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葵 だざむ🤕🍷@ペア画中
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ふぃる汰
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羽海汐遠
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ガシャン!!
そんな音が部屋に響く。
その音と同時に、光る破片は床のあちこちに飛び散り、それらはカチカチと音を立てながら止まった。
その音、声、光景を見て思うのはただ一つ。
あぁ、今日も始まった_。
なんと綺麗な森だろう。
木々が風に揺られ、音を立てる。
緑が火の光で鮮やかに輝いていた。
流れる水の音、小鳥の鳴き声。聞こえる音全てが自分の歩みを歓迎しているように思えた。
幻想的。その言葉がこれほど似合う光景はないだろう。
そこにある一つの影。 目の前には、1匹の狐がいた。
神々しいほどに光る白い毛並み、赤い尾の端。赤い瞳は、こちらをただただ見つめていた。
その瞳と目が合ったとき_狂ってしまいそうなくらいに、吐きそうなくらいに、目眩がするくらいに、背筋が凍った感覚がした。
怖い。
そして聞こえた一つの言葉。
「よろしく」
森谷逢来はそこで目を覚ました。
窓からは日差しが差し込み、その眩しさに目を逸らす。
そして意識は記憶に向けられる。今日、怖い夢を見た。
幻想的な森の夢。そこにいた神々しいまでの美しい狐。
最後の恐怖が全身を襲った感覚がまだ消えていなかった。
何故あれが怖かったのかはわからない。ただ、同じ目をしていた。同じものを感じた。ただそれが、あの感覚を生み出した。
あれは、欲に生きる目だ。
「…ご飯食べに行こ」
逢来はベッドから降りて服を着替えると、部屋から出てリビングへと向かった。
「おはよう逢来」
リビングのドアを開けた先で、母の紅羽が逢来へ笑顔を向けそう言った。
「おはよう」
逢来は挨拶を返す。
テーブルの上には汁物とおかずがあり、その匂いが数メートル離れた逢来のところまで届いた。
その近くのソファに腰掛ける紅羽の手にはとある冊子があった。表紙には「人気な観光先」とでかでかと書かれていた。
また旅行か、と逢来は呆れながらお米を茶碗によそる。
「また数日出かけるの?」
茶碗を机に置き、椅子に腰掛けながら逢来は尋ねた。
「一緒に行く?」
「いいよ、学校休んでばっかだと授業ついていけなくなるし」
「そう、残念」
紅羽の誘いを逢来は目も合わせず断った。
逢来は今中学2年生だ。中学校生活も1年が過ぎ、学校生活にも慣れてきたが授業は難しくなるばかり。
テストも点がいいとは言えない。来年からは進路を考えなければならないし、本当にこのままで平気なのかと不安になる。
運動も、勉強も、これと言って胸を張れるほどできることはない。
強いていうなら、裁縫が得意だ。
けれど、友達からは馬鹿にされた。女子みたいだの、裁縫できるからなんなんだだの。
正直、自分でもそう思っていた。
好きと言ったら好きかもしれない。美術や工作系も好きだ。
だが、できるからといって役に立ちはしない。
美術や家庭科の成績が5段階評価のうち、4になったりならなかったり、それくらいのものだ。
どうやって生きればいいのだろう。そんなことを不意に考えるようになってしまった。
「お父さんと2人で仲良くやってる?」
紅羽の言葉に、咄嗟に現実に戻された。
「え、あ、うん……一応」
「何よその間ー。さてはあんま会話してないでしょ」
「まぁ…話すこともないから」
「冷めてるねぇ〜」
紅羽は茶化すようにそう言った。
父、余一はとても社交的な人だ。名の通り、ゆとりのある人物…なのだろう。
父のことは、あまり考える気にならなかった。逢来は服の袖を掴みながら俯いた。
「…ま、喧嘩だけはしないようにね」
逢来の様子を見て、何かを察したのか紅羽はそう言った。
「…うん」
逢来は小さく返事をした後、目の前の朝食を口にした。
「逢来、今日一日何するの?」
「ん〜決めてない」
今日は9月27日の日曜日。せっかくの休日、遊ぶのはありだと思っているが特に何も思いついてはいなかった。
「今日あの里山の方で野生動物の観察会的なのあるらしいよ?自由参加らしいし、たまには行ってきたら?」
紅羽の提案に逢来は考え込む。
「…お母さん今日は一日家にいるの?」
「え、なんで?」
「いいから答えてよ」
