』なんて言うてくる。 んまぁ、ポンコツな奴らに何言われても悔しないけど。
治は俺ん事をわかってくれとった。
“ツムが一人で寂しそうにおんの、見てるだけで辛いねん。” なんて、サラッと言ってきた。
サムは俺が双子の片割れやからっちゅうことで構ってただけなんかもしれんけど。
そんときから俺はお前が______
-——-キリトリ線——–
いつの間にか寝てしまっていた。
治の枕を涙でびしょびしょにして。
いつもならご飯も食べ終わって、治の方が食べ終わんの早いから先に風呂入って、その後に俺が風呂入って、 治に髪を乾かしてもらってる時間だ。
『さっき、言いすぎたかな…』
ふと、さっきの会話を思い出す。
サムは俺が、離れるのが嫌ってことなんかな?、
そんな自分のいいように解釈をし、部屋を出ようとした。
しかし、双子というもんは凄いもんで、
この1枚のドアの向こう、治がいることが分かる。いや、絶対に居る。
そう思った瞬間向こう側から声が聞こえた。
『ツム、開けてぇや。 すまん、。 さっき。、
けど、嘘では無い。 、から。』
それ以上は声が出ないと言う感じだった。
ホントに治はずるいと思う。
俺がどんな事を言っても対処できるように保証をつけるんだ。 俺の気持ちを全部ぶつけようと思い、 ドアノブに手をかけた、が やめた。
流石にこの泣きじゃくった顔で治に会いたくない。
もしこの顔で治にあって、
罵ってくるならまだしも。
心配とか、同情とかされたらホンマつらいし、
きっと理由もなく涙が出てくる。
しばらくドアの前で止まっていたら、下からオカンが治を呼ぶ声が聞こえた。 その声とともに治は下へ降りっていった。 その隙にと部屋の鍵を開け、電気を消し 完全に寝るモードに入った。
流石に治の枕は涙でびしょびしょだったので、俺のと取り替え、ベッドの上段へと上がる。
枕の硬さも、布団の分厚さも、洗濯する時も
全ておなじの筈なのに、何故か治の布団の方が寝やすいと思ってしまうのは昔から変わらない。
“サムの布団の方が寝やすいんやもん“ っていうて
俺が下のベッドに入ると、
“お前が上が良いって言ったんやろがい“
と、腕をくんで見下ろしてくる。
“んじゃぁ、一緒に下で寝よっ“
っていうたら
暑いし、ツム寝相悪いから嫌や、
と俺のベッドでねる。そんな当たり前の事でも”拒否られた”。と考えてしまうのは、もう重症でしかない。
しばらく自分の布団に居ると、治が階段を上がってくる音が響いた。そして部屋の前で足音が消え、それと同時ににガチャッとドアが開く。
俺は布団を頭まで被り顔を合わせないようにした。
まぁここでドラマや漫画みたいに何かおきるわけでもなく、 2段ベッドの下段に入っていく音だけが聞こえ、その後1回も口を開くことはなかったのだ_________
明日からどう接したら良いのだろう……
普通に話せるだろうか、、
そんな不安を抱えながら
明日 日番だ と言うことを思い出し、少し不安がやわらぎ、いつの間にか夢の中へと吸い込まれていった______
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭.
コメント
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めっちゃ読みやすかった