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け 〜 ち ゃ ん .
「………あ、いた」
通路の角を覗けば、探していた彼の姿があった。
特別用がある訳じゃないけど気付いたら居なくなってたから、なんとなく。
ステージ裏を抜けて少し歩いた所にあるこの通路。
終演から数十分、薄暗い通路の床にまだ消えないステージの灯りが滲んでいる。
舞台上での眩しさに比べれば冷たく感じるような静けさだったが、瞬間の感覚と感情は身体に刻まれていて。
疲労と若干の熱が何処か心地良い、そんな気さえする。
「元貴」
声に反応して顔を上げた若井の視線が此方に向く。
「なに、なんか探してる?」
終演直後にこんな所で。となると大体の察しはついた。
数歩 近付きながら、何かを探しているであろう若井の付近を見渡した。
「さっきイヤリング落としたっぽいんだよね」
演奏中はあったと思うんだけど、と片耳に手をやった。
イヤリング。確かにパフォーマンス中そこで揺れていた飾りが無くなっている。
記憶を辿ってみれば、舞台袖に捌ける瞬間にはまだ外れていなかったと思う。
「裏に戻り始めた頃はまだあった気がするけど」
「あ、やっぱり?じゃあ多分ここしか無いよね」
小さく屈みながら床を見つめている。
多少の明るさこそあるものの、この暗さであの大きさを見つける事は容易くも無いのだろう。
この付近はきっともう探したと思うけど、一応。
周辺を軽く目で追ってみる。
「………………あ。」
壁際に幾つか置かれている機材の下。
小さく光る銀色が目に留まった。
なんだ。案外すぐ見つかるじゃん。
意外と簡単な所にあったな、なんて考えながら機材下に手を伸ばす。
「若井、あったよ」
立ち上がり、しゃがみ込んで視線を辺りに迷わせていた若井にイヤリングを差し出した。
「嘘、どこにあった?」
「そこ。影になってたから見えにくいのかも」
「え、ほんとだ。全然気付かなかった」
屈んだまま機材下に目を向けて それから手渡されたイヤリングを受け取る。
「ありがとね」
柔らかく笑いながら首を小さく傾け、揺れた髪の隙間に見えた耳へイヤリングを付け直した。
どうやら。不覚にも。
若井のその表情、仕草が刺さったらしい。
分かり易く鳴り始めた心臓の音がそれを物語っている。
何の意図もない些細な表情や仕草でこんなになってしまうのだから、いつまで経っても若井には敵わない。
昔からだし、多分これからも。
目線を合わせるように片膝をつき、壁際の空間を封じ込めるように腕を伸ばした。
壁についた手の横で若井と目が合う。
「…なに?」
抵抗することもせず、寧ろ僅かに緩んだ表情で見つめられる。
これから何をされるかなんて聞くまでもなく分かっているかのような声色だった。
「分かってるくせに」
吐息だけで笑うように呟いてから ほんの少し唇を掠めるだけの軽いキスを落とした。
唇が重なると同時に、フレームがぶつかり合う固い音が小さく響いた。
首元の緩い衣装、片目を隠すように落ちた前髪。
そこから覗いた薄紫のレンズ越し、向けられた瞳。
その全てが、いつも以上に。
探す最中の邪魔にならないようにか、耳の後ろに流れていた髪を柔らかくかけ直す。
一瞬を掠めた指先は既に熱を持ち始めていた。
壁へ当てていた手に無意識のまま力が入り、益々目が離せなくなる。
空間に満ちた静けさを溶かすように熱が増していった。
あの時間、舞台上で感じた熱と高揚感。
この瞬間に感じる熱はもっと奥までを揺らがせる何かだった。
胸を焦がす様に溢れる感情と、何かを考えることも儘ならなくなるような感覚。
その場の温度に身を委ね、数秒前よりも深い角度で口付けた。
未だに脳を焼かれているのでラブシャ衣装イメージにしました………好…
コメント
6件
ああああ私もラブシャ好きです、、、ピアス付ける動作癖なのマジでわかります
ぴぎぇぇえええええ🥲💖💖今回も好きすぎる....💞💞まじで、文才ありすぎません⁉️⁉️💗