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――人間全員が…もう…始まって…はっ。
目が覚めた。まだ薄暗い早朝、2課のソファ。
いつぶりだろうか…夢を見た。
浮条がずっと声をかける夢…
「俺…寝てた…?」
嫌な夢から目を覚ました。
きょろきょろと辺りを見る。ディアさんがすぅすぅと寝息を立てて眠っている。ただ、目の前の低いテーブルにひとつ、様々な字で書いた置き手紙があった。
暗い中目をこすって読む。
――翠へ。今日はお疲れ様。どうにか起こしてみようとしたけど、お前が疲れてるようだったからそっとしておく。ディアさんも寝ているからな。
君、やっぱり彼が言ったことを根に持っているんだろう。俺たちがいる間ずっと唸っていた。
でもね、大丈夫。私たちはあなたたちを見捨てたりしない。必ず、彼を討伐して見せる。
きみたちは元はといえばぼくたちにさそわれて2かに入ったんだから、ぼくたちもきみたちも同じだ。ひとりで考えこまないで。
にかのみんなより――
手紙をそっとテーブルに置いた。整った字、ほんの少し右上がりの字、少しくしゃっとなっている字。
そして窓の方へ行く。
南側の小さい窓でそれほど階も上ではなかったが、せかせかとしていた昼よりも雰囲気がいい。綺麗に見える。
しばらく無心で見つめていると、ビルの隙間から朝日が昇ってきたのが見えた。
その光を見て安心した俺は自分のデスクに行って書類の片付けをしようと思った。あれ、まぶたが重い…
ーーーー
「おはよう翠ー、ディアさん。あれ?」
軽快な声でそう言いドアを開けたのは風樹である。
…どちらも寝ている。
「やっぱり疲れたよね」
「おはよう…ありゃ、まだ寝てるか…」
「そうみたい…」
ウィローと幽も入ってくる。
彼らは静かに入れば、すぐさま仕事に取り掛かった。昨日の天界災の報告がまだだったこともある。
ーーーー
それから少しして、俺は目を覚ました。
「俺…また寝て…」
「おはよう翠。昨日は疲れたよね。」
風樹が声をかける。
それと同時にガサッと動いてディアさんも起きたようだ。
「うーん…まだ…」
半分寝ぼけていた。
ーーーー
それから身支度を済ませて、俺らは仕事へ取り掛かろうとしたが…
1件の連絡が入った。
「バルドさんだ」
ウィローさんがとる。
「はい、いますよ…はい、…星霜さんが?…ほう…わかりました、こちらは支障ないと思いますので…彼らを連れていきますね…はい、失礼します…」
くるりと連絡を受けた彼は振り返って言う。
「今日はまた研究院に行くぞ。翠、ディアさん。」
「「?」」
ーーーー
流されるように車に載せられ研究院に連れていかれる。
「あ、あの…何を…」
「そのままさ。今日は異形化研究の先生が君たちに会いたいって。」
「先生…」
なんか怖そう…とか思っている。
「多分彼、バルドさんと同じくらい君に興味を持ってるらしいから覚悟した方がいいかも…」
「えっ」
この車には幽とウィローと俺たちが乗っている。風樹は留守番だ。
その時、すっと何かを渡された。
「これ、君たちの名札…これ首からかけて受付の人に見せたらすぐ手配してくれるよ…」
「2課と研究院の異形化研究員は関係が深いからね、俺達は歓迎されてるんだ」
と言った。
「うぉぉ、名札だあ!」
なんとも言えないが、他の人に比べて名札の情報量が少ない…
すると小声で、
「これ、ごめんけどまだ非公式なんだ。上の人に言うと何言い出すかわかんないから…」
「そうか…」「そうですよね」
ーーーー
着いた。今日は朝早い。ちょうど8時半になるとこだった。
なんだか館内は暗そうだったが入ってみるとドアが開いて入ることが出来た。
受付の人に話しかける。
「あの…2課の」
「ああ、あの。どうぞ、207にいますよ。」
理解が早い!!すごい受付の人!!
