🧡「舘さんはなんもせんでいいしな」
❤️「どういうこと」
次の休みがオフ被りだったので、康二からデイキャンプのお誘い。
ならば軽くランチでも作って行こうかと思っていたけど、予定が決まった時の康二からの一言がそれだったので大人しく言うことを聞いておいた。
キャンプには長けている康二だから、何か考えがあるのかも知れない。
さて当日。
到着するなり康二は日除けのついたチェアを出して『舘さんはここ、はいどうぞ』と俺を座らせると道中買ったコーヒーを握らせ、テキパキと設営を進めていく。
テントができたら、火を起こして『いつもするやつ』だというベーコンを焼いていく。
いい匂いがして、やがて横で焼いていたガーリックトーストと共に塊のベーコンが渡された。
同じチェアを隣に置いて、一旦だけどやっと康二も横に座る。チェアの密着具合が康二っぽくて微笑ましい。
日除けを上げると康二は『焼けるで』と言ってきた。
❤️「そうなんだけど、もう少し顔がよく見たくて」
そう返すと、あからさまに照れたような反応で康二もちょっとだけ日除けをあげ、ベーコンとバゲットを頬張る俺を隙間から一生懸命見ていた。
見てるのわかってるんだけど。
お互い好きだったとわかるまでは俺の一方通行だと思っていたけど、康二の愛は思いのほか強くて、誰も寄せ付けないという意思と俺をとにかく甘やかそうとする柔らかさでいつの間にかくるまれていた。
その後ホットサンドメーカーでポテトサラダを包んだハンバーグを作ったり、得意げにパスタだってキャンプで作れるねんでと煮込み、腹いっぱい食べて食後は熱いコーヒー。
それから片付け。
本当に全ての間、俺がちょっと何かしようとすれば『ええねん。座っといて』と制止され、チェアに戻された。
❤️「片付けくらいやらせてよ」
🧡「いいから、いいから」
帰りの車中。
❤️「今度は俺におもてなしさせてよ」
🧡「ん、楽しみにしてるわ」
❤️「今日、どうして俺に何もさせなかったの?」
赤信号で車が停まり、俺が気になっていた事を聞くと康二はこっちを向いた。
🧡「今日は『なんもしない日』やからな」
❤️「なんもしない日」
🧡「そういう日やねんて。記念日?ちゃうか。なんかそんなん。阿部ちゃんが言ってた」
青信号になり、車が発進する。
❤️「康二はずっとなんかしてたじゃん」
🧡「舘さんになんもしてもらわん日にしよって決めてたから」
愚問かも知れないと思いつつ、どうして?と尋ねる。
🧡「舘さんて料理できるし、自然といつもおもてなしする側になるやんか。だから今日は俺がしよって思って。どやった?なんもしない日」
❤️「んー、正直落ち着かなかった」
🧡「まぁそうやろなぁ」
また赤信号。
今日よう引っかかるなぁとぼやきながら、康二が俺の頭に手を乗せる。
🧡「でもな。何かしてる舘さんももちろんやけど、なんもしない舘さんもめーちゃ素敵だし俺の好きな舘さんなん知って欲しくて」
そうして子犬みたいな笑顔で頭を撫でてきた。
俺はどんな顔をしていただろう。気になりはしたけど、康二はきっとそんな事どうでもいいんだろう。そういう奴だ。
一旦康二の家に寄って、道具を洗ったりしまったり。
そこから俺は家に送り届けられたけど、さすがに休憩していってと引き止めて家にあがらせる。
ソファに座るが早いか、康二は寝息を立てていた。
❤️「…今日はありがとう。落ち着かなかったけど、嬉しかった」
寝顔に話しかけ、ブランケットをかけて撫でると
🧡「チューしてくれるかと思ったのに」
と声がしたので黙って頭までブランケットをかぶせておいた。
終
コメント
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THE彼氏って感じの康二かっっっっっこよ!!🧡❤️
康二がやたらイケメンなんだけど…🧡かっこいーーーーーー✨✨ で、舘に何もさせないってむずいよね。もてなし体質で書いちゃうもん、いつも。