茂庭さん達3年生がいなくなって初試合。負けた。頑張っていた。全力を出した。でも無理だった。その時茂庭さんは言った。
茂庭 『頑張れ。今よりもっとだ。』
その言葉が別に今は頑張っていないっていうつもりで言ってないっていう事は分かってた。けど、負けた悔しさのせいか、自分に追い討ちをかけた。
茂庭さん…俺ね、頑張ってたんすよ?まだ頑張れっていうんですか?もう限界…
負けてしまっても普通に部活はある。みんなもしっかり切り替えて、練習に勤しんでいた。
俺も、前よりもっと頑張らなくては。と今まで以上に頑張った。もうあの言葉が呪いのようだ。ずっと頭で繰り返される。でもやるんだ。やらなきゃ。毎日夜遅くまで、練習メニューの確認・自主練・筋トレなど今自分ができる精一杯をやった。しかし、寝るとあの言葉が繰り返される。寝てもすぐ起きて、泣いてる。次第には寝る事がとてつもなく怖くなった。
茂庭さん…今の俺は頑張ってますか?
ある日、いつものように練習メニューや自主練をしていたら、朝だった。睡眠を取らないのはまずいと思ったが、朝練の時間が迫っていたし、主将は部室の鍵を開けなければならないので、主将になってからは行くのが早くなり、もう出なければならない。仕方ないと準備をしていこうと思ったら、目眩がした。それに加えて少し頭痛がする。やっぱり少しは寝なきゃダメか。と後悔した。
部室に行くと、同級生の連中が何人かいた。
小原 「おーっす二口!」
女川 「練習しよーぜ」
青根 「コク」
二口 「お前ら早いな。」
小原 「何言ってんだよ。いつもこれくらいだぞ?」
女川 「お前がいつもよりおせーの!寝坊か?」
時間を見ると、確かにいつもより遅かった。登校中やっぱり眩暈と頭痛がして休憩しながらきたもんな…
二口 「まぁそんなとこ」
と部室の鍵を開け入ろうとした時ぐいっと引っ張られた。
二口 「?青根」
青根 「二口…顔色悪い」
二口 「!何言ってんだよ?元気だから大丈夫」
と言って誤魔化した。青根はよかったと言っていたが、朝練中ずっと視線を感じた。
時間が経つにつれて治るどころかだんだん酷くなってきた。クラスメートに保健室に行けと言われたが、主将の俺がたかが体調不良で休む訳にはいかないし、保健室に行ったら帰れと言われそうでやめた。なんとか持ち堪え、午後の練習に向かう途中、
「あれ?二口?」
と声を掛けられた。振り返らなくてもわかる。俺が信頼してやまない人。俺に呪いをかけた…人物。
二口 「茂庭さん…」
茂庭 「顔色悪いよ?大丈夫?」
二口 「大丈夫です…ほっといてください…‼︎」
というと無意識に走り出してしまった。後ろから
「あっ…!おい‼︎」
という声が聞こえたが止まれず、気づけば、人通りが少ない非常階段まで来ていた。こっから部室に行くのに、どれだけ急いでも間に合わない。青根に連絡しようと携帯を持ったら、一つ思い出した。今日は体育館の点検で部活が休みだったのだ。助かったと思い、ホッとした。だって練習に遅刻する主将なんていない。
二口 「っ…!」
さっき無理して走ったせいか、頭痛が酷くなり、眩暈もして、立っている事が困難になり座った。
今自分が惨めでたまらない。頑張れと言って、いっぱい世話を掛けて、怒ってくれた先輩に声を荒げ怒鳴ってしまった。終いには、心配してくれたのに、走ってしまったのだ。
二口 (茂庭さん怒ってるかな?俺なんかに主将を任せた事後悔しちゃったかな…)
と思うと目尻が熱くなり止めようにも止まらない涙が溢れてきた。
二口 (俺、主将なのに…泣いてる暇なんてないのに…もっと練習していかないと…いけないのに)
茂庭 「やっと見つけた…はぁはぁ」
二口 「?!」
二口 「な…んで」
茂庭 「なんで泣いてんの…お前の様子おかしかったから追いかけてきたんだけど、お前足早すぎ…」
はぁと一呼吸置くと真剣な目で
茂庭 「体調悪いだろ。なんで無理した」
二口 「だって頑張らないと…もう茂庭さん達をがっかりさせたくない…から…」
茂庭 「俺二口のがっかりしたことなんてないよ?」
二口 「ッ…だってこの前の試合もっと頑張れって…!俺頑張ってたのに‼︎まだ頑張れっていうんですか…‼︎」
茂庭 「ごめん。そこまで抱えてるって思わなかった。でも俺は二口が頑張っていないから言ったんじゃない。二口が頑張っているのは知ってる。だからこそ二口を主将に選んだ訳だし!」
なんだ。俺頑張ってるって思われていたのか。
茂庭 「二口今日は顔色悪いから帰ろ?」
二口 「はい…」
心がふと軽くなる。この人はほんとすごい。たった一言で安心する。
ありがとう。おれはこんな人になりたい。こんな主将になりたいそんな思いを胸に新しいステージの開幕だ。
コメント
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なんでこんなにいい物語が作れるのぉー!神作品だよぉ!