「今日は職場の知り合いとお出かけいくから夜までいないけど」
「あ、そう。わかった」
逢来の質問に、紅羽は疑念を抱いているような反応をしたが、そのまま冊子へ目を落とした。
逢来はご飯を食べ終わると、食器を下げ、何も言わずリビングを後にした。
部屋に戻ると、逢来は出かけるための支度をし始めた。母が家にいないのなら、暇でもあるので里山のイベントに参加することにしたのだ。家を出る時や帰ってきた時、母からとやかく言われる心配もない。父にも会う気はないので、出かけたほうが得なのだ。
支度をしている最中、ふと朝の夢のことが頭によぎった。
「…あの狐いるかな」
そんなことを呟いたが、なわけないかと逢来は支度を進めた。
準備が一通り終わると、逢来は早速家を出た。
母にも最近そっけなく対応することが増え、家を出る時も何も言わず出るようになった。母は周りに反抗期だの思春期だの言いふらしていて、それもまた少し気分が悪かった。
里山は家から10分ほどで着く。かなり近いので、よく里山にある公園に遊びに行ったりもしているくらいだ。けれど遊びに行くような友達もいないので、家に帰りたくない時などによく1人で来ているだけだった。
しばらくして、看板を持っている1人の女性が見えた。参加者の確認のために、建物へ案内しているんだろう。
「あの…これ、参加してもいいですか…?」
不安気に逢来はその人に尋ねた。
その看板を持っていた女性は逢来の方を見るやいなや、笑顔を見せた。
「もちろん!説明も後でされるから、中で待っててね」
そう言いながら建物の方を女性は指差し、逢来を促した。
逢来はお礼を言い、言われた通りに中へと向かった。
中に入ると机と椅子がいくつか並んでおり、何人かが座ってスマホなどを眺めていた。
逢来も荷物を床に下ろし、近くにあった椅子へと座った。
スマホの充電を切らすのは避けたいので、逢来は持ってきていたちょっとしたメモ帳とシャーペンで絵を描き始めた。
逢来はいつも動物や風景画を描くことが多い。クラスにいる美術部の子や、絵の上手い子はキャラクターなどをよく描いているが、逢来はそれを描く気にはならなかった。
漫画家になりたいと言っている子も中にはいた。そんな話を聞くたびに、虚しさに駆られた。
家族ともうまく接せず、やりたいことも、自慢できることも、特にない。
そう夢を持って他人に話せる人を羨ましいと思った。
みんなが光を見つけて歩いている中、自分一人暗闇を彷徨っている気分だ。
そんな中、動物などには心惹かれた。
何を考えて生きているのだろうか。一人、何を目指して動いているのか。
動物からは、面白い雰囲気が感じられる。決して人間ではありえないような何か。
キャラを描くのは得意ではないし、描いていても周りと比べてしまう。けれど、動物や風景画を描くときはその雰囲気に惹かれ、その雰囲気を表そうと絵を描ける。
今、自分が描いていたのは、夢の中の狐だった。
あの狐が頭から離れない。
他の動物にはありえない雰囲気のようだった、たった一匹の狐。あんなにも幻想的な雰囲気が似合っていた狐。
けれど自分は、あの狐の雰囲気を、すでに知っている感覚がした。
あれは…と、考えたとき咄嗟にとある日の出来事がフラッシュバックした。
暴れるかのように、勢いよく机の上のメモ帳をバッグの中に突っ込んだ。息が苦しい。心臓の音がうるさい、怖い。
呼吸が乱れながらも、逢来は少しずつ気分を落ち着かせた。
誰にも言ってない一つの嫌いなこと。それが頭によぎるたび、記憶がフラッシュバックする。
逢来は手汗のひどい手で、袖を強く握った。
もう何も考えず過ごそうと思った矢先、「おはようございます」とスピーカーから声が聞こえた。
どこから話しているのだろうと周りを見渡すと、部屋の真ん中にマイクを持った人がいた。
その人は話を続ける。
「この度は野生生物観察会にご参加頂き誠にありがとうございます。植物や小さな虫から、大きな野生動物まで幅広くこの里山では確認されております。皆様にはこれから、里山の中まで行ってもらいさまざまな生き物の観察をしてもらいます。鳥や植物を写真に撮ったり、虫を捕まえたりして最終的には皆様で写真や捕まえた生き物の見せ合いなどの交流をしてもらいます。どんなところにいたのか、どうな様子だったのか。そうして皆で野生の生き物たちへの理解度を深めていきましょう」
長々と話す声を聞き流し、逢来は交流することに対するちょっとした嫌悪感を抱いていた。他人との話し合いは少し苦手な部分がある。
「まぁ、情報を話すだけなら平気か…」
そう呟き、逢来はどうにかやり過ごすことにした。
