学校へ向かういつもの道。
決して何かが変わったわけではないが、彼女が出来たというだけで見えていた景色が変わる。
昔、何かの本で読んだことがあったけど、まさか本当の話だったとは。馬鹿にできないぜ。
「ハルくん」
「ん?どうした」
「ううん、なんでもない」
そういうと、ニコニコとしながら前を向いて再び歩き出す香織。あぁ、いつみても可愛い俺の彼女。幸せを噛みしめながら登校する。
学校に着くと、なんだか色んな人に見られている気がする。
俺たちが二人で登校するなんて、毎日のことだ。それこそ、一年以上続けている恒例行事。今更騒ぐことではない。他に変わったことは・・・。
そんなことを考えていると、前のほうからすごい勢いでこちらに近づいてくる人物がいる。
「おはよう、西城さん、齋藤くん。2人とも、ちょっといい」
あいさつも程々に、またしても大塚さんに拉致られる俺、いや俺たちか。今回は、校舎裏ではなく屋上だった。てか、屋上って入れるんだ。良いとこ見つけたな。
「西城さん、ツイッターやってたっけ?」
「やってるよ、大塚さん。それがどうしたの?」
香織がツイッターをやっているのは俺も知っている。前に勧められたが、俺はやっていない。面倒くさいし、誰も俺のことを知りたがらないだろう。
「じゃあ、この状況は理解してるってことか」
「もちろん」
え、何の話?
もしかしてツイッターやれば理由がわかるのかな?
「それならいいけど、齋藤は・・・知らなそうだね」
「ハルくんは知らなくていいの」
「らしいよ」
とりあえず香織のいう通りにしておこう。
その後、俺たちはすぐに解放され、いつも通りの日常に戻った。
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今日も無事に終わり、放課後となった。
なんと、今日の放課後は一人なのである。珍しいこともある。
香織は用事があるらしく先に帰宅した。最後まで帰りたくなさそうだったが、親の車に乗せられドナドナされていった。
さて、かなり久しぶりの一人時間だ。有効に使おう。
そうだ、ショッピングモールに行って何か買うか。服とか雑貨とか色々揃えたいしな。
俺はさっそくショッピングモールに向かった。
そして、俺が一番最初に向かったのは、トイレである。
陰キャの俺が一人でいていいことは皆無だ。であれば、俺であると気づかれなければいいのだ。俺は、トイレへ行くと髪を整えた。正直これで変装になるのか疑わしいのだが、香織以外は誰も気づかないところを見ると完璧なのだろう。
変装を終えると早速、洋服を買いに行くことにした。
しかし・・・。
これは、まずいぞ。
何を買っていいか、全然わからねぇ。
いつもは香織が選んでくれていたから、うっかりしていた。
困り果てている俺に、救いの手が差し伸べられた。
「き、君!ちょっと時間いい!?」
「ん?俺ですか?」
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私の名前は安藤恵美あんどう めぐみ、大手ファッション会社に勤めている。
今日は、このショッピングモールでファッション誌の撮影をする予定だったのだが、なんとモデルの男性がまだ来ていないのだ。
あの人、顔は良いんだけどあんまり良い噂聞かないのよねぇ。
仕事の遅刻は当たりまえ、私生活でも女にだらしないとか。はぁ、早く来ないかしら。
開始予定を1時間過ぎても、彼はやってこなかった。
「ねぇ、あいつとは連絡とれたの!?」
「すいません、留守電で繋がりません」
ったく、もう!!
どうすんのよ、撮影。今日の相手は大口なのよ?早く来なさいよぉぉぉぉぉぉ。私は辺りをキョロキョロと見渡した。
すると、ちょうど今日の撮影で使用する、ブランド店で買い物中の若者を発見した。
なかなか良いわね。背も高いし、スタイルもめっちゃ良い。これで顔がよければ代役頼みたいくらいなんだけどなぁ。
おっ、振り返る。
えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
めっっっっっっちゃイケメン発見!!
「き、君!ちょっと時間いい!?」
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「ん?俺ですか?」
振り向くと、そこには凄い笑顔で息を切らせた女性がいた。やべぇ奴に捕まってしまった。
「君は高校生?今日は一人?時間はある?彼女いるの????」
「ちょちょちょ、ちょっと待って下さい」
「もし時間あれば協力してくれないかしら?」
「協力?」
俺は、返事をする間もなく女性に連れていかれた。特に説明されることなく、どんどんことは進んでいき、今カメラの前にいた。
「なんでカメラ。てかこの服なに?」
「ちょっとそこに立っててくれればいいからね!」
その後、よくわからないが服をプレゼントしてくれるとのことなので、言われるままポーズをとることにした。一体これは何をやっているのだろうか。
ここのスタッフ?の人たちは女性ばかりで、みんな息が荒く怖かった。恐怖に苛まれながら、この状況は1時間程度続いた。
「いやー、今日は助かったよー晴翔君!」
はいこれ、お礼だよと言いながら今日着ていた服を大量にもらった。
お金の出費も抑えられたし、無事選ぶことができてよかった。
「すいません、こんなに頂いてしまって」
「いいのよ。今日は急だったからお金が渡せなくてごめんね。もしよかったらうちでバイトしない?」
「いえ、ちょうど服欲しかったんで。えっと、バイトですか?」
「そうそう、これ私の名刺ね。あと連絡先交換してもいいかな?」
名刺をもらった後、安藤さんと連絡先を交換した。俺にモデルが務まるのか心配だったが、スタッフ達から太鼓判を押され渋々了承した。
「それじゃ、また連絡するね晴翔くん。あ、ちなみに今日の雑誌は後で届けに行くからね」
「わかりました」
特に雑誌に興味はなかったが、報酬が良さそうだったので次のバイトを待つことにした俺は、大量の荷物を抱えて、自宅へと向かった。
一方そのころ。
「安藤さん、あの子イケメンでしたね!」
「早く次の撮影呼びましょうよ!」
「まぁまぁ、少し落ち着いて。すぐに会えるわよ」
今時ツイッターをやってない高校生がいるとは思わなかったけど、やり方教えたからきっとアカウント作ってくれるだろう。そしたら早速フォローしないと。
この後、俺はツイッターのアカウントを作るのだが、作るまでに1時間以上かかったとか、かからなかったとか。まじ大変だった。
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