テラーノベル
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昼過ぎのリビングは、相変わらず騒がしかった。
じゃぱぱとたっつんがソファを占領してゲームをしていて、
負けるたびにそれを見ているどぬくやなおきりが大げさに転がる。
のあやひろもその横でゲームを眺めていて、
もふとシヴァはキッチンで何やらわちゃわちゃと揉めていた。
本当に、いつも通りの光景。
その中で——
えととうりはまた自然に同じ空間にいた。
特別話しているわけじゃない。
触れてもいない。
けれど、笑い方とか、
視線を向ける癖とか、
「一緒にいる時間が長い二人」特有の空気が、確かにあった。
うりはそれを当たり前だと思っていたし、
えとも疑問に思ったことはなかった。
でも
その“当たり前”を、
ゆあんは一番近くで見てしまっていた。
ゆあんside
えとが笑う。
うりがそれに反応する。
えとが何かを言う前に、
うりが先に動く。
息合いすぎじゃない?
ゆあんは無意識に
自分と比べてしまう。
自分も仲はいい。
距離も近い。
冗談も言う。
でも、でもやっぱり
あの自然さだけは、どうしても真似できない。
どれだけ頑張っても、
あそこには入れない気がした。
喉が詰まる。
胸が苦しい。
それを悟られないように、えとさんと話したくて、 ゆあんはいつもより明るく振る舞った。
「えとさん見てこれやばくない?」
「なにそれ?」
「絶対こういうの好きでしょ」
えとは笑って画面を覗く。
その距離が、ほんの一瞬近づく。
うりの視線が、そこに刺さった。
うりside
…まただ
胸の奥が、じわっと熱くなる。
怒りじゃない。
嫌悪でもない。
ただ、
取られるわけじゃないのに、取られそうな感覚。
ゆあんは大事な仲間だ。メンバーの中でも特に自分と仲がいいほうでもあった。
えとと仲がいいのも、今に始まった話じゃない。
なのに。
えとがゆあんに向ける笑顔を見て、
心の奥で何かが小さく軋む。
俺こんな独占欲強かったっけなー、
自分に問いかけて、
うりは苦笑した。
ひろside
シャワーを浴びたあと、
廊下でばったりゆあんと鉢合わせた。
「うわ、びっくりした」
「ゆあんくん、また起きてたの?」
「んー、まぁ」
会話はそれだけ。
でも、その一瞬。
ゆあんの顔色が、明らかに悪い。
それを見逃さなかったのが、ひろだった。
「ゆあんくん」
「なに?」
「今日もしんどかったんでしょ、えとさんとうり見て 」
ゆあんは一瞬固まった。
「やめてよ、そういうの」
「否定しないんだ」
ひろは静かだった。
からかいも、笑いもない。
「好きなんでしょ?」
ゆあんは、何も言えなかった。
その沈黙が、答えだった。
「…俺さ」
ゆあんが、ぽつりと言う。
「嫌いになりたいんだよ。
そしたら楽じゃん」
「無理でしょ」
即答だった。
「だって、もう見方変わっちゃってる」
ゆあんは目を伏せる。
「うりもえとさんも悪くない。
なのにさ
ふたりが並んでるだけで見てらんない 」
ひろは少し考えてから、言った。
「もう、限界が近づいてるんじゃない 」
ゆあんの指が、ぎゅっと握られる。
「…どうしたらいい」
「正解はない。 でも一つ言えるのは このままの状況を続けるのであれば、 多分、ゆあんくんが壊れる」
その言葉が、
ゆあんの胸に重く落ちた。
その頃、えとの部屋。
いつも通り、 電気は消して
小さな間接照明だけがついている。
ベッドに並んで座り、
うりはえとの肩に頭を預けていた。
「ねぇ、えとさん」
「ん?」
「もしさ、 誰かがえとのこと好きだったら、どうする?」
えとは一瞬考えて、
あっさり答える。
「どうもしないけど」
「即答だね」
「だって、わたしにはうりいるし」
その言葉に、
胸の奥がじんわり温かくなる。
でも同時に、
うりは確信してしまった。
えとさん、ほんとに気づいてないんだなあ
ゆあんの気持ちにも、
自分の嫉妬にも。
うりはえとの手を握ってそっと目を閉じる。
「…俺さ」
「うん」
「えとさんが誰かに取られたら、嫌だ」
えとは少し驚いた顔をして、
でもすぐに笑った。
「取られないよ」
その言葉は優しい。
でも、どこか無防備で。
うりは、
胸の奥に小さな不安を抱えたまま、
えとに身を寄せた。
その夜、
それぞれが同じ屋根の下で、
違う感情を抱えて眠りについた。
誰もまだ、
本当のことを口にしていない。
けれど
もう、何も起きていないふりはできなくなり始めていた。
コメント
1件
やっばぁい🙌💕続きが楽しみです!!