「次は今回の活動にあたって、注意事項を話させていただきます」と司会者は続けた。
「その一、自然を荒らさない。これは第一に考えていただきたいです。あくまで私たちの目的は観察。生き物の巣を荒らしたり、そういうことはないようにお願いいたします。捕まえた生き物も、最終的には元の場所へ返しましょう。その二、怪我への細心の注意の徹底をお願いします。野生動物の中には凶暴だったり、毒を持つ存在もいます。対応が遅れれば大事につながる可能性もあるので、何かあれば周りに助けを求める、我々専門家に声をかけるなどをしてください。その三、人物間のトラブルは極力避けてください。その四、無くし物などは自己責任でお願いいたします。以上のことに気をつけ、適切に観察していただくようお願いいたします。それでは皆様、十三時までにこの建物入り口付近にお集まりください。よい観察を!」
司会者はそう言うと、そこから去っていった。
次々に参加者は外へと向かうので、これは観察開始ということなのだろう。
人の流れについていくように逢来も外へと向かった。
さて、ここからどこへ行くべきか。
とりあえずカナヘビでも探してみようと逢来は考え、里山の中へと歩み出した。
しばらく歩き、奥の方までたどり着いた。
ここに来るまでに、3種類ほどの鳥をカメラに収めていた。今度この写真を見ながら絵でも描いてみようと逢来は考えながら歩いた。
「こっち」
「え?」
不意に聞こえた声に戸惑いながら逢来は周りを見渡す。だが聞こえるのは鳥のさえずりと木々の揺れる音のみ。あたりに人影は見当たらなかった。
「……奥まで来すぎちゃったかな」
そう呟いた瞬間、「こっちに来な」と再び声が聞こえた。柔らかな、女の人の声。
逢来はその不気味さに、ひんやりと首筋が冷えるような感覚がした。
一歩後退りをしたとき、何かにぶつかった感じがした。
逢来はすぐに振り返る。
すると、一人の女性が困惑と驚きの表情をして逢来を見ていた。
「あっ」
そう2人ほぼ同時に声に出した。
「えっと、大丈夫?」
「あ、え、はい…!すみませんぶつかっちゃって…」
女性は逢来を心配し、逢来は慌てて謝罪をする。
人がいたことに気がつき、さっきの不気味さが少し和らいだ。
でも、声の正体はこの人じゃない…?
そう考えたとき、女性は逢来へと尋ねた。
「1人でこんなところまで来たの?」
その質問に、逢来は何かダメだったのかと焦り戸惑いながら答える。
「なら、とりあえず人気の多いところに戻ろうか」
女性は優しく逢来を促した。それに逢来は頷きついていった。
「なにか生き物見つかった?」
歩きながら女性は逢来へと問いかける。
「その…鳥を、3匹ほど撮りました」
「え!すごい!見てもいい?」
「どうぞ」
逢来は女性へと撮った写真を見せた。それに対し、 女性は興味を示しながら、逢来の撮った写真を眺める。
「すごい綺麗に撮れてる…鳥の観察慣れてるの?」
「まぁ、公園に来たときはよく鳥を写真に撮るので」
公園で写真を撮り、その写真をもとに絵を描いていた昔を逢来は思い出した。
最初は何度か母の旅行についていき、そのときに寄った動物園の動物の絵を描いたりしていた。
自分は絵が好きなのかもしれないと少し口元が綻んだ。
「…絵描くの好きなんだね」
「え、なんでそれ…」
女性の方を見た時、女性はふっと姿を消していた。
それに戸惑い、逢来は後退りする。
その時、周りを見渡すと先ほどとは全然違う光景の森の中にいた。
いつの間に来ていたのか。
鮮やかに輝く緑の葉、揺れる木々、その音、流れる水の音、鳥の鳴き声。
その光景に見覚えはあった。だが、信じられなかった。信じたくなかった。
「ここ…夢の…」
絵を描いていた時のことが脳裏によぎった。
あの狐と…トラウマ。
「あ…いや、違、僕は…」
焦り、一歩ずつ逢来は後退りをする。
その時、木の根に躓きバランスを崩し地に尻もちをついた。
「…誰、か…誰か……」
そう頭を抱え、半泣き状態で逢来は呟く。
その時、ふわっと柔らかなものが肌に触れた。
驚き恐る恐る目を開けると、大きな一つの白く先の赤い尻尾が逢来の周りを包んでいた。
ふと振り返ると、そこには_あの夢の狐がいた。
狐は、どこか微笑んでいるように見えた。
コメント
1件
めっちゃ幻想的な世界観に一気に引き込まれた…!!逢来くんの心の内が繊細に描かれてて、家でも学校でも居場所ない感じが切なかった😢 でも最後に狐さんの尻尾に包まれるシーン、エモすぎて鳥肌立ったよ…!!「欲に生きる目」って言葉がすごく気になる〜✨ 続きめっちゃ楽しみにしてる!!🌸