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巫女都
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翠
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――中学一年生。
入学して、まだ一週間も経っていなかった。
新しい制服。
新しい教室。
新しい生活。
すちは、少しだけ気を引き締めていた。
(中学生になったんだから)
(今度は、ちゃんとしないと)
そう思っていた。
けれど、その日の放課後。
提出するはずだったプリントを、すちは家に持って帰ってきてしまった。
(……あ)
鞄の中からプリントを見つけた瞬間、すちの顔が青くなる。
提出期限は今日。
学校に戻ろうにも、もう下校時間を過ぎている。
(……どうしよう)
家に帰る。
玄関を開ける。
すち「ただいま」
父「遅かったな」
すち「……すみません」
父「何してた」
すち「学校です」
父「なら、なんでこんな時間なんだ」
すち「……」
答えられない。
父親が鞄を見る。
父「それ、何だ」
すち「……学校のプリントです」
父「提出するやつか?」
すち「……はい」
父「今日までじゃなかったのか?」
すちは黙った。
父「答えろ」
すち「……今日まででした」
一瞬、空気が止まる。
父「……お前、またか」
すち「……すみません」
父「中学生になったんだろ?」
すち「はい」
父「何が変わったんだ?」
すち「……」
父「小学生の頃から何もできてないじゃないか」
すち「……すみません」
父「謝るだけなら誰でもできる」
すち「……はい」
父「提出物くらい管理しろ」
すち「分かりました」
父「分かってないから忘れるんだろ」
すち「……」
父「中学生なんだから、自分のことくらい自分でやれ」
すち「……はい」
父「明日の朝、先生に自分で説明しろ」
すち「分かりました」
父親はそれだけ言って、別の部屋へ行った。
すちは、その場に立ったまま鞄を握っていた。
(……またやった)
(中学生になったのに)
(まぁ昔よりは優しいか…)
その夜。
すちは何度もプリントを見直した。
忘れないように。
鞄の一番上に入れる。
明日の朝、絶対に持っていく。
そう決めた。
――翌朝。
すち「行ってきます」
父「忘れ物は?」
すち「大丈夫です」
鞄を確認する。
プリントもある。
筆箱もある。
教科書もある。
(大丈夫)
学校へ向かった。
そして放課後。
家に帰る。
父「すち」
すち「はい」
父「制服、そのままにするな」
すち「あ、はい」
すちは急いで着替えに行く。
そのとき。
父親が机の上に置かれたものを見る。
父「……すち」
すち「はい?」
父「これ、何だ」
すちが振り返る。
そこにあったのは、学校から渡された大事な書類だった。
提出期限は――今日。
すちは固まった。
(……忘れた)
昨日、プリントを忘れたばかりだった。
それなのに。
今日も。
すち「……すみません」
父「昨日、何て言った?」
すち「……自分で管理します」
父「そうだよな?」
すち「……はい」
父「じゃあ、なんでまた忘れてる?」
すち「……」
父「お前、ふざけてるのか?」
すち「違います」
父「じゃあ何なんだ」
すち「……すみません」
父「またそれか」
すち「……」
父「昨日よりひどいじゃないか」
すち「……はい」
父「一日経って、また同じことやったんだぞ」
すち「……」
父「昨日言ったこと、何一つ覚えてないのか?」
すち「覚えてます」
父「覚えてるなら、なんでできない?」
すちは答えられなかった。
父「中学生になったんだから、自分でしっかりしろ」
すち「……はい」
父「いつまで俺が言わなきゃいけないんだ」
すち「……」
父「返事」
すち「はい……」
父「明日、絶対に持っていけ」
すち「分かりました」
父「今すぐ鞄に入れろ」
すち「はい」
すちは書類を鞄に入れる。
昨日よりも。
ずっと強く怒られた。
一度目なら、まだ失敗で済んだ。
でも二日続いた。
それが何よりきつかった。
自分でも分かっていた。
ちゃんとしようと思っていた。
忘れないようにしようと思っていた。
それなのに、できなかった。
部屋に戻ったすちは、鞄を開ける。
プリント。
書類。
教科書。
筆箱。
一つずつ確認する。
(……明日は大丈夫)
(絶対に忘れない)
そう何度も自分に言い聞かせながら、鞄を閉じた。
コメント
1件
寺島あおいです🌷 第12話、読み終わりました。 すちくんが「ちゃんとしよう」と思えば思うほど、できない自分にぶつかってしまう感じ、読んでいて胸が苦しくなりました。「覚えてるならなんでできないんだ」という父親の言葉が重くて…すちくんがそれに答えられない場面、すごくリアルでした。ラストの「絶対に忘れない」という小さな決意が、切なくもあたたかくて、次が気になります。碧さんの心情描写、大好きです。