とか思っているとディアさんに引っぱたかれた。
「お前…」
ボケっとすんな!って言われそうだったので反射的にすいませんと言って歩き出した。
肝心の決めゼリフをいえなくてディアさんはムスッとしている。
ーーーー
207、207…
1度しか来たこと無かったのに研究室前につけた。不思議だ…
3回ノックする。
「はい?」
ドアの向こうから声がした。少し若い男性の声…
「僕たち2課の…」
と名乗ると、奥からゴソゴソと音が聞こえた。なんならガンガンと金属の音もする。
「ちょっ、もう来たの?!嘘でしょ…あ、ちょっと待って」
どちらも埋もれたような声である。えなんか大丈夫か?
「よいしょ…」
ゴソゴソ音が止んできた。そろそろかな…
「いいよ!入っておいで」
ガチャ。
恐る恐るドアを開けて入る
「失礼します」
「やあ。君たちが例の…」
明るい口調に少しかすれ気味の低い声。
先生、と言うには少し見た目が幼く、どちらかと言えば青年の方があっている。
艶のある白い髪に琥珀のように輝く瞳。部屋こそは散らかっているが服装は整っていて清潔感がある。
「僕は星霜って言うんだ。君たちのことはもうバルドから聞いてるから。2課に入ったばかりでごめんけど、僕も色々聞きたいし教えたくてね。」
「僕は2号棟の研究員長なんだ。2号棟は2から始まる部屋番の事だよ。」
ほんの少しまつ毛が伸びている。少し目を伏せて喋っている…
「研究員長だから、僕よく先生って言われるんだけど…ただここにいる期間が長いだけだから。」
「どれくらいいるんだ。」
ディアさんが聞く。やっぱり聞くと思ったか、とでも言うような顔をして星霜は答える。
「今年で153年かな…」
空を仰いで指折り数える。え、153?
「えっ?!」
「まあいいから座りなよ。ちょっとちらかってるけど…」
突っ立ったまま話している。
「ありがとうございます…」
恐る恐る座った。0歳からいたとしても153歳だぞ…?
「はは、やっぱりみんな驚くよね。うん…僕は長生きだから。僕は仮死してるんだ。」
「仮死?」
「うん…僕の天命と死って真逆の存在だからね、僕一生死ねないんだ。不幸だよね…」
天命?
「その…テンメイってなんだ?」
「天命っていうのは生まれた時から自分に宿っている潜在能力の事。人間には1人ひとつあるよ。」
「君たち、開眼のことは聞いたかな。」
開眼…ああウィローさんが言ってたことだ。
「はい。」「ある。」
「うん…天命は第3開眼者のうちからしか発揮できないんだ。天命は血筋関係で少しよることがあるんだ。」
そう話して、あっと言う顔をした。
「ごめんごめん、話しすぎちゃったね。今日は研究とか言ったけど、普通に暇つぶしの相手になって欲しくてさ」
暇つぶし?はあ?
「おい、なんだよそれ!」
「僕はサボり癖がある。さっきも言ったでしょ、僕は長生きだから。こんな長い余生、暇つぶしてなきゃやっていけない日だってある。」
研究員って難癖あるなみんな。まだ2人しか会ってないけど。
彼は俺たちを置いて「何しよっかなー」と部屋の隅にあるダンボールの塊を蹴っている。なんかキレてるみたいで怖い。
暇つぶし…
またあんな実験中の奇襲とかあったら無理…もしかして実験の手伝いとか…?ここは実験から離れて資料の…とか考えていると、
「そうだ!散歩をしよう。」
と言う。
え、散歩?
想像の斜め上を行かれて俺たちは唖然とした…
これ以上書くつもりでしたが1話長すぎて収まらなかったので歯切れ悪い終わり方ですいません。
出てきたキャラ・キーワード
星霜
穏やかで優しい性格。長年の研究により少し頭のネジが外れている部分がある。
天命
人間が生まれ、その時に授かる潜在能力。第3開眼とともに発揮でき、天界人の討伐に役立っている。