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「おいおい、なんであいつらが居るんだよ」
「面倒くさいけど、パフェ食べたいから静かにやり過ごそうか」
俺達は目的地に着いたが、そこで思わぬ人物に遭遇した。つい先日、トラブルのあった大塚さんと町田ガールズ達だ。
「お客様、2名様ですね。ご案内致します」
店員さんの案内で席へと向かう。
人気の店というだけあって、残りひと席だけだった。
空いてたのはいいのだが、何故この席なんだ。
俺達が案内されたのは、大塚さん達の横の席だった。
思わずため息が出たが、気を取り直しいつも通りの手筈で行くことにする。
俺は何故だか、髪を整えるだけで誰も気付かないのだ。香織はそれでいいと言うのだが、俺としてはクラスメイトにも気付かれないのは少し寂しい。
さらに、気付かれないのをいいことに、香織は俺の事を聞かれたとき、いつも彼氏だと紹介し、名前も適当に呼ばれている。
パフェを注文し、なるべく気配を消して居たのだが、周りがざわついている気がする。
『ねぇ、あの人芸能人かな?』
『一緒にいる女の人も綺麗ね』
『美男美女カップルは目の保養になるわ』
そんな声がチラホラと聞こえてくる。
さらに、隣の席もどうやら香織に気が付いたようだ。
「ねぇ、隣の席。西城さんじゃない?」
「あっ、本当だ。一緒に居るひとすっごいイケメンじゃない!?」
「ちょっと聞いてみようよ」
ヤバいな、完全に気付かれたぞ。頼むからこっちに突っかかってくんなよ?
しかし、俺のそんな願いは聞き届けられることはなかった。
「こんにちは、西城さん。こんなとこで会うなんて奇遇だね」
「こんにちは、南みなみさん、鳥居とりいさん。そして、大塚さん」
香織が返事をすると、南さん、鳥居さんとは違い大塚さんはピクッと反応する。なんだか2人の後ろに、龍と虎の姿が見えるような・・・。気のせいか。
「こんにちは、西城さん。隣の人はお友達?」
大塚さんの目つきがいつにも増して厳しいような気がする。頼むぞ、香織。変なこと言うなよ?
「お友達・・・。いいえ、私の彼氏ですよ大塚さん。かっこいいでしょ?」
すんごいドヤ顔でそう言い放つ香織と、より一層機嫌が悪くなる大塚さん。なんだかヤバい雰囲気になってきたぞ。
「へぇ、彼氏・・・ね」
ふーん、と言いながら大塚さんが俺に近づいてくる。
「本当に付き合ってんの、齋藤?」
「へっ?」
い、今、齋藤って言いませんでした?
あのー、バレてるんじゃないでしょうか、香織さん。
「あっ、パフェがきた。大塚さんごめんね。パフェが来たからまた後でお話ししましょ?・・・色々と」
「そう、それじゃしょうがないわね。また後で聞かせてね。色々と」
良くわからないが、パフェに救われる形になった。
危なかった。サンキュー香織。
その後、パフェを食べた俺達は、最後の目的地へと向かった。今日こそは、俺の気持ちを伝えるんだ。俺は密かに決心を固め、目的地へと向かった。
ーーーーーーーーーー
「へぇ、海かぁ。久しぶりに来たね」
「そうだな」
少しベタだと思ったが、告白の場所に選んだのは、電車で1時間圏内の海辺だ。昔から何かあるとここによく来ていた。
そして、今回も俺にとって特別なとき。
しかし、人生初めての告白。今までずっと一緒に過ごして来た幼馴染へ、俺の特別な存在になって欲しいと願うことは、今までの関係には戻れない事を意味している。
それがどうしても怖かった。
もしものことばかり考えてしまう。
「なぁ、香織」
「なに、ハルくん」
俺は意を決して、香織に向き直る。
「香織、俺と・・・」
続く言葉が出てこない。
だが、香織は俺から目を離さず真剣な表情。
その顔を見た瞬間、胸のつかえはとれ、すっと言葉が紡がれた。
「俺と、付き合ってくれ」
「うん、もちろん」
「答えはすぐじゃなくてもいいから・・・」
・・・。
「えっ、今なんて?」
「だから」
そう言って、香織は俺に近づき、そっとそっと唇を重ねた。人生初めての告白。初めてのキス。頭が真っ白になった。
「全くもう。何年待たせる気なのよハルくんは」
頬を赤く染め、イタズラっぽく言う彼女は本当に綺麗だった。そして、その彼氏になれた事を喜んだ。
「ごめん、ごめん。お待たせ」
「本当に」
俺達の関係は、幼馴染のから、恋人へと変わった。
だからといって、なにかが変わるわけではなく、いつも通り一緒に居ることだろう。
「そういえば、ハルくんは何人くらい奥さんもらう気なの?」
「えっ?俺は香織がいればそれだけで」
香織はおそらく一夫多妻に抵抗感があるはずだ、今までの言動から言ってそれは明白。この話をするということは、他の女性に振り向くなということだろうか?
「別に何人でもいいんだけどさ。増やす時は相談してよね」
「相談もなにも、増えないと思うぞ?」
「ううん、すぐに増えるよ。・・・大塚さんだったら許してあげてもいいんだけどね」
「ごめん、後半聴こえなかった。なんだって?」
「なんでもない。帰ろうか彼氏くん」
この時は、自分がモテると思っていない俺は、香織の心配は杞憂だと思っていた。しかし、俺の生活を一変する出来事が待ち受けているとは、思ってもみなかった。