翔太の家に着いて、溜まって…いや翔太が溜めていた家事をまずやってやろうとしたらソファから『待て』と声がした。
声の主はもちろん、ソファでゴロゴロしながらスマホをいじっていた翔太。
💛「なに?」
💙「こっちきて」
待てって何だ。俺は犬じゃないんですけど。
そんな事を思いながらソファに腰掛けると、翔太が脚に頭を乗せてきた。
素直に甘えに来るなんて珍しい。ふわふわの髪を撫でる。
これはこれでいい時間なんだけど、普段からタイトにスケジュールを決めて動くのが性に合っている俺としてはただ何もしない時間は少し手持ち無沙汰になる。
💛「洗濯してくる」
💙「ダメ」
💛「なんで?」
💙「今日は、なんもしない日だから」
そうもいかないでしょ、と立ち上がろうとすると、翔太は『そうじゃない』と絡みついてくる。
💙「今日は『なんもしない日』って日なんだってよ」
💛「なんもしない…日」
おおかた阿部が入れ知恵したんだろうと思ったら、案の定教えてもらったと言っていた。
💙「照、いつもなんかしててストイックでいいけど、たまにはなんもしないで一緒にのんびりしたいなって」
💛「そうだっけ」
1人の時はそうしていたけど、2人の時も無意識にあくせく動いていたらしい。
決めたタスクをその日中にこなすのが当たり前になりすぎていて、あまり意識していなかった。
💛「寂しかったの?ごめんね」
💙「まぁ、そうとも言う」
💛「可愛い」
💙「うるさい!」
このままだと、なんもしない日なのに翔太が拗ねてまたブランケットをかぶって大福みたいにする日になってしまう。
💛「わかった、なんもしない日ね」
そう言って撫でると、翔太の目はキラキラ輝いたように見えた。
その日はベッドで2人シーツに包まって、雑談をしたり抱き合ったりしながらとにかく緩やかな時間を過ごした。
時々タスクの事が浮かんでソワソワもしたけど、その度に見透かすように翔太が『照』と呼んでこっちをじっと見てくる。
💛「あぁ、ごめんね?」
💙「ん」
俺が言う通り大人しくしているのがよほど嬉しいらしい、機嫌よく猫みたいにすり寄ってくる。そのくせ抱きしめると迷惑そうに抜け出すところまで猫っぽい。
💛「なんなの」
💙「なんもしない日だからな」
あくまで翔太基準だと実感しながら、時々水分を摂ったり、翔太がして欲しそうな時は軽くキスしたり。
陽が傾いて来た頃、翔太の『腹減った』の一声でなんもしない日は終了した。
ラーメンを食べに行く。
💙「今日どうだった?」
💛「うーん、最初は落ち着かなかったけどゆっくりするのも良かった」
それを聞くと満足げな表情で翔太はラーメンをすすった。
💙「年に一度だからまた付き合え」
💛「来年も一緒ってこと?」
💙「そういうこと」
本当は、何もせずに過ごした事より翔太がやたら素直な方が慣れなかったけど内緒にしておいた。
終
コメント
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おかわり。 きゃん💙やっぱり可愛いし、このカップル好き💙🥰
いいねー年1のなんもしない日✨✨