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視点🐼
翌日。
俺は昨日瑠久にこっぴどく怒られたにも関わらず、一人で第四区画大病院のエントランスホールに立っていた。
今度はちゃんとお見舞いらしく、色とりどりの小ぶりな花束を手にしている。
あの重苦しい緊張感は変わらない。
俺は昨日と同じように無表情の案内窓口を通り過ぎ、重症患者エリアのエレベーターに乗った。
特別管理室の前で、俺は深呼吸をした。そして、昨日と同じように、勝手に二重扉のロックを解除して中へ入る。
ベッドに座っていた彼は、俺の姿を見るなり、深いため息をついた。
「……あんた、また来たのか。学習能力がないのか?」
彼の顔は呆れ果てていたが、昨日ほどの明確な拒絶の響きは薄れていた。
「昨日はいきなりごめん。これ、お見舞いに!」
俺はぎこちなく花束を差し出した。彼は怪訝そうにそれを見つめる。
「花……?こんなとこに持ってきても、どうせ枯れるだけだ」
「それでも、何もないよりはいいだろ…」
俺は言い返す。
しばらく花と俺を交互に見た後、勝手にしろと呟き、俺が置こうとしたベッドサイドの抑制装置の隙間に、渋々花束を置くことを許した。
「……で、用は?」
「いや、特に。ただ、お見舞いに来ただけで…」
「嘘つけ。昨日今日でお見舞いに来るやつがいるか。名前も知らないで」
俺たちは他愛のない、というには重すぎる会話を少しだけ交わし、すぐに退室した。
監視されている可能性を考慮して、長居はしないようにしよう。
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次の日も、また次の日も、俺は(たまに瑠久を巻き込みながら)彼の病室を訪れた。
花の数は日を追うごとに増え、殺風景で機械に囲まれていた病室は、いつの間にか鮮やかな花々に彩られた、華やかな空間に変わっていった。
彼は最初こそ「迷惑だ、勝手にしろ」という態度だったが、俺が持っていく花の種類や、空を見に行く仲間探し、瑠久が話すゲームの話などに少しずつ耳を傾けるようになった。
彼の警戒心は緩み、瞳の奥にあった拒絶の色は、次第に好奇心と、そして諦めに似た穏やかさに変わっていった。
「なぁ。なんで俺なんかに構うの?」
「なんでって……まだ名前が聞けてないから?」
「なんだよそれ(笑)」
微笑みながら花をいじる彼は口を開き、
「俺は翡翠玲央。お前は?」
「お、俺は中村祐希!」
ふわりと涼しい風が入って病室に花弁が舞った。
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そして、季節が変わり始めるある日のこと。
俺と瑠久が持ってきた、真っ白なフリージアの花束を玲央が受け取った時、彼は静かに口を開いた。
「……Broooockが、nakamuについていった理由、わかった気がする」
俺と瑠久は顔を見合わせた。
「この部屋は、俺を隔離するためのものだ。魔力暴走のリスクがあるから。ここにいれば、誰も傷つけない。だけど……あんた達が毎日来るようになって、外の世界の匂いが部屋中に染み付いてる。」
彼は静かに、ベッドから足を下ろした。
その動作は、彼にとって何かの儀式のように、重々しいものだった。
抑制装置のコードが、彼の足元でわずかに揺れた。
「俺は、欠陥品なんかじゃない。魔力暴走の危険があるなら、それを制御する方法を見つける。一生、この部屋で大人しくなんて、してやらない」
玲央はまっすぐ俺の目を見た。
その瞳は、初めて会った時のような警戒の色は微塵もなく、強い意志に満ちていた。
「俺も行く。あんた達の、仲間になってやる」
それは、誰かに言わされた言葉ではなく、彼自身の、初めての決断の言葉だった。
「わかった」
俺は短く答えた。
瑠久は感動したように目を潤ませている。
「じゃあ、準備はいい?」
「ああ。いつでも」
その日の深夜、俺たちは再び病院に潜り込んだ。
玲央は自力で抑制装置の接続を外し、病院の白い患者服のまま、俺たちと特別管理室の二重扉を後にした
彼は、花で溢れた病室を一度だけ振り返った。
「よし、今のうちだ!急ごう!」
瑠久がナビゲートし、俺と玲央は彼の背中を追う。
監視カメラを避け、厳重なロックをいくつか解除しながら、俺たちは静かに病院を抜け出した。
真夜中の冷たい空気と、アスファルトの匂い。初めての自由な呼吸に、玲央は目を細めた。
「これが……外、か」
「ああ。これが、あんたが一生隔離されずに済む、俺たちの日常だ」
その夜、玲央は瑠久の家に連れて行かれ、空いている客間に居候することが決まった。
特別管理室の記録は「異常なし」のまま更新された。
それが、どれほど致命的な誤りかを、誰もまだ知らなかった。
翌朝。
「玲央!渾名決めよう!」
「渾名ぁ?じゃぁ……サメ、シャーク?うぅん…」
「シャークんでいいや。」
「そんな簡単に決めちゃっていいの(汗)?」
「いいんだよこんなんで」
そう言って笑う玲央は病室にいた頃とは比べ物にならないくらい幸せそうだった。
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名前 翡翠 玲央(ひすい れお)
年齢 13歳(19歳)
ポジション アタッカー
武器 短剣
魔法 風
身長 163cm